第39話 7-2
診断機を怪しげな男から購入した夜、雅司は自室の机の上に診断機を置き、コーヒーを飲みながら説明書を読んでいた。
その説明書には、取り扱いの他に、天国に行くのか、それとも地獄に行くのか、わかりやすくポイント制であることが記載されていた。
天国 5000点以上
・加点
救済……1000点
博愛……1000点
平等……1000点
殉教……1000点
……
様々な加点要素が、ページの半分ほどを占めていた。
雅司は減点側にも目を通す。そこには煉獄と地獄のポイントについて書かれていた。
煉獄 -999~4999点
地獄 -1000点以下
・減点
猜疑……-100点
暴力……-100点
盗み……-500点
殺生……-1000点
……
様々な減点要素もページの上で踊っていた。雅司は細かい文字をずっと読んでいたためか、目に疲れを覚えた。
ふと、彼の心に悪い考えが浮かぶ。
「もしかしたら、この前の事故はただの偶然じゃないのか? ……少し試してみるか」
雅司はパソコンの電源を立ち上げると、動画共有サイトを立ち上げる。そこには様々な人間がリアルタイムで生放送をしていた。
雅司は片手では診断機を向け、もう片手ではマウスを操作してページを捲り続けた。
10分程は何も変化がなく、ただただ時間ばかりが過ぎていった。雅司は診断機をずっと同じ体勢で持ち続けているためか、腕が疲れ始めていた。
「まあ、そんなうまく行くわけがないよな」
ある生放送のページに飛んだとき、変化が訪れた。
「テンゴク! テンゴク! テンゴク!」
雅司は診断機が反応したことに驚き、机に思いっきりぶつかってしまった。衝撃で飲みかけのコーヒーがこぼれて、絨毯に黒いシミを作る。
「な、なんだぁ!?」
雅司はそのページを食い入るように見る。それはどこか欧米の青年が、街の紹介をしているような風景が映し出されていた。
英語らしき声で、繁華街を解説しながら撮影する青年。彼は町並みのことや、街歩く人のことを話しているようであった。
「な、何が起こるんだ……? というか天国って……?」
雅司は画面を食い入るように見る。
青年があるファーストフード店の前で話しているときに、突然銃声が響いた。そして爆発音も。
繁華街は一気にパニックになり、人々は逃げ惑う。青年も人混みに流され何かを叫んだ。カメラは道路を写すと、そこには親からはぐれたのか、泣いて座り込んでいる子供とその子に迫る、乗用車。
だが、周囲はうるさく、何を言っているのか全く聞こえなかった。
画面は一瞬空を映した後、道路にうち捨てられる。
カメラのレンズが最後に映した物は、暴走した車の前に飛び出し、子供を抱きかかえて守りながらもタイヤに巻き込まれて血を流す青年の姿であった。
雅司はそっとパソコンの電源を切ると、診断機を再度手に取った。
「やっぱり本物だったんだ……ジュリさんに相談するか?」
そう考えた雅司であったが、もう少しこの診断機を試してからでも遅くはないだろうと思い直した。
コーヒーで汚れた机と取り扱い説明書を片付けると、雅司は布団へと潜り込んだのであった。
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