全員集合です

「…………バレていましたか」


 居るとわかっているのであれば、もう気配を隠す必要はありません。

 魔法を解き、アカネさん達に姿を見せます。


 これで、本当に魔王と、その幹部が全員集合したことになります。

 兵士達は完全にパニックになっています。


「おい、これどうするんだ!?」

「しらねぇよ! 誰か、ディアス様に伝えろ!」

「そこに居るだろ! どうやって伝えんだよ!」


 と、愉快な方々ですねぇ。


「それで、いつから気付いていたんですか?」


「んん? いや、なんとなく居そうだなぁと思い、声を掛けただけじゃよ」


「…………それ、居なかったらどうしたんですか?」


「恥ずかしかったじゃろうな……。だがまぁ、居たのだから結果おーらいというやつじゃな!」


 無理して地球の言葉を使おうとしているところが、少し可愛いですね。……なんか、やっぱりお婆ちゃんを見ているような微笑ましい感覚になります。


 そういえばアカネさんは何歳なのでしょう? 様々なことを知っていることと、私を除く幹部の中で最強に位置する実力……下手をすればミリアさん以上の力を宿す彼女のことは、何も知らないことばかりです。


 その内、色々と話したいなと思っているのですが、如何せん私とアカネさんは真逆の働きをしているので、中々ゆっくりとお話しする機会がありません。皆が魔王城に身を置いている今がチャンスなのでしょうか?


  ……まぁ、全てが終わったら、そうするのも悪くはないですね。




 ──って、今はそれどころじゃないです。


「エルフへの対応はどうなさるおつもりですか?」


「ん、どう、とは?」


「先程のエルフの対応は、正直言って最悪でした。魔王軍の全てを敵に回してもおかしくありません」


 私は暗に問います。

 ──本格的にエルフを滅ぼしますか? と。


「……いや、まだ動くのは早いじゃろう」


 アカネさんの返答に、私は眉を顰めます。


「ここまで派手に動き、好き放題しているエルフに対して、それはなんとも悠長なのでは?」


「そう感じるのも仕方ない。しかし、こちらはエルフの情報を何も手に入れていない。じゃが、あちらは魔王軍の情報を得ている。一時的とは言え、人間側と手を組んだのじゃ。それは確実じゃろう」


「つまり、何も知らない状況で動くのは危険だと……?」


「そういうことじゃ」


 アカネさんの言い分はわかります。

 でも…………


「納得していないようじゃな」


「…………むぐぅ……」


「ははっ、まぁそう焦るでない。どう足掻いたところで、今は絶対に手を出せぬ状況でな。動けない理由は、そこにもある」


「絶対に手を出せない? それは、どういうことです?」


「……む? リーフィアはまだ知らなかったのか。てっきりすでに情報が回っていると思ったんじゃがなぁ」


「なんのことです?」


 どうやら、アカネさんは『エルフに手を出せない理由』を知っているようです。彼女は私もその情報を知っていると思っていたらしいですが、こちらとしては思い当たる節がありません。


 忘れている……という可能性を考えましたが、エルフのことに関して忘れることはないと自負しています。なので、単純に聞いていなかったのでしょう。




「というか、報告した時にリーフィアにも伝えておいてくれと頼んだはずじゃが……」




 ──ぬっ!?


 どういうことだと周囲を見渡すと、ミリアさん、ヴィエラさん、ディアスさんの三人が、サッと顔を逸らしました。


「…………みなさん? 言い訳は今のうちですよ?」


「い、いやぁ、余も半分以上は忘れていたというか……」


「ちょっと、最近のリーフィアは忙しそうかなぁと思ったり……」


「なんか言っておくことあるんだよなぁと思ったが、思い出せないことだから別にいいかと……」


 相変わらず視線を合わせないまま、三人の主張は徐々に弱くなっていきます。


「…………」


 私は無言で魔力を練り上げ、手の平に超圧縮した風の塊を作りました。


 これ一つで魔王城が吹き飛ぶ威力です。


 脅しかって?

 ええ、脅しですけど、それが何か?


「「「すいませんでした」」」


 三人はほぼ同時に頭を下げました。

 いっそ、ここまで清々しく謝られたら、こちらの気も失せるというものです。


「……アカネさん。どこかの三人のせいで私に情報が回っていなかったので、貴女の口から直接教えていただけますか?」


「お、おう……なんじゃ……その、うちの者達がすまなかったな」


 あのアカネさんが困っています。これはレアです。


「じゃが、ここで話すのは少々アレじゃな。まずは城に戻り、お茶でも飲みながら話すとしよう」

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