第63話 お邪魔虫!
いきなり後ろから声を掛けられた俺と藍は思わず立ち止まった!
おいおい、この声は・・・しかも俺の事を「お兄ちゃん」などと呼ぶ奴は・・・
俺と藍は思わず顔を見合わせてしまったけど、まさかあいつがここにいるとは誰が予想できたんだあ!?
俺と藍は無言で首を縦に振ると腕を離して一目散に走り出した!と言いたかったのだが、二人とも一歩目を踏み込んだ瞬間に後ろから腕を掴まれて万事休すだあ!!
「おにーちゃーん、逃げる事はないでしょ?」
そう言ってそいつはニコッと微笑んでるけど、俺にとっては、いや俺にとっても藍にとっても、ついでに言えば唯にとっても『お邪魔虫』以外の何者でもない奴だあ!
「おにーちゃーん、わたしという者がありながら浮気は承知しないぞー」
そいつはニコニコしながら俺を追求してるけど、そいつは俺の元カノでもないし、ましてや今カノでもなーい!勝手に自分でカノジョになった気分でいるだけだあ!いや、正しくは勝手に俺の嫁さんになると妄言しているだけだあ!!
「
「そ、そうよー。私だってデートとかしてないしー」
「それじゃあ、なーんで腕を組んでいたのかなあ」
そいつは、舞ちゃんは相変わらずニコニコしているけど、明らかにこめかみがピクピクしてる!でも先に言っておくけど勘違いしているのはお前の方だあ!
「あ、あのね、舞ちゃん。た、拓真君がさあ、この場に及んで『クリームどら焼きを食べたくなーい!』とか言い出すからー、私が仕方なく拓真君を引っ張っていただけだよー」
「そ、そうだぞー。俺は最初から『みたらし団子の方がいい!』って言ってるのに、藍が勝手にクリームどら焼きとか言ってるだけだあ!」
「ふーん。まあ、あと1年は浮気するのは見逃してあげますけど、来年になったら許しませんからねー」
舞ちゃんはそう言うと「はあああーーー・・・」などと大仰にため息をついてるけど、どうしてお前がため息をついてるんだ?お前の頭の方が完全におかしいぞ!
こいつの名前は
何を思ってるのか知らないけど、こいつが俺と初めて会ったのがたしか2年前の正月、姉貴が正式に結婚すると決まった時に互いの家族が顔合わせをしたのだが、その時が初見の筈(もしかしたら、それ以前に俺と舞ちゃんがどこかで会ってるかもしれないけど、少なくとも記憶にある限りでは2年前が初めて)だけど、その時から俺の事を「お兄ちゃん」などと呼んでるし、しかもどういう理由かは知らないけど「わたしの将来の夢は拓真お兄ちゃんのお嫁さん」などと平然と言ってるような、ある意味、超がつく程の平和ボケの子だ。
瞳さんは見た目が中学生のロリ顔ロリっ子OLだけど、舞ちゃんは現役の中学3年生!でも誰が見ても小学生にしか見えず、瞳さん以上のロリ顔ロリっ子だ。瞳さんソックリにも関わらず小学生にしか見えない最大の理由は、中学3年生にもなって赤いリボンにツインテールというのを全然改めようとしないからだ!
「・・・だ、だいたい舞ちゃんはどうしてここにいるんだあ?」
「あのね、お兄ちゃん。こう見えてもわたしは受験生だよー。いくらお兄ちゃんのお嫁さんになるとはいえ、せめて高校くらいは卒業しないと世間が認めてくれないから頑張って桜高のブレザーが着れるよう、今日もゴールデンウィーク返上で塾通いです!来年はこのわたしが毎日お兄ちゃんと一緒に登下校してあげるから楽しみに待っていて下さいねー」
「ホントは桜高どころか公立の浜砂江田島高校とか浜名湾高校あたりがギリギリレベルのくせに (ボソッ)」
「うっ・・・ま、まあ、それは去年までのわたしです!今年のわたしは一味も二味も違うのです!!」
「瞳さんが言ってたぞー。先々週の塾の全国共通テストの結果が散々だったから、お父さんとお母さんからダブルで雷を落とされた挙句、『浜砂まつり』どころかゴールデンウィーク返上で朝から夜まで塾へ行くよう厳命されたんだろー」
「うっ・・・・」
「しかもさあ、去年の段階で総合Eランクだから桜岡高校はほぼ絶望のレベルだよなあ。桜岡高校は一般入試で入るならCランクは最低ラインだぞー。2年続けてEランクの舞ちゃんは最低でも3年生でBランクにならないと中学の方で受験すらさせて貰えないんだぞー」
「そ、それはトップシークレットという事で・・・」
「まさかとは思うけどー、お父さんに頼み込んで桜岡高校へねじ込もうなどと考えてるんじゃあないだろうなあ!あの親父さんはそんな事をやるような性格じゃあないし、だいたい、うちの母さんが睨みを利かせている以上、雄介さんが黙って見過ごす事はあり得ないぞ!」
「わ、分かっているから、き、今日も真面目に塾通いです!」
「お前さあ、それでも医者の娘かあ!?雄介さんは弁護士になったけど、上のお兄さんの
「そ、それは知ってるけど・・・」
「だったらさあ、いい加減にゲーム三昧の生活を改めろよ!ジャケットモンスターバトル世界大会の元・日本代表などという肩書があっても、高校受験には何も役に立たないんだぞ!」
「拓真君、ちょっと言い過ぎよ」
藍が横から俺の話に割り込んできたけど、たしかに俺もちょっと言い過ぎた。しかもこんな街中で公開説教するような話でもないし、舞ちゃんも半ば泣きそうな顔をしてるから、藍が俺の話を遮ったのはある意味、正解なのかもしれない。
俺もちょっと反省・・・
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