▲▲つ29っ! ねがいごとなぁに?
「……ええと、話が逸れて、ごめんよ。」
「いいのよ。あなた、初めて会うのでしょうから。」
話を逸らしてしまった。まだ、続きがありそうで、俺は謝り、話を戻す。
言われたマフィンは、構わないという顔で。
「さて、話を戻して。一応、力強い男性がいるから、大丈夫ということで納得してもらえたわ。」
「分かった。」
話の続きで、納得してもらったとの下り。
なるほど、だからさっき、レオおじさんはいつも通りに豪快に笑って。
力こぶまで見せつけたのか。
……頼もしいや。
「さて、お話も終わりよ。後は、作業して帰るだけだから。さ、取り掛かりましょう。」
「!あ、ああ。」
レオおじさんの頼もしさを考えていたなら。
マフィンは先の話は終わったと区切り。
手を叩き、作業に取り掛かるよう指示を出した。
頷き俺は、駆け出す。
その鶴の一声に、俺たちメンバーはそれぞれ取り掛かりだす。
さて、作業だが。
何も、難しいことじゃない。
ただ、転がっているマキナの残骸を、廃品回収よろしく。
指定された場所まで運んでいくだけのものだ。
こう言うだけなら、単純なのだが、実際そう上手くはいかない。
大きすぎる物は、小さくしなければならず、それはそれは重労働で。
「……。」
爪で突いても硬い。
おそらく、この前みたいに爪が割れるかもしれない、素手での解体は難しそうだ。
「!」
その代わりとして、レーセが用いられる。
見るに、レオおじさんや、番台さん、ヤグさんも、それぞれ取り出して。
巨体に突き刺していた。
迸る火花、溶接の際のようで。
音も、らしい音。塞がないと、耳がどうにかなりそうだった。
端から見て、それは工事現場。ただ、どうしようと俺は、やや手持無沙汰で。
「!」
誰かが、この騒がしい中、指を突いて俺を呼ぶ。
振り返ればアビーで、いつものにっこり笑顔だ。
「一緒にやろっ!」
続くそれは、俺と一緒にやろうとの誘いで。
俺は頷いた。アビーも頷き、俺の手を握り、引っ張っていく。
「見てて見てて!」
引っ張られて着いた先は、大型のマキナの残骸。
アビーは到着するなり。
俺から手を放し、腕を伸ばしてストレッチ、からの、跳躍。
大型のマキナに乗っかったなら、両手にはめた手袋から、光の刃を展開した。
余裕の笑み浮かべ、手馴れたように解体を始める。
他の人と同じように、光の刃を突き立て、火花を散らす。
ある程度切ったなら、光の刃を仕舞い。
刃を当てた場所に、今度は腕を突き刺した。
まさぐったなら、ある一点で止まる。
「見つけたー!」
喜びの声を上げたなら、その腕を戻す。
その手には、光る水晶玉が握られていた、スフィアだ。
喜びにステップ踏みながら、踊るように踊ってきたら、近くで見せてくれる。
大きさは、アビーが使っているスフィアと同じ。しかしながら。
今度、俺は驚きを隠せない。
あんな大型の機械を、これほどの水晶玉だけで動かしていると思うと。
驚き隠せないのも無理はない。
「おー……。けど、これだけで動いているのか?だとしたらすごいな。」
驚嘆と共に発する言葉。
「えへへー。すごいよね、これがマキナなんだよ!ね、面白いでしょ?」
耳にしたアビーは、すごいでしょ、と言っては笑う。重ねて俺も、頷いた。
前に聞いた、面白い物、とはこのことなのかもしれない。
「さ!次は、大和ちゃんがやってみて!」
「……ああ。」
次は俺の番と手差しされ、頷いたなら俺も取り掛かる。
近くの、適当な残骸を見据えて、始めようと歩み寄った。
「?」
ふと、その時影が残骸から飛び出し、逃げる。
「??大和ちゃん?」
俺が立ち止まり。
何もしないことに疑問のアビーは、首を傾げて俺を覗き込んでくる。
「!」
覗き込んだ際、その大きな耳がピクリと反応したなら。
疑問は消えて、目を見張った。
「!!」
何かを見付けた。アビーは目を見開いたなら、跳躍した。
それはまさしく、獲物を捕らえる様相で。
「そこだー!」
「!!う、うわぁぁん!」
「?」
飛び掛かる際耳にする、叫び声、女の子のようで。
どたんと音を立て、アビーにねじ伏せられた。
「ひっ、ひぐっ、うぅ……。」
嗚咽が漏れ、また、恐怖を押し殺す震えも見えて。
「!」
もちろん、姿もよく見える。ビストの幼子のようで、獣の耳が生えていた。
猫の耳であることから、アビーやマフィンと同じ〝猫の人〟のようだ。
「?あれぇ?君、どこの子?何でいるの?ここ危ないよ?」
「ひぅぅ!!」
同じ種族と分かった所で、アビーは獲物を捕らえる表情をやめ。
いつもの彼女らしい顔になったなら、疑問符浮かべ、首傾げて聞いてみるも。
当の幼子は恐怖してか、上手く話せないでいる。
「アビー。……落ち着かせよう。……あと、どいた方がいい。」
駆け付けた俺は、アビーにそう言った。
のしかかった状態では、なお悪いだろう、付け加えて。
「!あ、ごめんね。」
言われて気付いたアビーは、幼子の体からどいた。
どいた後、座らせ落ち着かせたなら。
彼女の涙目も幾分か落ち着き、恐怖も和らいでいた。
「その、ごめんね。」
「……。」
アビーは、いきなり襲ったことを詫び、頭を下げる。
その際、猫の耳も合わせて項垂れた。
言われた幼子は、フルフルと首を横に振るだけで、まだ何も言ってはこない。
「ええと、その……。どうして、ここにいるの?」
それでもアビーは、続けた。
「……スフィア……。」
すると今度は、ぽつりと呟く。
「?」
「??」
単語に俺とアビー二人、首を傾げ、待ったなら。
「……スフィア……集めてるの……。」
続きが紡がれた。
「!スフィア狩りだねっ!……でも、危ないよ。あたしたちぐらいなら何とかなるけど、ええと、君……子猫ちゃんじゃ……。」
アビーはピンと来て言うものの、途端不安そうに顔を暗くした。
「そうだな。危ないと思う。……だが、そこまでしてやるということは、何か事情があるのかい?お兄さんに話してごらん?」
アビーに追従して、頷くものの、何かあるかもしれない、俺は聞いてみる。
「……。」
幼子は無言でこくりと頷いたなら、間を開けて。
少し呼吸を整えて、ゆっくり言葉を紡ぎだす。
「……お願い事のため……。」
「……願い事?」
「……うん、お願い事。スフィアをたくさん集めて、お祈りしたら叶うって、おまじない……。」
「?」
それは願い事のためであり、まじない。
そのためにスフィアを集めていると、いうことだ。
だが、知らない俺は、首を傾げ。
隣のアビーを見たなら、ピンと来ているみたいで、口元を緩ませている。
「スフィアの導き、だね!」
「!」
アビーの紡いだその一言に、はっとなった。
以前、アビーがスフィアを使った後で言った言葉で。
何でも、スフィアに関わることをしたら、幸運になる、というものだった。
そのために、この幼子は探しに。そうまでして願う、……それは一体何だ。
「……ねぇ。何をお願いするの?よかったら、お姉さんに教えて?」
願い、それは何だろう。アビーも同じようで、優しく語り掛けてくる。
「ええとね……。」
ゆっくり口を動かしては。
「……お母さんに、帰ってきてほしいの……。」
「……?」
その願い事、とてもシンプルなもので。
だが、シンプル過ぎて。
ここまで危険と思われる場所に赴いてまで、したいものとは思えなかった。
「?どうして?」
「……お母さん、連れて行かれて、ずっと帰ってこなくて……。」
「……。」
アビーが続けたなら、その理由が告げられて。
連れて行かれたことに、ピンとくるものを俺は感じた。
マフィンが先ほど聞いていたことが思い起こされ。
若いビストの女性。
そう、アビーやマフィンぐらい以上の年頃の女性が拉致されたと。
もし、この幼子の母親が、その条件に当てはまるなら。
帝国に拉致されていてもおかしくはない。
「……。」
そっとアビーは微笑んだなら、自分のポシェットに手に掛け。
中からさっき手に入れたばかりのスフィアを取り出し。
その幼子の目線まで腰を落としたなら、差し出した。
「……そうだね。お母さん、早く帰ってくるといいね!」
「!」
アビーが差し出したのを見て、幼子は目を丸くする。
「いいよ!使って!そうしたら、お願い事、叶うかもっ!」
躊躇いか、そう思ったアビーは続けた。
幼子は、戸惑いながらもそっと、受け取ったなら、また、涙を浮かばせる。
「お……お姉ちゃん……あ、ありがとう……!」
願い事のため、貴重とされるスフィアさえ与える。
幼子は涙しながら、お礼を言った。
アビーの行動に、俺もそっと微笑み、口にはしないが、アビーと同じことを祈る。
だが。
《警告!ロックオン!》
「?!」
その空気さえ壊す、無機質な警告音声、背中の盾が稼働した。
「?!」
同じくして、地鳴りのような音が響き渡り、さらに、揺れも感じる。
それは、地震か?
……いいや。震源は違う。
その震源それは、どうやら残骸からのようで。それも、巨大な残骸から。
「!!」
唸るような音で、突如残骸が起き上がった。
一つじゃない、いくつも。
起き上がったそれら、空気を放出する音を出したなら。
表面がガラガラと音を立て崩れ、新しい姿を現す。
それは、残骸と呼ぶには不釣り合いの綺麗さ、錆も焼けもない。
姿、それは、巨大な人型ロボット。
漫画やアニメ、ゲームでしか見たことない、それが現実に存在する。
俺は、愕然とした。
「な、何よっ?!」
「うぉぉお?!急にでかいのが起き上がって?!」
「なん……だと……?!」
遠くから、マフィンやレオおじさん、クサバさんの驚愕の声を耳にする。
同じ光景を向こうも見ていた。
皆、何が起きているのか、状況が掴めないでいるようで。
「!!」
合わせて響き渡る、警報。全体に響き渡るように。
《攻撃警報発令!繰り返す、攻撃警報発令!付近の住民は、直ちに避難してください!》
アナウンスが響き渡り、周辺が慌ただしくなる。
「い、一体何がっ……?!」
俺は何が起きているか分からない中。
「逃げなさい!!帝国の攻撃だわ。最初から不意打ちのために、残骸に紛れ込ませていたのよっ!!」
マフィンが遠くから声を掛けてくれる。
その内容に、はっとなって全体を見たなら、なぜか納得がいった。
だから、あの巨体に傷がないのだ。
最初から残骸に紛れ込ませていて、しかし、色々な条件があるのだろう。
起動したなら、奇襲を仕掛けられるように。
兵器として、任務を全うするために。
地を鳴らし、衝撃を放ち、進み来る巨人。
威圧は凄まじく、ちっぽけな自分たちは、怖気付いて動けずに。
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