Re:Re:【第二週】旧海賊惑星ランバリヨンでの新オフィス
トムソンの率いる傭兵艦隊ヤドヴィガの船団は、惑星軌道に入ろうと減速しているタイミングで、ライバル企業である傭兵艦隊マトラーリャ、海賊船の大群、そして商業ギルド同盟のフリゲート隊から集中砲火を浴びた。
光弾が飛び交う。武装しているとはいえ商船構造のフネは破損すればダメージコントロールがしづらい構造のため爆発四散してしまうものも多かった。
トムソン達は油断しており、囮役だった商業ギルド同盟のフリゲート隊や傭兵艦隊マトラーリャは最初から奇襲攻撃する気満々で準備をしていた。
惑星エールはもともと交通量の多い惑星でもあり、それに紛れていたマトラーリャの存在には気づかなかった。トムソンは頭から「ランバリヨンで決戦」と決めつけていたのも問題だった。
「さぁどんどん行くよ! バルバドスのおっさんの仇敵だからね!」
アイラが海賊船「ブルー・ローズ」の船橋で拳銃を振り回す。
「相手が体制を整える前に倒すよ。とにかく落とせそうな船から狙って」
こちらは海賊のローラン。彼女は冷静な顔をしていたが赤い透過素材に好感された右目は彼女の怒りを表すように煌めいた。
「おぃおぃアイラとローランの姐さん達、あまり前に出すぎるんじゃないぜ」
船橋で麦酒をぐびぐびと飲みながら指揮をとるのは海賊の顔役メスデンだった。
海賊たちは先日のトムソンによるバルバドス海賊団の殲滅に憤っていた。
もちろん彼らはリスクを承知で海賊行為をやっているし覚悟はあるのだが、破壊された輸送船団をバルバドスの所業であるとされたことに怒っていたのだった。
トムソンはあろうことか輸送船団を海賊が破壊し、それを駆逐したことを手柄かのように銀河商事の広報に載せていたのだった。
海賊たちは火力は弱かったしセンサー類もミリタリー・グレードには及ばなかったが持ち前の快速と積極的な機動で翻弄した。
そこを歴戦の傭兵艦隊マトラーリャと商業ギルド同盟のフリゲート隊が狙い撃ちにした。
涼井は武装商戦ドーントレーダーに共和国艦艇である偽装武装商船隊数十隻を護衛につけ、やや後方から戦況を見守っていた。
海賊船団はかつてない規模で彼らは集団戦には慣れていなかったが、例によって共和国艦艇を配置することで比較的統制もとりやすくなっていた。
この奇妙な同盟軍の攻撃によってかえってヤドヴィガは体制を整えづらく対応が難しくなった。くわえて船団長はトムソンでこうした状況に慣れていなかった。
「最終段階かな」
涼井が商業ギルド同盟に短艇を飛ばして連絡をとる。
さすがに光弾が飛び変えいお互いにあらゆる妨害をしている中では、確実なのは短艇による連絡だった。接近すれば通信も問題はない。
商業ギルド同盟は涼井の依頼ですぐに動いた。
彼らは戦艦アンダストラを狙い撃ちにしはじめた。
いくつもの光弾や質量弾がアンダストラをかすめる。
護衛のヤドヴィガの船艇もさんざんで、あまりに指示を出さないトムソンに愛想が尽きたのか勝手に離脱するグループもいた。
薄くなったところを狙われたのだ。
「い、いかんぞこれは! いかんぞ!」
トムソンは焦って救いを求めるように艦橋内を見回した。
艦長がため息をついて言う。
「いまのうちに離脱しましょう。我々は銀河商事の子会社で傭兵ですから依頼されたことは実施しますが、これはもう危ないです」
「離脱だと! 始末書では済まない、私の将来をどうしてくれるのだ!」
艦長は心底嫌そうな顔になった。
「それは我々の知ったことではありませんな。おい、船団長は錯乱中だ。契約にある通り船団長が任務遂行不能になった時は適切な者が引き継ぐ。連絡のつくヤドヴィガ船艇は全方向に全力射撃、その後、分散して離脱する」
「おい! 艦長、勝手に……」
「錯乱がずいぶんひどくなったようですな」
艦長はトムソンを無視して指示をくだした。
傭兵艦隊ヤドヴィガは生き返ったように統率された動きを見せ、全方向に狙い構わず光弾を発射した。その勢いに海賊船団が乱れる。
その一瞬のスキをついて損害を出しながらも傭兵艦隊ヤドヴィガの残存艦隊は脱出を試みた。
海賊船たちは追撃したがったが涼井が頼み込んで止めた。
いずれにしても惑星エール軌道付近での会戦は涼井たちの完全な勝利に終わったのだった。
後には数百隻もの撃破されたヤドヴィガの船艇の残骸や漂流する船が残されていた。さっそく涼井たちの艦艇が生存者の救助に向かう。血の毛の多い海賊船団は掃討しようとしたがこれも依頼して止め、後始末を共和国艦艇と商業ギルド同盟のフリゲート隊に任せた。
涼井は海賊船団を惑星エールの惑星軌道上に待機させ、主要な頭目たちを惑星エールの帝国資本のホテル「ホテル・シャンパーニュ」の大部屋に案内した。
そこには商業ギルド同盟の通商官達、そして共闘した傭兵艦隊マトラーリャの幹部も集合していたのだった。
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