第47話 【決算】フォックス・クレメンス社の正体
ポセイドン宙域は辺境のヘラ・ハデス両宙域に近く、共和国の中でも有数の軍需工場地帯として知られていた。
居住のための惑星である惑星ポセイドンは98%が液体の水で覆われており、巨大な波の影響で陸地には居住できないため、人々は海中か空中に都市を浮かべていた。
軍需工場は惑星ポセイドンの巨大な衛星に分布しており、全体で年間数万隻もの艦艇を建造していた。
この惑星ポセイドンに彼のフォックス・クレメンス社の本社がある。
CEOであるジェスター・クレメンス氏は涼井達の調べで革命的反戦軍の重要な同志であることも分かっていた。
アテナデイリータイムスの大株主でもある。
そして革命的反戦軍にどうやってか艦艇を供給しているのもフォックス・クレメンス社だった。
フォックス・クレメンス社は艦艇を供給していると同時に訓練の一部を受託しており常に2000隻前後の艦艇を民間企業として保有しており共和国軍の訓練なども支援していた。
時には新造艦艇の操舵からメンテナンスなども請け負っており、アテナ宙域で反戦的革命軍の艦艇の一部を動かしているのもフォックス・クレメンス社だった。
一方でフォックス・クレメンス社はポセイドン宙域でも有数の軍需企業であり共和国議員への献金も行われ、共和国内でもそれなりの地位を築いているのもまた事実なのだった。
そしていま、ポセイドン宙域には涼井率いる第九艦隊の全軍12000隻が侵入してきているのだった。
以前の帝国軍との戦いで共和国艦隊は大きく傷つき、まともに稼働できているのはアルテミス宙域のロアルド提督の艦隊、涼井の第9艦隊をはじめとする7〜8個艦隊にすぎない。
ポセイドン宙域に完全無欠な一個艦隊が現れるのは久々のことであった。
涼井は艦隊を整然と整えて惑星ポセイドンの公転面からみて直上から侵入した。
公転軌道をかすめるように減速し、恒星を回って惑星ポセイドンに向かった。
その前に現れたのは1500隻ほどのフォックス・クレメンス社の艦艇群だった。
彼らは惑星ポセイドンの衛星軌道に入ろうとする第9艦隊を邪魔するかのように軌道に割り込んできた。
訓練用の艦艇を示す黄色に赤の派手な塗装はきらきらと恒星の光を反射し、暗黒の宇宙空間にきらめく流星群のように見えた。
「ほう、邪魔してきましたな」と主席幕僚のバーク。白ひげをしごきながら顔をしかめている。
涼井は久々に旗艦「ヘルメス」の提督隻に座って目の前のメインモニタを見つめていた。
「そうだな……直接的な妨害に出てくるのは予想外だった」
「先方から通信というよりメールが入っています!」とこれはリリヤ。久々の艦隊勤務だからか肌がツヤツヤしている。
「ええと……『こちらは定常訓練である。契約外の訓練は承っていない。なにゆえ侵入されるのか意図を明白にせよ––エメット退役少将』だそうです」
「ほう、あのエメット少将ですか」
バークが顎髭を触る。
「知っているのか?」
「まぁ我々よりだいぶ年上ですが、帝国軍との戦いでなかなか活躍した猛将ですよ。退役後は民間企業の嘱託やってると聞いてましたが、フォックス・クレメンス社でしたか……」
「軍人の癖は抜けていないようだな。まるでポセイドン宙域の駐留艦隊の司令官かのようだな」
「仰る通りです。しかも『契約外』と来ましたか」
「ふむ……」
涼井はしばらく思案した。
「まぁ何はともあれ、彼がこちらの意図の妨害に出ているのは明白だな。だがプライドがずいぶんと高い御仁のようだ。このようにしよう……」
涼井はひそひそとバークとリリヤに作戦を伝えた。
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