ローズヒュドラの毒牙3

 「危なかったぁ、吃驚よ。全く。」


 無論大爆発程度で仕留められたら世話は無い。


 無傷である。


 「シュー……………」


 「シェァ―」


 今度は二頭が毒霧を吐き始めた。


 今度は二つの霧が混じり合った瞬間、


 ボォ!


 炎上。


 『疾風ウインド』


 効く訳が無い。


 「うーん……………全部毒の霧みたいだけど、もしかして、それぞれの毒牙によって毒の性質が違うのかしら?」


 そんな独り言に応えるように別の二頭が毒霧を吐き始めた。


 ピキン!


 今度は断絶の障壁が凍り付いた。


 結界を覆うように分厚い氷が張ってしまった。


 『業炎フレイム』


 氷塊が炎に包まれる。シューシューと音を立てて氷が溶けていく。


 「みたいね。面白そう!」


 好奇心で目を輝かせながらヒュドラを見つめるタツミン。


 それに怯んだヒュドラ4頭は……………頭を地面に叩き付けた。


 蛇式の土下座かとも思ったが、(座るも何も足が無いが)そうではない。地面にどんどんヒュドラの胴体が吸い込まれ、大きな穴を残してヒュドラが消えた。


 「あらあら。まさかとは思ったけどスネーク同様に潜れるのね。」




 ローズスネークの厄介な所は地面に潜って潜行することにある。


 体を覆う鋭い鱗と溶解性の毒が地中の石などの障害物を溶かし、地上と遜色なく高速で移動できるのだ。






 「んー………如何しようかしら?」


 逃げていないのは賢者には御見通し。


 おそらく地面からの不意打ちを狙おうというのだろう。


 それ自体は問題ない。どころか襲い掛かって大口を開けたところで顎が外れるサイズの氷塊を口に放り込む事さえできる。


 しかし、今回の彼女の目的は毒牙の採集。


 口に下手な怪我をさせては目的が達成できない。


 牙を抜くのが目的なのだ。


 「仕方ない。あの子を呼ぼうかしらね。」


 そう言って懐から取り出したのは鍵だった。


 銀色に輝き、小さな赤い宝石とその周りにて輝く漆黒の石で装飾された鍵だった。


 『異界の門よ、叡智を司る我の名とその証たる鍵を以て門を開け


 万の手を持ち、幻海を統べる狂気の悪魔を我が世界に招き入れよ』


 呪文を唱え、何もないところで鍵を差し込む動作をする。


 同時に鍵の先端が消えた。


 ガチャン!


 先端の無くなった鍵を回すと存在しない門の鍵が開いた。








 異界の怪物が現界した。













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