Folge 78 長女いじり
「サダメ? みんな食べ終わったし、そろそろ……」
咲乃を乗っけて抱き着いて。
気持ち良すぎて眠りかけていた。
「ん? そろそろ、行くかあ」
口はそう言っているが、両腕が離そうとしない。
いや~、困ったなあ。
「兄ちゃんったら、離す気無いでしょ。ツィスカ抜きにするよ?」
え、ツィスカ抜き。
ご飯抜き的な? ……それ、嫌だな。
ツィスカは耐えられるのか?
「ツィスカにとってはオレ抜きになるけど」
「うっ」
うっ、て。
気づいていなかったとか?
そういうところがツィスカなんだよね。
可愛い。
「兄ちゃん抜き、ご飯抜き的な?」
一緒の事考えているの笑える。
自分で言い出したことなのにね。
「そういうことだろ?」
「そ、そうね。あたしはタケルとカルラがいるから」
「オレにもタケルとカルラがいるから」
「もおっ、兄ちゃん嫌い! ……好きだけど」
この妹、どうしてやろうか。
可愛がるしか思いつかない。
「あのさあ、僕たちを代わりにしないでほしいなあ」
「まったくね。まあ、ツィスカがサダメと離れるならわたしが独占できるけど」
「もおっ、兄ちゃんはあげないよ!」
「二人のでしょ?」
「そうよ。だから兄ちゃんは……あれ?」
さくみさがクスクス笑って見ている。
ツィスカの暴走って面白いよね。
「カルラぁ、兄ちゃん抜きできない」
「サダメにツィスカ抜きをするんでしょ?」
「兄ちゃん抜きになるじゃん」
「知らないわよ。ツィスカが考えたことよ」
「じゃあ、今の無し」
撤回された。なんだったんだ?
「あはは、面白いなあ。ボクは今も抱かれているし」
「咲乃ちゃんって兄ちゃんにくっつくの、上手よね」
「ありがと」
「褒めてないよ! 教えてよ」
「ツィスカちゃんの方が上手でしょ」
「そう? ま、まあ長女だし! 兄ちゃんのことは一番よく分かっているのよね!」
みんなでツィスカを弄って遊んでいる。
面白いし、和むなあ。
「何でも聞いて! あ、だめ! 教えないから。兄ちゃんはあたしの!」
「だからわたしも」
「あ、そうだった。あたしとカルラの!」
もうツィスカどうしたんだ?
しっちゃかめっちゃかになっている。
「ツィスカを弄るのは程々にな。可愛いから気持ちは分かるけどさ」
「悔しいけど、可愛いのは認めちゃうなあ。サダメが離さないのも仕方ないね」
「褒めても何も出ないわよ」
「本当のこと。毎日学校で大変なんでしょ? 告白だらけだって」
「それね。兄ちゃん以外はそんな感じ。兄ちゃんに勝てないのにさ」
えっと、落とされた? 上げられた?
そこんとこ詳しく。
「だから兄ちゃんが彼氏だって言っているのに。懲りないの」
「それだけ魅力的ってことでしょ? 羨ましい」
「咲乃ちゃんさあ、自分の綺麗さを知った方がいいよ」
「ボクが綺麗!? 美咲は分かるけど、ボクは何も手入れしていないし」
「何もせずに綺麗ってことは、元が相当良いってことじゃない」
「そんなこと誰にも言われたことないから、信じられないよ」
家庭環境が一番大きいとは思う。
引き籠っていたのもあるだろう。
比べたり、比べられたりすることが無かったんだよな。
比べるとしても、傍に居るのは双子の姉。
ほぼ自分と変わりがないわけで。
「しまった。兄ちゃんが撫で始めちゃった」
あ。
そういう話を聞くと頭を撫でてしまうんだ。
咲乃はニコニコしているからもっと撫でちゃう。
「ツィスカ、二人の事許しているんでしょ? あれがサダメなのだし」
「分かってるわよ! ほんとに、厄介な二人が来たものね」
偉そうなことを言っている。
それはツィスカの基本。
みんな分かっているから温かい目だ。
そして色々と言いながらも、さくみさを受け入れている。
ところで、自分はどうなのか。
受け入れてはいると思う。
だからって、なんなのだろう。
今の悩みはそこなんだよなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます