EX-6 後輩達とバレンタインデー(2月14日)
2月14日。
この日を意識しない男は存在しないと個人的に思っている。
……と言っても中学卒業まではもらうあてがまったくなかったので意識してなかったんだけど……。
今は違う。
2年前は親しくなった友人の練習台として義理チョコをもらう。
去年は大好きな女の子からもらえてハッピー……だけどあれはあれで大変だった。(主に116話)
今年はもう、そんなことは起こらない。
愛する恋人からチョコをもらってハッピーオンリーな気分となるのだ。
それで2月14日に恋人の月夜の家に呼び出される。
実を言うと先週ぐらいからバレンタインデーの準備をするのでしばらく家に近づかないでと言われていた。
でも、どんなものをもらえるのか心配になってきたので……学校の休み時間に同じ家に住んでいる月夜の兄貴に話を聞いてみた。
問いかけると星矢は何と頭を抱えてしまった。
「妹がますますバカになっている……俺はどうしたらいいんだ」
「な、何をしているのかよく分からないけど……深く考えない方が」
「おまえのせいだからな! 妹を汚して、無茶苦茶に辱めた責任はちゃんと取れよ!」
「言い方!? そんな大声で言わないでくれる!?」
そんなわけで僕は恐る恐る神凪家に到着したのだ。
「いらっしゃーい!」
「こんばんは、先輩!」
出迎えてくれたのは月夜と陸上部の後輩である八雲さんだった。
八雲さんがどうしてここに?
制服姿の八雲さんと違い、月夜は部屋の中なのにオーバーコートを着ていた。
そして月夜の横には何か巨大なものが置かれており、シートが上からかけられていた。
嫌な予感がする……。
「今回は私も手伝いました~」
八雲さんがアピールするように手をあげる。
そのまま小声で僕に声をかけた。
「別でチョコあげようとするとものっすごく機嫌が悪くなるので……共同制作ってことで」
「ああ……」
月夜はびっくりするほど嫉妬深い。
顔もスタイルも能力、全てが完璧なのになんでだろうなぁ。
女の子は少し抜けている方がかわいいという気持ちが心の底であって、完璧すぎることに焦っているのかもしれない。
どちらにしろ僕は月夜以外の女の子に興味はないんだけど。
でも抜けているという面でいればこういう所なんだよね。恋愛関係だけはポンコツな面を見せる。
だから、多分目の前のこれはその集大成な気がする。
2人はシートを取っ払った。
「太陽さん、私とくるみちゃんで作った上半身太陽さんチョコです」
「どうしてこうなった」
制服を着ている僕がそこにはいた。
胸から顔にかけてチョコが僕自身が作られている。
どうやって作ったんだコレ。
「八雲さん」
「冗談つもりだったんですけど、月夜先輩の造形技術が天才すぎたんです。でも作ってたら楽しくなってきました!」
「君も結構月夜と同レベルだと思うよ」
せめて僕の顔じゃなくて、月夜の顔とかにして欲しかった。
自分の顔を食べるのって何か抵抗があるんですけど……。
「実は他にもギミックがあるんです」
「ギミック?」
月夜は僕には金槌を渡す。
「太陽さんの頭、カチ割ってみてください」
「手の込んだ自殺ってこういうことを言うのかな」
考えるのも面倒くさいので自分の頭をかち割った。
無駄に精巧なんだよな。確か月夜って美術の成績もよかったっけ。
チョコ像の頭の中は空洞になっていて、中から……あれ、何も入ってないぞ。
「先輩、もっと奥です。ちんちんの方です」
「そうか……って上半身だろ!? 君は何言ってんのほんと!?」
八雲さんは小悪魔っぽくニヒヒと笑う。
この子のこういう所にこの1年からかわれた気がする。
あ、奥の方に何かあった。
「あ、何か紙が入ってある。えっと……本命チョコは月夜の胸のな……」
僕はちらっと……月夜の方を見る。
月夜はオーバーコートを脱いでいく。綺麗な白い肌が見え、綺麗なおへそが眩しい。
そして印象的なのは胸部のピンクの下着だ。何より注目点は……豊かな両胸の間に埋まっているハート型のチョコ!
そんな所に本命があったのか。
恥ずかしそうに顔を赤らめるが僕の視線はそちらにはいかない。
「その……くるみちゃんが男の人はこういうのが好きだって」
「先輩、今のトレンドは私を食べて……ですよ!」
僕は軽く息をついた。
これはチョコなだけにたっぷりチョコとその周囲をなめていくしかない!
「まったく、後輩達は……もう、仕方ない。いただきま~~~す!」
「月夜先輩、私も食べりゅうう!」
「きゃ!」
「帰ったぞ」
その瞬間……僕も月夜も八雲さんも……この周囲の時が止まったようだった。
「……何やって、おわっ! チョコ像潰れてる! って月夜は何をやっているんだ」
ゴゴゴゴと怒りの雰囲気を表しているお兄ちゃん。……ここでフォローするのは彼氏の役目。
僕は振り返る。
「星矢……、今度は4人でしようか」
「だから変態プレイをこの家でしてんじゃねぇ! バカヤロウ!!」
またまた、お兄ちゃんにこってりしぼられましたとさ。
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