【AFTER1】~月夜と夏をもう1度~
1-1 月夜ととある昼下がり
季節は夏真っ盛り。
私立
結局土日も宿題があるのでそうたっぷりと遊ぶこともできず、ため息をつく毎日だ。
しかし土日だけは勉強も苦ではない。そう、世界で一番かわいい恋人と一緒だからだ。
「月次テストはどうでした?」
「また順位が上がったよ。月夜のおかげだね」
「えへへ」
栗色の髪を背中までなびかせ、誰もが見惚れる整った顔立ちをした女の子。
右手でサラサラの髪に触れ、優しく撫でてあげるととても嬉しそうに表情を綻ばせる。
あーもうほんとかわいい。
彼女の名は
僕の親友の妹にして、愛くるしい笑顔が素敵な超絶美少女。かわいくて、スタイルよくて、頭もよくて、僕を愛してくれる、最高の恋人だ。
ほぼ土日は月夜と一緒に過ごしている。
月夜と図書館へいって、イチャイチャ……じゃなくて真面目に勉強をする。
おかげで毎月行われる特進科のテストでぐんぐんと成績が伸びている。2年生の時は20番の常連だったのに今や10番前半まで順位が上がったのだ。
だけど、上位陣が相変わらず無敵なせいでなかなか1桁順位は難しい。
「あ」
「どうしたの?」
月夜は何かを思い出したように立ち止まる。
腰に下げているポーチから1枚の紙を取り出した。
商店街くじ引き券……。
「ああ、去年の8月にやったやつか」
「うん、そうそう」
去年もこうやって図書館の帰りに商店街へ寄って、ガラガラくじを引いたんだよなぁ。
あの時はゲームセンターのゲーム5回券が当たって月夜と白熱しながら遊んだ記憶がある。
「ちょうど今日から引けるみたい。これから行きませんか? 太陽さんと一緒ならいい商品狙えるかも」
「そうだね。2人で引こうか。月夜はえらいな~」
「ほんと!? 褒めて褒めて」
月夜は僕の方を向いて目を瞑って口をつぐむ。
さきほどまで月夜の後ろ髪をゆっくり撫でていたので、そのまま少し手前に押し出した。
少しだけ屈んで、月夜の小さくて潤いのある唇にキスをした。
吸い付くように、息を送り込むように唇を押しつける。
月夜の褒めてはキスをしろということだ。
交際して半年近くにもなると彼女の望んでいることがよく分かる。ちなみ間違っててもキスしてあげればだいたい喜んでくれる。
月夜は変わらずキス魔でチョロいままだ。
キスを終えた後は仲良く手を繋ぎ足並み揃えて目的地へ進む。
◇◇◇
商店街に到着して、くじ引き所にたどりつく。交換所のおじさんにチケットを渡した。
今年の商品は何だろうか。
「1位は温泉旅館の宿泊ペアチケット。去年とは違う場所か。へ~海水浴場も近くにあるんだね」
「今年の夏のバカンスは無さそうだし、行ってみたいですね」
僕と月夜が所属する【星矢ハーレム】というグループだが、3年生が大半をしめており、受験に加えて、夏は大事な大会もあるため今年の夏はみんなで旅行は無理ということになっている。
その代わりに受験が終わった春には大きな卒業旅行をしようという話だ。
残念だけど、僕自身がその受験生だから仕方ない。2年生組には悪いけどね。
ガラガラくじはなかなか当たらない。当たるのは一番の外れのティッシュか。その上のゲームセンター5回使用券だろう。
去年の月夜と行ったゲームセンターデートとしゃれ込みたいのでそれが当たることを望む。
「旅館もいいけど、ゲームセンターもいいですよね~」
月夜も同じことを考えていたみたいだ。
「去年、エアホッケーで惨敗したリベンジをさせてもらおうかな」
「ふふ、負けませんよ。でも私は太陽さんとプリクラを撮りたいな」
「そうか。最近撮ってなかったね。1番に撮ろうか。月夜のかわいい姿を残しておかないと」
「それを言うなら太陽さんの世界で1番かっこいい姿を残すのが先決ですよ」
僕は月夜の腰に手をあてる。
「月夜と一緒なら何でもいいさ」
「私も……。太陽さんが構ってくれるならしあわせ」
「月夜……」
「太陽さん……」
「あのー、さっさと引いてくれんかね」
おじさんに怒られちゃったぜ。
気を取り直し、月夜はガラガラくじの取ってを掴んでゆっくりとまわす。
ゲーセン来い。ゲーセン来い。
今日の月夜の服はかなり胸元がゆるいカットソーだ。エアホッケーでそのたわわな果実を堪能してやる。
玉が落ちた。ふむ、金色か。金色は何だっけ。
おじさんがテーブルの上に置いてあったベルを掴んで振る。
「1等、温泉旅館ペアチケット、大当たりーーーっ!」
「うお?」「ほえっ」
これが噂の物欲センサーってヤツなのだろうか。
僕と月夜は後日、夏の旅行へ行くことになった。
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