153 Last Episode あの花畑で月夜と共に⑥

 ハイキングが終わって、学園祭か……。


「月夜のメイド服、ほんとかわいかったよなぁ」

「ご主人様、嬉しいです」


 学園祭の月夜のメイド服を見て、メイドの良さが分かった気がする。

 付き合ってから僕の家に月夜を呼んでメイド服を着てもらったのも今思えば学園祭が始まりだよね。


「でも美少年、美少女の執事メイド喫茶。本当に大変だったんですよ」


 僕は料理の受け渡しをしていたから中は見てなかったんだよなぁ。


「とにかくセクハラみたいな言動されるし、体触られそうになるし、告白されるし」


 星矢ハーレム……グループの女の子、みんなかわいいがやはり月夜のかわいさだけは別格のようで、

 客人気も圧倒的に月夜が人気だったらしい。


「私はあーいうのが一番嫌なんです。だから休憩って言われてやっと休めると思ったら」


 月夜は振り向いた。


「太陽さんが私を出迎えてくれてこれが本当の美少年執事喫茶と思いました」


 完全に月夜限定だよね。僕の容姿は美少年とはほど遠いよ。

 あの後、オムライスに美味しくなる魔法をかけてもらって月夜に食べさせてもらったんだよな。


「また月夜にオムライスを食べさせてもらいたい」

「ふふっ、帰ったら作ってあげますよ」


 それは楽しみだ。

 それからミスコンの話となって、重要なのはやっぱりその後かなぁ。


「学園祭のミスコンの後……太陽さんが一緒に下校してきた時、本当に嬉しかったんです。太陽さんも2年生の集まりに行くと思ってたので」

「そっちも気になってたんだけど、それ以上に月夜が心配だったんだよ」

「あれからつらいときは助けてくれる人って印象があってますます好きになっちゃいましたね」

「あの時の行動は成功だったようだね」


 でもその後が大変だったような気もする。


「あの下校の後、私……途中で眠ったじゃないですか? あの時……本当は何かあったんじゃないですか?」

「鋭いね。フラフラの月夜が僕に抱いてくれないんですかって言ったんだよ」

「え!? 本当に……それで太陽さんは」

「こんな風にした」


 両手で月夜の体を包み込み、ぎゅっとした。


「うぅ……全然覚えてない……」


 翌日夢で見たって言ってたような気もするけど、その記憶も消えちゃったのかもしれないな。

 僕にはとっては印象深すぎて忘れたくても忘れられない。月夜を抱きしめたのはあそこが初めてだった気がする。

 本当に抱き心地が良すぎて1週間くらい興奮が収まらなかった。

 その後もやりとりはあったけど……それは僕の心の中にしまっておこう。


「2日目は劇だったね。月夜が着ていた衣装はもうないの?」

「もともとは家庭科部のものですからそっちにあるんじゃないでしょうか」


 あの劇で着ていた月夜の衣装は本気で神がかった美しさだったよな。


「劇中に僕がこそっと入って……月夜に」

「あれは海ちゃんが悪いんです! すっごく練習して、最後のキスシーンに海ちゃんじゃなくて太陽さんがいたんですよ。びっくりするに決まってるじゃないですか」

「あれはちょっと世良さんが悪いよね」

「でも太陽さんに堂々とキスできるチャンスでした。唇にしようかと思ったんですけど……勇気が足りませんでした」


 月夜は声が弱々しくなる。ああ、こういう所もいじらしいなぁ。

 ほっぺにチューでも十分衝撃的だったけどね。

 月夜が唇をつり上げる。はいはい、仕方ないなぁ。

 要望通り軽くキスしてあげた。ご満足な月夜を見るとこっちもほんわかになるなぁ。本当にかわいい。


「その後、キャンプファイヤーで月夜が20人から告白されてたのはすごかったよね」

「そんなのありましたっけ?」

「えっ」

「その前に太陽さんとオクラホマミキサーを踊ったことで頭いっぱいで、あの時、太陽さんに踊ってくれますかって言われたことがすっごく嬉しくて」


 月夜の記憶基準が僕との思い出ばかりな件。

 月夜は思い出して手を両手にあてて悶え始めた。

 あそこまで喜んでくれるとは思わなかったな。しかし、20人がかわいそうだ……。


「その後は体育祭ですね。やっぱり対抗リレーでお姫様だっこされたのが印象的です」

「鎧みたいなごつい服着てたから全然感触ないんだよね」

「そうですよー。太陽さんの顔が見れなくて、いっぱい抱きついたのに反応わかんないしさみしかったです」


 あの覆面付きの衣装は月夜には不評だった。

 僕は覆面越しで月夜の可愛い姿を見られて満足だったけどね。


 僕は抱え込んでいる月夜の側面に移動して、背中と膝の下に手を入れる。

 そのまま持ち上げた。


「ひゃっ!」

「やっぱり月夜は軽いなぁ」


 運動部の僕には月夜を持ち上げるのはたやすいのだ。

 月夜はそのまま両手を僕の後ろに持ってくる。


「あの時もこうやって抱きしめたかったです」

「今日は存分に……といっても維持するのはきついからほどほどで」

「は~い」


 月夜とそのまま1回、キスをして解放してくれた。この体勢で口づけするの結構しんどいんだな……。

 もっと腰まわりを鍛えないと駄目かなぁ。


「この後は……」

「写生しましたよね。公園で」

「ああ、そういえばあったねぇ」


 再びいつもの僕の胸の中に月夜が入り込んだ体勢となる。

 時々月夜の栗色の髪を頬ずりすると気持ちが良い。


「覚えてますか? 太陽さん、私の膝の上で眠ったじゃないですか」

「いいふとももだったねぇ。それがどうしたの?」

「あの時太陽さん、寝言で私のこと好きって言ったんですよ」

「え!?」


 それは知らなかった。あ! だからあの時真っ赤になって急に帰ったのか。


「太陽さんが私のことどう思っているのか分からなかったです。ずっと心の中に沈めこんだせいで」

「うっ」


 まだこの頃は月夜からの好意に明確に行動を移せてなかった気がする。


「でも寝言で好きって言われて、やっぱり好意はあるんだって確信ができたんです」

「まぁ……本心だしね」

「それで私、ガンガン行くことにしました。太陽さんが私をもっと好きになるように積極的に行ったんです」


 そうか……そうだったんだね。

 確かにやけにボディタッチが増えたなと思ったよ。


 あの時期から僕は別の意味での苦悩が始まったんだよな……。


 ちょっとお仕置きしないと駄目だよね。

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