149 Last Episode あの花畑で月夜と共に②

 僕と月夜は目的地へ到着。

 一面草原でやや風が強いものの、シートを張ればちょうどいい休憩場所となる。側に大木もあり、影となってる所もよい。

 ここからさらに先へ進むと最終地である一面の花畑となっている。ただそこへ行くにはもう少し時間が経ってからの方がいい。

 そのためこの場所でお昼ご飯を食べてのんびりしてから見にいこうという形になった。


 大木の影となっている場所で地面にシートを広げて、僕と月夜は座り込む。

 月夜が作ってきてくれたお弁当を広げて、美味しい料理にありつけるのだ。


 食事も終えて、僕と月夜は肩を寄せ合い、お昼の時間を満喫する。

 ただ花畑が一番綺麗に見える時間帯までかなり待たなければいけない。

 何をしようかな。


 そろそろアレをしていい頃かもしれない。


「ねぇ月夜」

「なんですか?」

「そろそろ振り返りたいなと思って。そういう話はしてこなかったでしょ」

「振り返りですか?」


 付き合って一ヶ月半。

 8月下旬の後から僕が月夜を想っていた記憶はいつでも思い出せるが、月夜の想いというのはよく分からない。

 最終的にこのような恋人となれたが要所要所でなぜそのような行動を取ったのかが気になるんだ。


「ちょっとした昔話だよ。いい話題になると思うし」

「いいですよ。時間もありますしね」

「それじゃ」

「まずは太陽さんが私に一目惚れしたって話からですよね」

「えっ」


 月夜は肩を寄せ合い、興味深く聞いてくる。

 ま、まさかここから話すことになるなんて考えもしていなかったんだけど……。

 恥ずかしいけどいいや。月夜にとって悪い話じゃないし。


「1年半前、私が中学3年生だった夏ですよね」

「陸上部の部活帰りと星矢のバイト帰りが重なってちょっと話すために家に立ち寄ったんだよな。そこで初めて月夜を見たんだ」

「初めての私はどうでした?」

「めちゃくちゃかわいかった。一発で好きになったよ」

「んぐっ!」


 堂々と聞いてくる月夜を照れさせてやろうと顔を近づけて思いっきり伝えてやった。

 思った通り、月夜は頬を赤く染めて視線を外した。


「それまで強い恋とかしたことなかったんだけど、やっぱり衝撃的だったよ。こんなにかわいい女の子が存在したんだって思った」

「そ、そうですか」

「月夜が僕を見てこんばんはっと笑顔で言ってくれて、衝撃的というか、心を一気に鷲づかみにされちゃったね」

「や、やっぱりこの話……」


 絶対止めない。

 星矢にもバレてたわけだし、顔に出ていたんだろうな。その時は中学校の制服だったけど、背中まで伸びた栗色の髪は健在で、二重の瞳はいつも通りくりくりしていて、とんでもないなって思ったよ。

 星矢自身がとんでもないイケメンだから血を分けた兄妹って感じだよね。

 今度中学時代の制服着てくれないかな。写真を撮りたい。

 もし月夜と一緒の中学だったらずっと見惚れていたんだろうと思う。


「その一目惚れした女の子が目の前にいて、こうして僕の恋人になってくれるんだから……僕は幸せ者だね」

「うぅ、なんで私が照れてんだろう」


 顔を描くして手で顔を隠す月夜の髪をゆっくりと撫でていく。


「でも最初はやっぱり気をつかってしまったよ。月夜が好きだってことがバレて変な空気にならないように距離を置いてたからね」

「全然喋らなかったですよね。私も男性と喋るのは苦手だったのでちょうどよかったんですけど」


「機会が増えたのは星矢の遅刻対策で朝に一緒に通学するようになった頃だよね。1年の秋か」

「そうですね。あれから、朝、家にいるから少しだけ喋るようになりましたよね。ほんとおはようぐらいでしたけど」


 思い出したように月夜はくすりと笑う。

 それで勉強会で星矢の家に泊まるようになって月夜の手料理を食べさせてもらうことになって……。

 正真正銘月夜は親友の妹の立ち位置になったんだよな。

 恋心とは別にそれはそれでよかった。


「去年の1月に水里さんが転校してきて、星矢を中心としたグループが出来て、続々と綺麗な女の子が星矢のまわりに集まったけど……」


 僕は月夜の肩を強く引き寄せる。


「それでも僕は他の女の子に好意が移ることはなかった。前は星矢を好きな女の子達にわざわざ想いを寄せることはないって言い張ったけど、本当は出会った頃から月夜が好きで好きでたまらなくて、他の女の子が目に入らなかったんだよ」

「……嬉しい」


 自分でクサイこと言ってる自覚はある。でも言わずにはいられなかった。


「私も……太陽さんを好きになったのは前の8月でしたけど、去年の今頃、もし太陽さんに告白されてたら付き合ってたと思いますよ」

「え?」


 それは初耳なんだが。


「その時期、高校入学が決まった頃ですよね。木乃莉は兄が好きで海ちゃんも気になる男子がいるって話があったんですよ。でも私だけ何もなかったんです」


 その頃の月夜はあらゆる告白を断ってたって言ってたもんな。男子に興味がないんじゃって話もあったくらいだ。


「幼なじみの2人が恋愛に興味が出て、兄のまわりには女の子が増えるし、私だけちょっと焦ってたんですよね」

「それで……僕?」

「候補には入ってました。好きでなくても付き合えばそこから恋が生まれるのかなって思ってましたし。太陽さんってお兄ちゃんの唯一の友達だったじゃないですか」


 星矢は最近、かなりマシになったんだけど、1年前はガチで僕以外の友人はいなかった。

 今は数々のイベントのおかげで普通に喋るくらいには交友関係が出来ている。


「男性として安心してたってのはあります。他の男の子みたいにいやらしいことはしてこないだろうという想いはありました」

「そ、そうか」

「実際付き合ったら結構いやらしいことされてるんですけどね」


 それは言わないで欲しいな……。僕だって普通の男子高校生なんだから! 我慢できなくなることだってある。


「ふふ、だから去年の今頃告白してきたら付き合って、そのまま好きになってたかもしれないですよ」

「惜しいことをしてたんだね……。1年前に付き合っていたらなぁ」


 その1年は大きく楽しかっただろう。でも今のような過剰なラブラブにはならなかっただろうし、ボディタッチも許してくれなさそうだ。だから結果オーライなのかもしれない。


 月夜と僕は振り返りつつ話をした。

 そしてようやく8月中旬までの話に到達する。

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