142 猫カフェリターンズ

 

「あれ、月夜と先輩じゃん」


 商店街を月夜と歩いていると見知った声に呼び止められる。

 手を振ってこちらにやって来るのは1年生組の世良さんと瓜原さんだ。

 2人ともかわいい格好だ。よく似合っている。


「2人はどこかへ行くのかな」

「今日休養日だから木乃莉と遊ぼうと思って。月夜は先輩とデートばっかりで付き合ってくれないし〜」

「ごめん、必ず埋め合わせはするから!」

「特に行くアテもないけどね」


 世良さんは水泳で名を知られた女の子だ。

 毎日練習ばかりの日々だという。なのでたまに体を休める日を設けているのは知っていた。

 いつも幼馴染3人一緒だったのに僕がそれを奪ってしまったのが申し訳ないなぁ。


「月夜、もしよかったら今日行くところに2人も連れて行く? 骨休めとしては充分だと思う」

「いいんですか? 太陽さんがいいならありがたいですけど」


「なになにどこ行くの?」

「もう海ちゃん。2人の邪魔しちゃ悪いよ」


 今日行く所は複数人数でも問題ないしね。みんなが幸せになれて、嬉しい方法を取ることが大事だ。


「今日行く所は猫カフェだよ」



 ◇◇◇


 月夜と付き合う前に行ったあの猫カフェに僕達4人は行く。

 幸いみんなアレルギーもなく、十二分に楽しめそうだ。


「世良さん、瓜原さんは猫カフェは初めて?」

「あたしは初めて! でも木乃莉は初めてじゃないよね」

「ちょ、海ちゃん、それは言わないでよ!」


 猫カフェ自体は有名なものだし、経験していてもおかしくはない。

 でも瓜原さんはやけに慌てていた。

 月夜が僕の方を向く。


「少し前に遊佐くんと行ったそうですよ」

「ああ、そういうこと」


 遊佐天は1年生の男の子。9月頃に瓜原さんに大胆な告白をしていた。

 まだ正式に付き合ってはいないようだが、2人で遊びに行っているを見ると順調に仲を深めているようだ。

 僕と月夜で仲を進展させた身としてはいい思い出だ。


「月夜も木乃莉も相手がいていいなぁ」


 世良さんはそんなことを漏らす。彼女は好きな男性がいたはずだ。そもそも、月夜と同レベルに人気のある世良さんならすぐにでも男性は見つけられるだろうけど。

 でもそういうことではないんだろうな。


 猫がたくさんいる部屋に入り、各々猫を抱いて時間を忘れて楽しむ。


「猫ちゃんだぁ」

「かわいい」

「ごろごろ〜」


 幼馴染3人組が猫と戯れる姿を見て思わずほっこりしてしまう。

 3人ともかわいい女の子達だからね。恋人がいる手前でそんな発言を口にしてはいけないけど、とても良い光景だ。

 僕は持ってきていたカメラで何枚か3人の写真を撮っていく。いつかの将来の時使われるといいな。


「あ、先輩が隠し撮りしてる」

「山田先輩、月夜以外はちゃんと声かけてからにして下さい」


「悪かったよ。君達3人の仲が良いからつい……ね」

「海ちゃんも木乃莉も私の大親友ですから」


 月夜が声を上げ、仲良し3人組の話し声が大きくなる。

 ちょっと羨ましいよな。僕にはここまで仲良しな友人っているかな。星矢とだってどっちかというと淡白な関係なんだよな。


 僕が和やかな目で3人を見ていると月夜と目が合う。

 さて充分に猫で楽しんだし、アレをやりますか。

 僕はクローゼットに入っているアレを取り出した。


 5分後。


「じゃーん、猫パーカーと猫耳カチューシャです」

「お〜かわいいじゃん」

「うん、似合ってる」


 再び月夜に前に着てもらったコスプレ服を再び着てもらう。

 前は付き合う前だったから自制したが……、今回は本気で行かせてもらう。


「カワイイィィィィィ!」


「え?」


 世良さんと瓜原さんは僕の方を見るが知ったことか。

 僕は思いっきり猫月夜を抱きしめる。

 この前行った時は付き合う前だったので何もできなかった。

 しかし、今は違う。この猫を堂々と可愛がることができる。


「月夜かわいいかわいい。もう無理かわいい」

「にゃにゃにゃにゃー。照れるにゃ」


「ちょ、先輩何やってるの!?」

「猫を可愛がってる。ここは猫カフェだぞ」

「月夜は猫じゃないでしょ!」

「この部屋で1番かわいいからきっと猫に違いない」

「何言ってんのこの人」


 猫耳カチューシャ越しで猫月夜の栗色の髪を撫でてあげる。

 猫月夜の柔らかい体を密着させ堪能する。

 抱きごごちは完璧だ。


「もっとぎゅっとしてにゃー」

「ふふふ、かわいいぞぅ」

「うわぁ……」


 この触れ合いを理解できないとはまだまだ子供ということだな。

 僕は猫月夜の頭を撫でつつ後ろを向く。


「2人だって想い人にこうされたいとかないの?」

「……。私はある」

「木乃莉!?」


 承認要求の強い瓜原さんだ。それが星矢なのか天なのか分からないけどかわいいと褒めてあげて喜ぶのならやってあげるといいだろう。

 僕は猫をあやす様に月夜の顎をサワサワと触れる。


「んにゃ〜ん」

「あたしはこんなことされたらぶん殴るかもしれない」

「ふっ、君はどうやら異端者のようだね」

「あと先輩もすっげーぶん殴りたい」


「もう、他の女を見ちゃ駄目にゃ。私だけ見てにゃぁ」

「ふふ、月夜は何をしてほしいのかな」

「……。おやつが欲しいにゃ。甘い甘いキスを」

「甘えん坊の猫ちゃんだ」


 そのまま猫月夜を抱え込んでゆっくりとその唇にキスをした。

 とろけそうなそのくりくりな二重の瞳が愛しくて、長くじっくり体を寄せ合いキスをする。

 猫カフェなんて素晴らしいんだ。


「ご主人様ぁ。だいすきにゃ」

「僕もだよ……」


「ああ、私のかわいい月夜が変な方向に染まっていく。バカだ。バカップルだ」

「こうなることが分かってついてきたんだろ?」

「エロ広告みたいなこと言わないでよ」


 世良さんは思いっきりため息をついた。


「木乃莉、どうする?」

「あれはサンとムーン、サンとムーン、サンとムーン、サンとムーン」

「何、ポケ○ンでもしたいの?」

「降りた! 5話目のネタが降りた。 今の私なら書ける!」


 瓜原さんは鞄からノートを取り出した。

 多分、自作の♂と♂の小説を書き始めたんだろう。

 本来なら止めるとこだが月夜との触れ合いでそれどころじゃない。


 僕と月夜は愛し合い、瓜原さんはノートに妄想を書きなぐる。

 1人世良さんは立ち尽くした。


「猫を撫でろよ」


「にゃーん」


 大勢の猫の鳴き声も僕には猫月夜の声だけあれば十分だった。

 あっという間の猫カフェの1日だった。

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