138 恋人を家に招いてやる事は⑥

 

「まさか本当におにいに彼女が出来ていたなんて……」

「何でも隠してるからダメなんです。正直が1番です」


 月夜はメイド服を脱いで、持ってきた私服に再度着替えた。

 彗香がいなければメイド服の月夜の体をもっと堪能できたというのに……この恨みぃぃぃ。

 メイド服もナース服も片付け、3人リビングのテーブルに座る。


「よくこんな上玉ゲットできたわね。奇跡じゃないの」


 それは正しい。僕の今後の将来で月夜以上の女性と出会い、付き合うことはないだろう。


「彗香さんは兄のことを知ってるんですね」

「神凪……ああ! あなたは神凪さんの妹か。なんだ、その繋がりなのね。あの人の妹なら納得だわ」


 星矢は3,4回この家に泊まりに来ている。星矢の極上のルックスに妹も母もメロメロだ。

 妹なんか彼氏とのデートをキャンセルして帰ってくるからな。

 その星矢の妹である月夜の血筋を彗香は思うのか。


「あの彗香さん」

「あなた、私と同い年でしょ。彗香でいいわよ」

「じゃあ彗香ちゃん。私も月夜って呼んで!」

「月夜ね、分かった」


 妹と彼女が僕を置いて仲良くなってきてるんだが……これはどういうことか。


「そういうことか」

「なんだよ」


 彗香は僕の顔を見てニヤニヤする。


「おにいが最近よくカメラ見て、ニヤニヤして……アイドルでも隠し撮りしてんの? って聞いたら僕にとってのアイドルだなってキモイこと言ってさ」

「おい、彗香!」

「あれ月夜のことだよ。毎日、ずっとカメラ眺めてたもん」

「うっ、まぁそうだけど」

「ほんと……ですか」


 月夜は嬉しそうに頬を赤らめる。くそっ、かわいい。 妹さえいなければこのまま……抱きしめるのにぃぃぃ。


「こりゃおにいも惚れるわ」

「太陽さんを好きになったのは私だよ。太陽さんって顔が良くて、頭が良くて、強くて、リーダーシップが」

「誰の事言ってるの?」

「そこは同感だ」


 わけもわからず3人で談笑をしていた。

 時間はいつのまにか夕時となる。


「今日、結局月夜は泊まるの?」

「一応そのつもりで来たよ」

「どこで泊まらせる気?」


 僕は彗香と目を合わせるのを止めた。


「やる気マンマンじゃん。これだから童貞は……。じゃあ、ごはん食べてく? 帰りに食材買ってきたから何か作るわ」

「彗香ちゃん、私も手伝うよ。料理はまかせて」


 月夜と彗香は2人、そのまま台所へと行ってしまった。

 おかしい……何かがおかしいぞ。

 彗香は母から料理を習っていてそれなりに作れる。彼氏の弁当を作ってるくらいだからな。

 月夜と合作料理が食卓に上がり、美味しくいただくことになる。


 そしてお風呂は……。


「もしかしてお風呂も……」

「ぐっ!」


 彗香にゴミを見るような目で見られる。

 当初の予定ではここで初めて2人でお風呂を体験するはずだったんだ。

 月夜に頼み込んでお互いに流しっこしたりして……、

 僕は佇むことになる。


 そしてお風呂から上がってようやく月夜と一緒になれると思ったら……。


「おにいと同じ部屋とかやっちゃう決まってるじゃん。家が汚れるから嫌。月夜はこっちで寝かせる」


 そのまま妹の部屋に彼女は連れいかれてしまった。

 ……。

 ……。

 何で彼女がこの家にいて、僕の部屋にいないんだ……?

 隣の彗香の部屋から楽しい喋り声が聞こえる中は僕は涙した。


 翌日。


 仕方ない……だが今日の日曜こそは……月夜と一緒に。


「あ、月夜と買い物行くからおにいは留守番ね」

「は?」


 僕は月夜の顔を見る。


「あ、違うの太陽さん、私」

「悪いけど今日これ行かないといけないのよね」


 彗香はペラペラと何かの招待状を僕に見せた。


「有名なケーキバイキングの店の割引券。本当は友達と行く予定だったけど、行けなくなったから月夜と行ってくるわ」

「え? おい?」

「悪いけど女2人用なのよね」


 昨日の夜でますます月夜と彗香は仲良くなったらしい。

 それはいいこと、いいことなんだが!

 月夜はケーキバイキングにまるで涎を垂らすかのように割引券を見ている。


 神凪月夜は三大要求に誠実だ。ねぼすけに性欲魔人、そして大食漢。

 目の前のエサに釣られてもおかしくはなかった。


「いいよ、行ってきな」


 これまでずっと月夜に我慢を強いてきた僕は行かせるしかなかった。

 強引にでも僕の側にいろって連れていってもいいんだけど、あんな顔をした月夜にそんなこと言えないよ!

 非常に申し訳なさそうな月夜の髪を撫でて、精一杯の笑顔をする。


「月夜は私がエスコートするからおにいはカメラの月夜で楽しんでおけば」


 そのまま彗香と月夜は外へ出かけていってしまったのだ。

 なるほど……ようやく意味が分かったよ。

 なぜ、月夜があんなに僕と星矢の仲を疑うのか……。

 ようやくわかった。


「僕は妹に彼女を寝取られたってことんだろうね……」


 僕はリビングのソファにダイビングする。


「うがあああああああ! なんなんだくそおおおおおおお! あのクソ妹ぉぉぉ! 絶対許さねぇぇぇ!」


 せっかくの土日が完全に潰れてしまったのであった。

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