137 恋人を家に招いてやる事は⑤

「ん? リビング何これ……。うわっ、ナース服じゃん。おにい何考えてんの」


 やべぇ見られた。

 彗香すいかは1つ下の僕の妹だ。

 今日友達の家に泊まるからずっと言ってたじゃないか。忘れ物を取りにきたのか……それとも。

 この状況を見られたら絶対めんどくさい。普通の恰好なら何とでもなるが彼女にメイド服着させてる時点でちょっとプレイとしてよくない。


 どうする、どうする。彗香がリビングからいなくなったら出て行って話をするか。


 するか……なんだけど……カーテンの奥で見えないように屈ませた月夜なんだけど……さっきから……その。


「月夜さん、この状況で僕の股間をいじくりまくるのやめてくれないか」

「あぁん……胸揉まれて……火照って……そういうプレイじゃないんですかぁ」

「君、やっぱり性欲魔人だろ」

「何てこと言うんですか!?」


 あ、もとに戻った。

 彗香がリビングを出たと同時に僕はカーテンから離れる。

 月夜には隠れておくように指示をしておく。


「彗香!」

「いたんだ」


 洗面所にいた彗香に声をかける。

 振り向いた我が妹、呆れたような顔で言葉を返す。


「おまえ、友達んとこで泊まるって言ってたじゃないか」

「その予定だったんけど、彼氏が風邪引いたとかで看病したいからって帰された」

「そ、そうか」

「それよりさぁおにぃ、あのリビングのナース服なんなの。だいぶキモイんだけど」


 やはり言われたか。

 僕と妹の関係は決して良好とはいえない。口を開けばキモいなどなんの。反抗期なんだろうけど、父と僕に対してだけ異常に冷たい。

 クソ生意気で正直可愛げはまったくない。星矢と月夜の兄妹の仲が羨ましいくらいだ。


「おまえには関係ないだろ」

「これも?」


 カーディガンにミニスカートってこれ月夜さんのおおおおおお!

 あいつ洗面所で着替えたのか!? まぁそれが普通なんだけどこのタイミングでそれはよくない。


「地味だけど、私のでも母さんのでもないよね。ってかこのブラジャー、F65って理想体型の女でも探してんの?」


 そうだ、月夜は今、ブラジャーをつけていなかった。

 あんまり聞いてはいけない数値を聞いたかもしれない。

 まて、この流れ……。


「おにぃ、女装趣味でも始めたの? マジでキモイんだけど」


 そうなっちゃうよねぇ。でもその服はどうあがいても僕では着れない。そのあたりの想像のできない妹に苦言を述べたいが何を言っても、文句で返してくるからな。

 女装趣味ですませて、2階に行かせて……月夜を家に帰そう。


「あー、そうだよ悪いか」

「ほんとマジでやめてほしいんだけど。私の服とか絶対に触らないでよ」

「サイズが合わねぇよ。それより片づけるから2階行ってろ」

「最低。何で私の兄はこうなの。休みに彼女もできずに女装趣味って。ほんと恥ずかしい」


 イライラするなこのクソ妹。僕だって、おまえと喋ってても仕方ないんだよ。

 さっさと向こういってろ。


「あ~あ、あの神凪さんみたいな人が兄だったなぁ。イケメンで優しくて、ほんとおにいと大違い」

「そうですか? 私は兄より太陽さんの方が素敵なお兄さんだと思いますよ」


 リビングの扉が開き、外へ出てきたのはメイド服を着た超絶美少女。

 何となくこんな展開を予想していた。彗香は口をバカみたいにあんぐり開けている。


「め、メイド?」

「太陽さんに女装趣味はありませんよ。彼女に着せる趣味はありますけど、洗面所の服も私の服なので悪しからず」

「はぁ!? 彼女?」


 あぁ……説明がめんどくさい。

 だが彗香は鼻で笑った。


「おにいに彼女なんてできるわけないじゃん。何、お金で雇ったの?」


 ま、月夜の顔を見て僕が付き合えるとは思わないよな。

 それは悪手だぞ、彗香。月夜は優しくて…‥御淑やかで……あの性格の悪い星矢の妹なんだよ。


「ん~信じてもらえないならどうすればいいのでしょう」

「わけわかんないし、いいからこの家から」

「キスでもしましょうか」


 月夜は僕の肩を掴んで引き寄せてくる。思った以上の力に前へ屈んでしまった。


「口を開けてください」

「へ? うごっ!」


 月夜から口で口を塞がれる。今までずっと行ってきた唇同士の接触ではなく、確実な口の接触だ。

 月夜の舌が僕の舌に絡みつき、僕の歯茎などがまんべんなく嘗められて……押し付けるように最後はもう一度舌をからめとられた。

 俗にいうディープというやつであった。

 月夜は口を離して、口元に垂れた唾液を嘗めり取り、してやったりな顔をする。僕は思わぬ衝撃に腰が砕ける。


「あ……あわわわわ」


 さすがの彗香も顔を紅くして手を口に当てていた。

 目の前でこんなディープなことをされると思っていなったのだろう。僕もそうだし。


「これで信用して頂けましたか。初めまして彗香さん。私は神凪月夜、太陽さんの恋人です」

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