134 恋人を家に招いてやる事は②

 僕と月夜はテレビのスイッチを入れて映画を見ていた。

 少し前に月夜が見たい映画があると言っていて、父がBDを持っていたこともあり、お昼までの2時間をそれを見てのんびりと過ごしている。

 ソファに僕が寝転び、まくらは当然……月夜のふかふかのふとももだ。ときどき寝返りを打って直にふとももに触れ、逆の方に寝返って…‥腹部の方まで顔を寄せる。

 もし、この場にグループメンバーがいたらどん引きされてしまうんだろう。

 いいんだ、2人きりなんだから。


「もう……鼻息がくすぐったいです」

「もめん、えもまめみゃめみゃい」

「こっち見て言ってください」


 ふとももで受けてくれていることもあり、月夜はミニスカートを手前にはだけている。何とかしてその奥にあるものを覗こうと抗う。

 夜にはばっちり見れるんだろうけど、スカートの中を覗くというフェチシズムを抑えることなどできない。

 くそっみえない。

 月夜は優しく頭を撫でてくれる。ああ、本当に良い休日だ。何で僕は……さっさと交際を申し込まなかったんだろう。過去に戻れるならぶん殴りたい。


「後で私を膝枕してくださいね」

「いいね。いっぱい月夜の髪を撫でてあげるよ」


 わりと映画そっちのけでいちゃついているような気もする。


 さてとお昼の時間だ。

 いつもであれば月夜に作ってもらうというのがセオリーだ。実際に晩御飯は後で2人で買い物へ行って食材を買う予定である。

 どうしようかな。


「家にある食材を勝手に使うか?」

「太陽さんのお母さんが買った食材を勝手に使うのも……そうだ、太陽さんって料理はできるんですか?」

「簡単な物ならね。チャーハンとかは自信あるよ。たまに家族の分を作る時あるし」

「へぇ~、太陽さんの料理食べてみたい!」


 せっかくだし、振る舞ってみるか。ご飯はあるし、卵や他の食材もある。

 月夜ほどの料理センスはないけど、彼氏としてできるってとこくらいはアピールしておくかな。


 ひよこのイラストが描かれた青のエプロンを身に着ける。

 料理するときはいつもこれ着るんだよね。料理はほとんどしないけど、チャーハンを作る時はどうしても着てしまう。


 ……。


 さっきからシャッター音がうるさい。

 振り向くと僕のカメラを使って月夜が撮りまくっていた。


「太陽さんのエプロン姿……素敵ぃぃ。料理男子、墓まで残したい……」


 彼氏に影響される彼女がいるっていうのは聞いたことあるけど……月夜はそのまさかなのかもしれない。


 よく熱したフライパンに油を入れて十分に温める。

 昔、父さんに教えてもらったんだよな。父さんはじいちゃんに教えてもらったって言ってたっけ。

 僕も自分の息子に教えたいなぁ。


「何を考えてるんですか?」

「このチャーハンは一子相伝なんだよ。だから次の世代にもってね」

「ふふ、なら私に任せてください」


 何を任せるんだろうか。


「料理男子の後ろ姿……まじで尊いです。惚れ直しました~」

「月夜さん危ないからそんなに強く抱きしめないで」


 月夜が後ろからずっと僕を抱きしめてくる。背中に胸の感触が当たるのは実に素晴らしいがこっちも本気でチャーハン作ってるので失敗するわけにいかない。

 くぐもった声で僕の脳髄刺激するし、たまに胸板触ってくるし、こっちも胸揉むぞこら。


「よし、できたぞ~」

「わ~」


 さっとお皿に並べて、熱々のチャーハンを入れていく。いい感じの卵チャーハンだ。味付けは濃いけど、うまいぞ~。

 フライパンをコンロの上に戻して、エプロンを外そうとすると月夜が前から飛び込んできた。

 思わず抱き上げる。


「まだ前から抱きついてません!」

「おいおい、チャーハンが冷めちゃうだろ」

「……じゃあ1回だけ」


 食事の前に1回のキス……甘えん坊だよなぁ。それが素敵だけどね。

 何をするたびにもキスをしているような気がする。これからもきっと……こんな感じで僕達は恋人生活を続けていくんだろう。



 ◇◇◇




「おいしい!」

「喜んでくれて嬉しいよ」


 我ながら今日のチャーハンはうまく作れた気がする。

 愛情を込めた……月夜においしいって言ってもらいたくて作ったからかもしれないね。

 僕も月夜もそこそこ食べるため、3人前ほど作ったが月夜がすごい勢いで食べていく。


「あとでレシピ教えてください! あ、でも一子相伝の技か」

「いや、そんな大した家系じゃないから」


 わいわいと話しながらお昼の時間はあっという間に過ぎていく。


「でもこんなに喜んでくれるなら僕も料理作れるようになろうかな」

「たまにならいいですけど、基本、私が作るんですからね!」


 料理できるに越したことはないと思うんだけど、月夜は頑なにそこは譲らなかった。

 何か強い意思があるのだろうか。


「月夜の料理は上手で美味しいからね。でも毎日は大変だろう?」


 月夜は首を横に振った。


「大好きな人に美味しいって言ってもらえることがとても嬉しいんですよ。だから私はいつまでも……あなたに食べてもらいたいです」

「月夜」

「はい?」

「キスしよう」

「はぁい!」

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