132 月夜と遊園地⑤

「むー」

「まだ怒ってる?」


 さきほどの占いの館でのやりとりで月夜は機嫌を損ねてしまった。

 ちょっと調子に乗ってからかいすぎてしまったかもしれない。


「いいです。どうせ私はえっちな子ですから」


 せっかくの楽しいデートである。機嫌の悪いままというのはよくない。

 まわりに人がいないことを確認し、月夜の腕を強引に引っ張る。


「え? むぐっ!」


 そのまま強引に強く抱きしめる。

 月夜の後頭部を片手で押さえて、かなり強めのキスをする。


「はぅ……はぅ」


 女の力では抵抗できないほど強く、強引に唇を擦り付けた。

 だけど月夜は抵抗しない。そのまま身を委ねて受け続けた。

 満足するまでキスした後、ようやく解放させる。月夜は完全に力が抜けきり、手足が砕け、目をトロンとさせた。


「ちょっと強すぎたかも……ごめん」

「ふぁい……」


 神凪月夜はドM気質がある。

 この1週間付き合って分かったことだが意外に強引なプレイを好むことが分かった。

 いろいろあって機嫌が悪くなる時にこれをしてあげるとすごく喜んでくれる。

 最初は僕も抵抗があったが慣れてしまうと……意外に楽しい。

 月夜を抱き寄せ、頭を撫でてあげると……次第に復活していく。


「いっつもこうやって……無理やりするんですから」

「あ、自覚はあるんだ?」

「太陽さんって絶対私のことチョロいと思ってるもん!」


 それは正直思ってる。

 でも、お互いに惚れた弱みだと思うよ。


 機嫌のよくなった月夜と一緒にショップで買い物をしたり、写真を一緒に撮ったり、30分に1回、キスをしたり…‥時間を忘れて楽しんだ。

 そうして夕日が出てくる頃に……僕と月夜は観覧車の前へと行く。


「この地区最大の観覧車。おおよそ15分らしいね」

「遠くからよく見えますもんね。夕日とか綺麗だろうな。乗りましょう!」


 少しだけ並んで……ちょうど夕日がよく見えるタイミングで僕と月夜は観覧車に乗ることができた。

 がたんごとんと音を立て、ゆっくりと空へ向かって上がっていく。全長100mを超えるらしい。相当に高いだろうな。


 月夜と僕は隣同士に座る。恋人前であれば対面だっただろうなぁ。

 月夜は手すりから景色を見て、高い声を上げる。


「すっごい、景色! 見て下さい」

「おお! 街が一望できるな」


 郊外にあるこの遊園地はやや標高の高い所にあるため遠くまでよく見ることができる。

 月夜は観覧車の中移動し、外の景色を見ては……僕を呼ぶ。観覧車は頂点に達し、これから下降へと進む。

 振り向く月夜の姿と夕日が重なると……長い栗色の髪が輝いて見えた。


「綺麗だな」

「そうですね、こんなに綺麗な街」

「違うよ、綺麗なのは月夜の方だよ」


 僕は月夜の腕をひっぱり、抱きしめた。


「もう……。その言葉はクサくないですか?」

「でも嬉しいんでしょ? 赤くなってるよ」

「―――――はい」


 頬を赤らめた月夜がとても愛おしくて、抱きしめる手が強くなった。

 ちょっと趣向を変えて、月夜のオデコと自分のオデコをくっつけて顎を引く、月夜も同じようにして目線を上げて……2人で笑い合う。


「太陽さんって付き合ってからの方が積極的ですよね。もっと早く積極的になってほしかったです」

「うっ、付き合ってもないのに積極的に行くわけにはいかないじゃないか。そこは勘弁してほしいな」

「仕方ないですね。チューしてくれたら許してあげます」

「結局それかよ」


 許しを乞うように僕は月夜の唇にキスをした。今日何回目だろう。まぁ月夜が覚えているから気にすることはないか。

 観覧車が地上へ降り立つまで、僕達は何度もキスをする。

 何だろうか……この狭い空間で……誰にも邪魔されず接触し合うからだろうか、無性に気分が上がるというか。

 さきほどまでの感情とは別の何かが僕の心の中を支配する。もっと触れ合いたい……その想いが加速する。


「もっと……」


 唇を放して、月夜はゆったりとしたトーンで言葉を紡ぐ。

 月夜は僕の右腕を自分の胸に押し付ける。久しく感じたことのない手の感触、僕は手に力を込めて月夜に再びキスをした。


「う……うぅん」


 何度も何度も手を動かし、その手に収まりきらないサイズを動かし、月夜の体へ刺激を与え続ける。

 そして唇の動きを止めることができない。月夜の艶のある声に僕は性衝動が抑えられず……僕はこのままさらに先へ。


 ビビビィィィィーーーーーーーーーー


「は~い、お疲れ様でしたぁ」


「んがっ!」「んごっ!?」




 ◇◇◇



 僕と月夜は観覧車から離れてゆっくりと歩く。


「盛ったな……」

「ええ、盛りましたね」


 僕は顔が相当に熱いし、月夜はもう真っ赤だ。互いに……トマトのような顔になっているだろう。

 完全に2人の世界に入っていた。

 あのまま、観覧車がもう1周ってなってたらどうなっていたのやら。

 それにしても……。


「月夜も大胆なことしたね」

「ち、ち、ち、違うんです。その何て言うか……体が、心が勝手に!」


 自分から胸を揉まそうとするとは……そのまま揉みまくった僕がいけないんだけど……我慢できなかったし、する気もなかった。


「やっぱり恋人ってすごいですね……。もう止まらない」

「一週間でこれは行き過ぎな気もするけど……否定はできない」


 理性のブレーキが効かなくなるんだな。

 お互いに初恋人だからこそなのかもしれない。

 交際ってこういうものなのかな。誰に聞けばいいんだ。そういえば知り合いで交際している人がいないぞ。実妹に聞くか?

 さすがにそれはちょっと。


「ま、まぁゆっくりと進んでいこう。これから先は長いんだし」

「そうですね。ふふ、でも観覧車楽しかったです」


 くるりとまわる月夜。日は完全に落ちてしまったが外灯で照らされる月夜の姿もまた美しい。

 うまく撮れないかもしれないけど、僕はカメラを取り出して、月夜をファインダーに収めてシャッターを切った。


「今日はあんまり撮ってなかったですよね」

「今、思うと……付き合う前ずっと君を撮っていたのは月夜に触れたくても、触れられない憤りを解消するためだったのかもしれないね」

「なら、もう大丈夫ですね。私は太陽さんの彼女ですから……いくらでも触れて下さい」


 まったく、優しくて、綺麗で、愛しい彼女だよほんと。

 それでも写真撮影自体は趣味だし、これからも撮り続けるけどね。

 それより、もういい時間だな。電車に乗って地元に戻ったらもう19時か。


「晩御飯どうしようか、何か食べたいものある?」

「夜景の見えるホテルの最上階でディナーが食べたいです」

「せめてそれは大学生になってバイトしまくってからだね……」

「ふふふ、ですよね。じゃあ、あそこのラーメン屋にいきましょう! ニンニクラーメン大盛り、食べたいです」


 好きだねぇ。

 でも気温も下がって来たしちょうどいいかもしれない。

 僕は月夜の手を握って、帰路につくのだ。いつまでもこの手を放さないように……ずっと過ごしていきたい。


「あ、ニンニクラーメン食べたらキスできなくなりますね。太陽さん残り21回のキスを今、ここで!」

「もういいよ!?」

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