131 月夜と遊園地④

 僕達と月夜は恋人繋ぎで仲睦まじく話をしながら、次のアトラクション。占いの館へ向かった。


「月夜は何を占ってもらいたい?」

「そりゃ恋愛相談ですよ。もっとも~とイチャイチャしたいです」


 付き合った次の日の登校時に彼氏なんだから月夜を起こしてこいと言われて、月夜の部屋にいったら……、寝ぼけた月夜に襲われてそのまま濃厚なキスプレイに突入して全員からぶん殴られた記憶がある。

 あのシーンは三者三様だったな。星矢は呆れ、瓜原さんがメモを取り、水里さんと世良さんが真っ赤になってた。意外にお騒がせ組ってウブなんだな。


 それからも月夜が登校時に人目憚らずキスするようになり、登校時はキス禁止がついに発令した。

 あの時の絶望で露骨に落ち込む月夜の顔が今でも思い出せる。

 星矢は見なかったフリしてるが、水里さんは過剰なイチャつきが苦手のようで結構しっかり怒ってくる。もし星矢と付き合ったら意外に淡泊な関係になるのかもしれないね。


「ようこそ、占いの館へ」


 一番人気の占い師さんに当たる確率はかなり低かったのだが……まさかのビンゴ。

 雑誌にも取り上げられるくらいの人のようだ。


 占いの館はおしゃれな作りとなっており、人気アトラクションの1つである。

 順番に呼ばれて、5人くらいいる占い師の中の1人に占ってもらえる。


 占い師は30代くらいの人のようだ。占いだけあって……魔法の服みたいな着衣をしている。

 まるでおとぎ話のようだなぁ。

 テーブルの上に水晶玉。ここまで、ザ・占いとなると逆に信用性が微妙な気もする。

 まぁ当たるかどうかは気の持ちようかな。

 僕と月夜は2つある丸椅子へ座る。


「何を占いますか」

「もちろん、恋愛相談でお願いします」


 占い師さんはスカーフで口元を隠しており、表情が伺えない。

 でも優しい目をしている。


「お二人は恋人同士ですか?」

「あ、はい」

「ラブラブです!」


 占い師さんは小さく笑い水晶玉を見た。


「お二人は少し変わった恋愛経験をしていたようですね」

「分かるんですか!?」


 月夜はびっくりしたように言葉を強める。

 言い方の問題な気がする。どんな恋愛も少し変わってると思うし。


「そうですね。男の子の方が5か月前に告白しておけばとっとと付き合えたくらいには」

「分かりすぎでしょ! 過去見てきたの!?」


 まさかピンポイント爆撃をしてくるとは思わなかった。

 正直、科学館へ初めて月夜とデートした後くらいに僕が告白していればとっくに付き合うことができたのは事実だ。

 ま……今ほど愛が深くなることはなかったのかもしれない。キス50回とか言われることはなかっただろう。


「お二人の恋愛の相性、将来、もし結婚したらどうなるか……ぐらいでどうでしょう」

「それでお願いします」

「け、結婚?」

「私、今日プロポーズされたら受ける気ありますよ」

「重いよ!」


 占い師さんは水晶玉に手をあて……目を瞑り、何かつぶやき始めた。

 本格的な占いだな。本当に期待できるんじゃないかこれ。


「相性はそうですね」


 占い師さんは優しげな目でつぶやく。


「最高……と出ていますね。まるで神があなた方をめぐり合わせたかのようです。運命の相手と言ってもいいでしょう」

「太陽さん、私達の相性は最高だって、やった!」


 月夜に手を掴まれ、そのまま月夜の頬へ当てられる。ほっぺ、柔らかい!

 月夜は嬉しそうに頬を緩めて僕の手のひらをスリスリしている。よほど相性が最高って言葉が嬉しかったみたいだ。

 僕は言葉より月夜に直の愛情を受けることの方が嬉しい。


「おほん、交際も恐らく順調にいくでしょう」

「本当ですか。私と同じ顔をした男に寝取られるとかないですよね」

「ねぇよ」


 キリっとした顔になり占い師にわけわからん言葉を送る月夜に感情なく言葉を投げてやる。

 占い師さんもあえて答えを言わなかった。


「ただ……もしあなた達が結婚した時苦難が待ち受けるでしょう」

「「苦難!」」


 交際は問題ないのに、結婚生活は駄目だというのか。何だろう。同棲とかしたらってことかな。

 でも星矢の家に結構泊まりにいってるからわりと半……いや1/4同棲くらいしてると思うけど。


「彼の方は問題ないでしょう。誠実で、真面目、結構相手として申し分ない相手と言えます」

「ですよね! ふふーん、私だけが太陽さんの魅力を見抜いたんですから」


 男、見る目ないって結構言われるよな月夜って。

 ちゃんと就職して金稼げるようになれば普通くらいになるんだろうか。


「問題は……彼女の方ですね」

「私ですか!? 私は浮気なんて絶対しないし、旦那一筋です。ねっあなた!」


 もう結婚した気になってる……。


「その……あなたはおいくつですか?」

「先月16歳になったばかりです」

「ちょっと言いづらいのですけど」

「構いません。太陽さんと甘い結婚生活を経て、緩やかな老後を迎えるために憂いは断っておきたいです」

「月夜の人生設計、進みすぎじゃない?」


 占い師さんは頷き、再び水晶玉に力を込めた。

 月夜は心配そうに手を胸にあてている。僕は月夜の栗色の髪を撫でてあげた。心配することなないさ。


「太陽さん…‥」


 月夜は感激して、目を瞑り、口をつぐむ。こちらに近づいてきたので月夜の両肩を手で持って押さえ込む。


「キスは後にしなさい」

「むー」


「念のためもう1度占いましたが結果は一緒でした。彼女さんの問題の結果は……」


 僕と月夜は占い師の方を向く。


「彼女さんの性欲が強すぎることが問題ですね」

「ブホッ!」「ブフッ!」


 僕と月夜は吹き出した。


「未来が見えました。仕事帰りの旦那様がため息をついて帰っています。仕事で疲れ、家に帰ったら奥さんに求められ……」

「月夜……」

「違うもん! 私、えっちな子じゃないもん!」

「あなた、私が1000人以上女性を占ったけどトップクラスの性欲の強さよ」


 占い師さん、びっくりして営業トークじゃなくなってるよ。

 月夜は真っ赤な顔をして占い師にも僕にも否定している。

 でもあのキス魔が始まりだとすると……意外に間違いではないのかもしれない。

 占い師は手招きして月夜を呼び寄せる。僕に聞こえないように女同士で話をする


「は!? 1日そんなにやってるの? バカになるわよ」

「バカじゃないもん!」


 聞こえてるから……。多分つっこんではいけないことなんだろう。


「結婚生活って性も離婚原因になるから気をつけてね。私も若かったわ」

「占いじゃなくてただの人生相談になってんじゃねーか」

「あ、彼氏くんも今のうちに鍛えておかないと精も魂も尽きるわよ。文字通り」

「余計なお世話だよ!」


 ◇◇◇


「絶対あの人ペテン師です!」

「まっあくまで占いだからね……あくまで」


 月夜は真っ赤な顔をし、何度も何度も僕にさきほどのことを否定する。

 別にどっちでもいいんだけど、月夜的には重要らしい。


「太陽さんは私のこと信じてますよね!? えっちな子じゃないって」


 僕は月夜の髪を撫でてあげた。


「大丈夫だよ」

「太陽さん……」

「帰ったら一緒にジムで鍛えようか」

「絶対信じてないでしょ!?」

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