120 あの夏の思い出③

「っ!」


 また雨が降ってきた。

 夜中? いや、日が少し見える。恐らく5時ぐらいだろう。朝までもたなかったか。

 っ! 傷が痛い。やっぱ洗った程度じゃダメだよな。空が黒い雲に覆われている。また大雨かもしれない。


「妹ちゃん、起きろ」

「……ふえ?」


 この女の子はねぼすけだったな。だが、砂浜だったらほとんど熟睡できないはずだ。

 すぐさましゃっきりさせ、雨の中、僕達は森の中に入る。

 目指すは昨日の夜に見えた洞穴。雨から逃れられるかもしれない。


「あった! あそこの中に入ろう」


 洞穴は思ったより広かった。トンネルのようになっているのだろうか。

 いや、今の状況で探索している余裕もない。明かりがないから先に進めないしね。

 雨がかからない場所で僕と妹ちゃんは腰を降ろした。


「しばらくここで休もう。雨が上がればきっと救助も来る」

「……」

「妹ちゃん?」


 そこで気づいた。妹ちゃんは気だるそうに息が上がっている。

 顔もどこか赤い。この状態って。


「熱があるのか?」

「あはは……体調がちょっと悪かったみたいです」


 そういえばこの島に来た時から不自然にくしゃみをしていた気がする。

 妹ちゃんに断りを入れて、額に手を寄せる。熱いな……。かなりの熱じゃないか。


「大丈夫ですよ……」


 大丈夫じゃないだろう。どうする? いや、どちらにしろ雨が上がらないと動けない。

 妹ちゃんだってこの状態でここまで歩けたのが奇跡だ。これ以上連れまわすことはできない。せめて晴れた状態だったら。


 考えこんでいたら時間だけが過ぎていく。


「はぁ……寒い」


 僕は上着を脱いで、妹ちゃんに被せた。もう乾いているから少しは暖かくなるはずだ。

 駄目だ、このままじゃまずい。せめて何か栄養のあるものを……あと水だ。手持ちも量が少ない。熱があるときは可能な限り水を飲ませてあげたい。

 砂浜に流れついていた比較的綺麗なペットボトルは確保している。そうだ洞穴……もしかしてと思い、先に進むと量は少ないが湧き水があった。

 運がいいけど……こりゃ1人分にも満たすまで相当時間がかかるな。ペットボトルを固定して、水滴を貯めていく。これで足しになるだろうか。


「ここでじっとしているんだ」


 ヤマモモの群生地は覚えている。まだあったはずだ。

 洞窟を抜けて、森林地帯の中へ入っていく。


「雨が強くなってきたな」


 大雨で登りにくいが力を込めて、木を登り果物を採取していく。数は少ないが……仕方ない。

 あっ!


「しまっ」


 雨で滑ってしまい、樹から落ちてしまった。

 体に激痛が走る。足を打ってしまった。


「があああっ、くっぅぅ!」


 痛みで思わず声が出る。失敗してしまった。

 ……打撲かな……足が青くなってる……。歩ける、大丈夫だ。

 足を引きずるようにして僕は洞穴に戻った。


 ある程度水が溜まったことを確認し、妹ちゃんに近づく。


「水とヤマモモだ。食べられる?」

「太陽さんは……?」

「僕はもう食べた。さぁ」

「はい……」


 かなり弱っている。こんな状況なら仕方ない。

 水を飲ませて、果物を食べさせた。これで少しは体がよくなればいいけど……。

 雨が止んだら、すぐに出ていこう。星矢達と合流して妹ちゃんを病院に連れていかないと……。


「はぁ……はぁ……」


 苦しそうだ。また熱が上がったんじゃないか。雨水で冷やした布を額に当てたりしたが、効果があるのかよく分からない。


「お兄ちゃん……恐いよ……」

「っ!」


 僕は妹ちゃんの手を握る。星矢の変わりに……僕はなれるか。


「月夜、ぼ、…‥俺が側にいる。負けるな!」


 月の光で輝いたこの子の笑顔を……曇らせたりしたくない。

 この子は学校の中でもずっと輝いている。星矢と一緒で今後もきっと光輝く道を歩いていくのだろう。

 僕はその道の先を見たい。この子の笑顔が将来どのような形になるのか側で見たいんだ。


 絶対助けてやる!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます