109 月夜の誕生日④

 

「つ、月夜!? な、何で……あ、ここ女子風呂!? ごめん、すぐ出る!!」

「待ってください!」


 星矢が体を洗ってると思って気安く声をかけたら……月夜であった。

 僕はとんでもないことをしてしまったと勘違いし、すぐ出ようと思ったが月夜に呼び止められる。


「間違ってませんよ。ここはB風呂です」

「じゃ……な、何で」

「そ、その……一緒にお風呂入りたかったから」


 月夜は頬を紅くさせ、言いづらそうに言葉を並べた。

 その整った顔立ちから来る、劣情を誘う言葉に僕の心臓は鷲掴みされたような感じがした。


「体を洗うので……露天風呂で待っていてくれませんか」

「は、はい!」


 声が上ずった。すぐさま、浴槽のある方に戻り、急いで外に出て露天風呂に入った。

 あっつ!!

 今、体が火照ってる状態だった。少し外に出て冷まそう……。

 冬空の風にさらされていると頭も冷えてきた。何となく分かってきたぞ。

 これ……星矢だけじゃなくて多分僕もはめられたんだ。A風呂に星矢、B風呂に僕。星矢が何も言わずについてきたのがおかしいと思ったんだ。

 多分……弓崎さんや瓜原さんに部屋で言われたのかもしれない。

 何で気づかなかったんだ。


「……隣いいですか?」

「う、うん」


 タオルを巻いたまま月夜がこちらにやってきた。ヘアゴムで髪をまとめており、開いた扉からひょこりと顔を出して聞く様は微笑ましい。

 まだ日は沈んでいないので月夜の白い肌が良く見える。夏の時に水着姿を見ているが……風呂はまた少し違ってくる。

 露天風呂に2人横並びで入り、空を見上げる。


「びっくりしたよ……」

「驚かせちゃったみたいですね」


 女風呂に間違えて入ったならもう……人生終わりだからね。

 ちらっと隣の月夜の姿を見る。バスタオルを体に巻いているから大事な所はちゃんと隠れているが、柔らかそうなふとももや成長著しい胸部の谷間の線は隠せておらず、

 顎から落ちる水滴が胸の曲線を伝って地に落ちるところを見て僕は……喉を鳴らしてしまう。

 落ち着け……落ち着け。

 見上げたら月夜と目が合ってしまい、思わず視線を外してしまう。


「どこ見てるんですか」


 全身だよ。どこ見たって魅力的過ぎるんだから仕方ないじゃないか。


「でも、想像以上に恥ずかしいですね……。A風呂の方でも同じことしてるんですけど」

「向こうは複数人だからね」

「水着は着てますので……タオルは外しても問題ないのですけど」


 あ、やっぱり水着着ているのか。そりゃ貸し切り風呂だから仕方ないよね。

 でも男陣は何も着てないんだが……。

 月夜と会話がうまく進まない気がする。月夜も顔を真っ赤にさせており、挙動がちょっとおかしい。自分で誘っておきながら僕より恥ずかしがってるのが月夜らしいよね。

 僕はさっき体を冷やしたのがちょうどよかったのかもしれない。


「今日のスノボは楽しめた?」

「え、はい、すごく楽しかったです。風を切るというか……あのスピードを体感できるのがいいですよね」

「今度は高い山から一気に降りようよ。本当に楽しいから」

「ふふ、それに太陽さんにいっぱい抱き着いちゃいましたからね」


 転ぶたびに月夜を立ち上がらせて、そのまま抱き着かれていた気がする。


「真正面から来るのにはびっくりしたけどね」

「ふふ、こんな感じですか?」


 月夜は腰を上げて、僕に覆うように立ち上がる。風呂から上がったことにより僕の視線は白いふとももへ行き、そのままほどよく盛り上がった胸部へ目線がいく。

 このまま抱き着くつもりか!? そ、それはさすがにまずい。僕は慌てて、声を出す。


「そ、その恰好で抱き着くのはまずいよ……」

「え?」


 月夜は目線を下げて、自分の恰好を思い出し……顔から火が出るように真っ赤になり、風呂の中へ沈んだ。

 そして顔を隠すように手で覆う。

 月夜って意外に考えなしで行動すること多いよね。恥ずかしがり屋のくせに。


「あまり無防備なことしちゃダメだよ。僕だって……男なんだから」

「……私、太陽さんのこと信じてますから」


 信じてくれるのは嬉しいけど……それはある意味生殺しなんだよなぁ。

 もしあのまま抱き着かれたら少なくとも……我慢できずに月夜の体のいろんな所をまさぐっていたかもしれない。僕だって我慢の限度があるんだよ。


 再び静寂になる。この露天風呂結構温度が高いんだよな。ずっと入ってるとのぼせてしまいそうだ。


「月夜、そろそろ上がらないか」

「……」


 反応がない。

 寝ている? いや、この状況で寝るような子じゃない。

 もしかして、僕は俯いている月夜を起こして顔を見た。


「ふきゅ……」

「のぼせてる……」


 そりゃあんなに赤くなってたらなぁ。我慢せず、外に出ればいいのに。

 仕方ない。外に出すか。待てよ……この場にいるのは僕だけ。僕が月夜を外に出すというのか。

 落ち着こう。変な所に触れないようにすれば変態の烙印は押されないはず。それに月夜は水着を着ているんだし、タオルがはだけても問題はない。

 月夜を持ち上げようと少し、体を押すとぱらりとタオルが外れる。背中の方で結んでいたようだ。それがはだけるということは背中が完全に丸見えになる。

 まぁ……水着を着ているから完全に背中が見えるわけじゃ……。


「水着着てねぇじゃねぇか!!」


 背中真っ白だよ! 熱で少し赤くなってるけど、どう見たって肌色だよ! お尻の割れ目が少し見えちゃってるよ! 

 ってことは……前のタオルを取ってしまったら月夜は……。


「すっぽんぽん……?」


これだいぶやばくない? 僕はこの危機を乗り越えることができるのだろうか。

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