102 恋愛相談ver2③

 月夜は到着したパフェを食べてご満悦である。僕と水里さんは苦笑いをしながら……何とか月夜のご機嫌を取り、その先の話をする。


「それで……2人はどこへ行ったの?」

「まず映画だね。えっと見たのは」

「アニマル映画です!」

「無難に恋愛映画でいいと思うよ」

「そうね。調べておく」

「あれぇ?」


 正直、もうちょっと色気があった方がいいよね。初デートで映画なら特に。

 割引券とかあればいいけど……、星矢は寝てしまうかもしれないな。 


「映画が終わったら時間的にお昼かしら」

「あの時は確かハンバーガーショップに行ったよね」

「懐かしいですね。食べかけを一口もらったんだんでしたっけ」


 それは別の機会だったと思うけど……水里さん的には気になるようだ。


「間接キス程度……。でも男の子と女の子だとちょっと違うよね」

「ま、まぁ意識はしちゃうね」


 月夜にコーヒーフロートやポテトパイをかじられた時のことを思い出す。

 月夜も思い出したようで照れた様子で下を向き、カフェオレをストローで飲んでいた。


「水里さんは星矢の食べかけを食べられる?」

「う、うーん、さすがに緊張するかも。逆に星矢くんはどうだろう……」


 3人……その光景を思い浮かべる。


「お兄ちゃんが食べかけを気にするとは思えないんですが」

「あいつ落ちたパンでも普通に食うからな」

「お、サンキューって言ってそのまま食べそうだよね」


 星矢への食べかけ作戦は意味がないので止める形となった。


「そもそも、今日帰ってお弁当作るんだから関係ないですよ」


 月夜はぐっと拳を振り上げた。なるほど、この感じだと2人で弁当を作って星矢に食べさせるということか。

 下手に店へ行くより、料理上手な水里さんや月夜の手作り弁当の方が値打ちがあるよね。

 この後もモール街へ遊びにいったこと、ひーちゃんのライブを見たこと……図書館に行き、最後に自然公園へ行ったことを話す。


「最後はロマンチックに公園でデートですよ」

「月夜ちゃんはその時、太陽くんに何て言われたの」

「写真撮らせてくれって」

「うわぁ」

「引かないで! 自分でもちょっと気にしているんだから!」


 でもあの機会があってから月夜の写真が爆発的に増えたし、言ってよかったと思ってる。

 マジックアワーの時間帯。夕日をバックに撮った月夜の姿は本当に美しかった。

 思えばあの時から僕は……。ふぅ……。


「水里さんは星矢に告白をしないの?」

「そ、それは」


 僕調べでは星矢に恋するメンバーで唯一水里さんだけ告白を1度もしていないらしい。

 奥手なのか……それとも別の要因なのか。

 水里さんは言葉を並べた。


「私はまだ勇気が出ないや。みんなすごいと思う」

「……そうだね」


 その答えに協調するものがあった。目線の片隅で月夜が俯いているのが分かる。

 僕と月夜は想い合っているのは間違いない。でもそれを言葉として出してはいない。告白という手段をお互い取っていないのだ。月夜はその最後の一手を使わず、僕はその一手を出させないように今のままの関係でと釘をさしてしまった。


 今互いに納得できるのであればわざわざ付き合う必要なんてないじゃないかとも思う。

 そうすればことだってない。


「でもチャンスがあるなら言ってみたい。私の気持ちを星矢くんに伝えてみたい」


 その言葉を話す水里さんは輝いて見えた。強い意志を持っている所が凄いな。

 出来る限りの応援はしてあげたい。頑張る人には僕だって。


「男はやっぱり笑顔だよ。女の子の笑顔が一番」

「笑顔かぁ……」

「水里ちゃん、ちょっと手をまっすぐに出してみて」


 月夜のふいの言葉。水里さんは言われるまま手をまっすぐ出した。


「太陽さん、そのまま水里ちゃんの手を掴んでください」


 なんだろうか。ちょっと照れ臭いが水里さんの手を掴んだ。う、柔らかい。


「絶対に離しちゃ駄目ですよ。じゃあ水里ちゃんも笑顔の練習しようか」

「え?」


 月夜が目を細め、両手をワキワキとし水里さんに迫る。勘付いた水里さんだったが腕は僕に捕まれているためその迫りくる手から逃げることはできない。


「ちょ、ちょ! 太陽くん、手を放して」

「素直に受けたら?」


 月夜はがら空きの水里さんの両腋の下をごりごりとくすぐり始めた。

 今までのうっぷんを晴らすかのような攻撃


「うひゃひゃひゃあああ! や、やめぇええええ!」


 悶え、亜麻色の髪を振りまくる水里さんは何とも下品な笑い方をする。うん、月夜の方がやっぱりかわいいな。

 気がすむまでくすぐられ続ける水里さんの笑い声をよそに僕は無心に手を掴み続ける。


「し、死ぬぅぅぅ!」


 やったことはまわりまわってやってくるということだろう。

 水里さんは笑い苦しみ、そろそろ店員さんにも注意されそうだったので僕達は店を出ることにした。


 そのまま2人は家で明日に備えて、手作り弁当を作るため帰っていった。あんなバカなやり取りしつつも本当に仲がいいな。


 僕のスマホの音が鳴る。ポケットから取り出すと月夜からメッセージが届いていた。


「明日……図書館へ行きませんか?」


 当然行きます!

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