100 恋愛相談ver2①
「緊急事態だよ、太陽くん」
「緊急事態ですよ、太陽さん」
「はぁ」
場は学生がよく使うファミリーレストラン。放課後の貴重な時間にまた美少女2人に呼び出され、僕は相談を持ち掛けられる。
今回のお相手は月夜と
私立
僕はこの2人相手だと割と素な状態でいられる。月夜はともかく、水里さんは本当に女友達といってもいいのかもしれない。
「明日の土曜日ね……」
話を始めたのは水里さんだ。肩まで伸ばした亜麻色のセミロングの髪はふわふわで正統派美少女と言ってもいいだろう。
そんなこと口走ったら調子に乗るのは目に見えているが。
「星矢くんと2人きりでデートすることになったの!」
「な、なんだってー!」
お、驚いた。みんなで遊びにいくならともかく……2人で行くだなんて無駄なお金を使いたがらないあいつらしくない。
今度本人に理由を聞いてみよう。
「それで相談ってのは?」
「水里ちゃん、本格的なデートはしたことないから、私とそ、その……太陽さんとのことを聞きたいって」
月夜は言いづらそうに頬を紅く染めて言葉を繋げた。なんてかわいいんだ。抱きしめたい。
でも星矢と水里さんって何度か出かけたような気もするけど……。まぁ本人がそう言うならそうなんだろう。
僕と月夜の初めてのデート。あの夏祭り前のデート練習の時かな。……あの時の月夜は思い出すだけでも見惚れるほどだったなぁ。
「月夜は水里さんに肩入れする感じなのかな」
星矢は現在6人の女子に想いを寄せられている。
星矢が誰を選ぶのか……そもそも選ばない気もするのだけど、同じグループの人間としては円満にくっつけたいものである。
僕としては月夜のことで
「水里ちゃんはその……太陽さんと山に遊びに行ったとき、お弁当を一緒に作ったり……相談に乗ってもらったりしてたの」
「うんうん、月夜ちゃんが喜んでくれるなら本望だよ!」
「うん、だからできるだけ手助けしたいなぁって。水里ちゃんのことお姉ちゃんみたいに思ってるから」
「つ、月夜ちゃん!」
水里さんは月夜の言葉に感動し、涙を見せ、思いっきり抱き着いた。
ちなみに座席はソファ型の4人席で僕と向かい合って水里さん、月夜となる。
「私1人っ子だから……妹が欲しかったの!」
確かに月夜みたいな妹は欲しい。実妹いらないから変えてほしいもんだなぁ。
水里さんはわんわん泣きながら月夜に抱き着いたままだ。美少女同士の絡み合い、悪くないが話が進まない。
「太陽さんに逃げられたあの日もすぐ水里ちゃんに相談したんですよ」
「相談終わった1分後に全員に転送してやったぜ」
この情報拡散ラインによってどれだけ僕は痛手を負っていたというのか。
少しして水里さんの調子が戻る。
「月夜ちゃんに応援してもらえる私……なかなかだよね!」
「僕の水里さん評価は下から数えた方が早いけどね」
「何で!?」
お騒がせスピーカー女にあらぬことを広められた恨み、忘れはしない。
さて、そろそろ話題を戻そう。
「星矢くんってめんどくさがりだから私がエスコートしようと思うんだよね。それで2人のデートを参考にしたいなと思って……。まず集合だね!」
集合……。確か駅前集合だったかな。30分前には着いてた気がする。
「やっぱり家が隣同士だけど、集合場所は駅前にするの?」
「そりゃそうだよ! 私だって着飾って……星矢くんに見せたいもん」
家からスタートはちょっとむなしいよね。
「確か太陽くんが駅前にいて、月夜ちゃんを待ってたんだよね。それで……月夜ちゃんはどうだったの」
「えっ!」
あの時のことを話せと!? 見惚れるぐらいかわいかったのは今でも覚えてる。で、でもそれをこの場で言うのは恥ずかしいしなぁ。
「そ、そのもう数か月前だから忘れちゃったなぁ」
「え……」
言葉を出したのは月夜だ。
「太陽さん忘れちゃったんですか? 私……太陽さんに喜んでもらおうと……あんなに頑張って来たのに」
月夜の瞳がじわっと涙が浮かぶ、顔も赤くなり、僕の心が大幅に冷えた。
「ちちちち違うよ! 覚えてるよ! 髪につけてたあのピンクの髪飾りがすっげー似合ってたし、黒のブラウスとか初めてみて、月夜ってこんな格好が出来るんだって感動して、そのめちゃくちゃかわいくて、ブーツとかもすごい似合っていた。ナチュラルメイクっていうのかな。もうなんか色っぽくて直視できないほど魅力的で、あの時撮った写真を3日に1回は見て思い出すくらい好きだよ!」
「本当ですか! やったー!」
いつのまにか月夜さんが泣き止んでいた件……。心臓に悪いんだが。
変わりに水里さんが照れていた。
「なかなかの愛だね……。星矢くんはさすがにそこまで言ってくれないかな」
星矢がそんなこと思うシーンを想像できない。いいんじゃないかで終わらせそうだ。
にこにこしている月夜と焦って墓穴を掘る僕。なんて対照的なんだろうか……。
まだまだ話は続く。
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