098 猫カフェ

「わあぁぁぁあ……かわいいぃぃ」


 そこは楽園のようであった。

 部屋の中にはたくさんの種類の猫が僕達を見つめており、その愛らしさに隣の女の子の頬が緩んでいる。

 僕としては猫もかわいいが隣の女の子もかわいい。とても撫でてあげたい気分にさせられる。


 この場所でそんないかがわしいことをしてはいけないんだけどね。

 僕はひとまず椅子に座ることにした。


「噂には聞いていたけど、猫カフェってやっぱりいいなぁ」

「かわいいよね。僕は犬派だけど、心が思わず揺れ動いてしまうね」


 神凪月夜はさっそく猫の側に寄る。


 この前の幼稚園での餅つき大会に参加したお礼に僕と月夜は商店街の猫カフェの割引券をもらうことになった。

 くれた人が猫アレルギーというのもある。

 僕も月夜も猫カフェには行ったことがなかったのでわくわくして行ったわけだが想像以上に楽しそうだ。

 金額的に2時間くらいしか入れないけど満喫させてもらおうかな。


 その前に写真を撮ろう。


「月夜撮るよ~」

「は~い」


 猫を刺激させないようにゆっくりと撮ることにしよう。

 猫と月夜。なんだ最高か!

 小さめの猫を抱え込み、月夜はゆっくり撫でていく。

 他の猫たちも近づいてきた。


「なんか集まってきた」

「月夜を猫と思ってるんじゃない?」

「にゃ? 猫ちゃんですにゃ~」


 しまった。スマホで録音しておけばよかった。

 ドリンクバーで飲み放題、のんびりマンガを読みながら猫と戯れる。こりゃハマりそうだな。


 月夜が猫を持って近づいてきた。


「太陽さんも抱いてあげてください」

「ありがと」


 月夜から猫を受け取り、抱いてあげる。人になれているだけあって静かだ。

 マジでかわいいなぁ。犬とは違ったかわいさが猫にはあるよね。

 ウチのたろうが一番かわいいことに違いはないけど。


 初めはマンガを読んでのんびりするつもりだったけど、結局猫と戯れることがメインになってるなぁ。それが猫カフェのいいところか。

 月夜は部屋の中にいる猫をずっと抱いたり、撫でたりしている。

 本当に嬉しそうだ。 


「猫飼いたい!」

「あのアパートじゃ飼えないよなぁ」

「そうですね。早く大人になりたいです。いろんな猫を飼いたいなぁ」

「世話が大変だろうねぇ……。むっ、これは」


 僕はとんでもないものを見つける。これは是非ともお願いしないと……。


「月夜」

「はい?」

「これを着てみてくれないか」

「えー」


 クローゼットに入っていた猫耳カチューシャ、猫パーカーだ。

 これを月夜が着たらもはやエモさ爆発だろう。

 目を細めて怪しむ月夜だが、手を合わせてお願いしたら渋々着てくれることになった。

 月夜は何だかんだお願いを聞いてくれるとても優しい子だ。これが他の女の子だったらキモッ、死ねって言われてたな。


 月夜は栗色の髪の上に猫耳カチューシャを付け、パーカーも着てくれた。


「どうですか?」

「かわいい」

「へ?」

「マジでかわいい。なんつーかかわいい」

「そんな直で言われると照れるんですが」


 照れ猫マジでかわいい。今すぐ抱きしめたい衝動に駆られる。

 猫を抱え込むように抱きしめたら駄目だろうか……駄目だよね。


 僕はカメラを手に猫月夜をファインダーに納めた。

 もっと、もっと撮らないと。

 猫月夜がかわいいのか、猫達もまわりに集まり始めた。


 ちょうどいい、おやつタイムにしよう。

 月夜に事前に購入していた猫用のおやつを手渡す。

 月夜はスプーンでおやつをすくって、猫へ差し出した。たくさんの猫がそれに群がる。


「ふふ、ほんとかわいいなぁ」


 穏やかな表情で猫達におやつを与える月夜を見て、僕は自分で食べる用に買ったクッキーを取り出した。

 それを猫……猫月夜に差し出した。


「はむ」


 猫月夜はそれを咥えてくれた。


「おいしいにゃー」


 戯けるように猫っぽく演じる月夜が愛しくて、僕は両手で月夜の腕を掴む。

 その勢いに月夜はびっくりし、ぽろっとクッキーを落としてしまった。


「た、太陽さん」

「あ……」


 しまった。思わず衝動で抱きしめようとしてしまった。

 猫耳、猫パーカーの力、恐ろしい。掴む両手の向かう先、このまま抱きしめるわけにはいかないので、月夜の栗色の髪を撫でることにした。


「もう、抱きしめてくれないんですか」

「……それは、まだ……」

「仕方ないですにゃぁ」


 代わりに月夜はおやつを食べている猫を抱え込んでぎゅーっと抱きしめた。


「月夜はいつでもOKなのですにゃぁ」


 猫を抱えていじらしく僕に微笑む月夜の姿に……僕は萌え死にそうになるのであった。

 あっという間の2時間だったがこの猫カフェの時間を十分に楽しめた。


 抱きしめたかったな……。

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