057 学園祭準備~下級生~

 というわけで僕は1年生の教室に来たわけだ。もはや四の五の言っていられない状況。無理だったら水里さんになぶり殺しにされる。あの女、意外にやる時はやるヤツだ。

 しかし……下級生とはいえ別のクラスに入るのは難しい。そして目的の人物である神凪月夜は圧倒的多数に囲まれていて、話かけづらい。

 相変わらず人気だな。でも……世良さんや瓜原さんと一緒じゃない時の月夜ってそんなに楽しそうじゃないよな……。


「山田先輩?」

「お、天じゃないか!」


 遊佐ゆさあまつ。夏休みを超えたあたりから仲良くなった下級生の男子生徒だ。生徒会役員としてかなり忙しい日々を送ってるらしい。

 端正な顔立ちで幼さが残るも1年生を中心に圧倒的な……。


「執事要員ゲット!」

「え?」


 天を使って、月夜、世良さん、瓜原さんを呼び出した。


「そうか。そっちのクラスは劇をやるのか」

「そうですね。2人の騎士と1人の姫という内容です。木乃莉さんが台本を作ってるんですよ」


 天に紹介され、瓜原うりはら木乃莉きのりさんは頬を紅くして頷いた。

 あの天の告白劇から天と瓜原さんはいい感じの仲になってるらしい。下の名前で呼ぶようになってるとは……イケメンはやっぱつえーな。


「ふぁぁぁ。んで、先輩はあたし達に手伝ってほしいって言ってるんだよね?」

「ああ、劇は2日目でメイド喫茶は1日目主催だからな。被ることはないと思うしお願いしたい!」


 世良海香せらうみかさんは大あくびをしながらも声を出す。


「なら、受ける代わりに1つだけ条件を言ってもいいですか? それを先輩のクラスで受けて頂けるなら僕は構いません」


 天は真面目な言葉遣いで、条件を提示する。


「実は2人の騎士の1人がケガをしちゃって代役を探しているんです。それで星矢先輩がイメージにぴったりなんで貸してもらえないですか?」

「いいよ!」

「勝手に決めて、お兄ちゃんに怒られますよ」

「分かったよ」


 月夜に怒られてしまった。僕はスマホを取り出して、星矢に連絡を取る。

 さっそく繋がった。


『なんだ』

「学園祭の2日で飯をおごってやるからお願い聞いてくれ」

『分かった』


 そして電話の通信が切れた。


「いいって」


 月夜は何を思ったのだろう、頭を抱えた。兄に対してなのか、僕に対してなのか。

 親友ってやつは何も言わなくてもだいたい把握できるものなんだ。星矢オンリーだけど。

 この際多少の出費は仕方ない。この面々を喫茶店に呼びこむために全力を出すんだ。

 ちなみに星矢は九土さんのフォローで生徒会の手伝いをしている。もはやこの学園は九土原王国ゆえ誰も逆らえない。


「あたしも劇は主演じゃないから余裕あるし、手伝ってもいいよ」

「助かる!」


 これで天と世良さんからOKをもらった。ちなみに瓜原さんも欲しかったが天から駄目って言われた。彼氏面しやがって! くそっ。

 僕は月夜を見る。


「私も別に」

「えー、月夜はお姫様役だし、余裕ないでしょ」

「海ちゃん?」

「どうしてもって言うなら……月夜がぐっと来るようなお願いをしないとね」

「ちょ! もう」


 え、人を借りたいとかじゃダメなの。月夜に来てもらう前提の話だからかなり困るんだけど……。

 月夜さん!


「そうですね、ちゃんとお願いしてくれなきゃ困ります」

「あれぇ?」


 月夜は腕を組んでそっぽ向いてしまった。かわいい。違うそうじゃない。

 さっきまで来てくれる気は満々だったじゃないか。

 仕方ない。正直な所、恥ずかしいんだけどお願いしないといけないのであればやるしかない。

 今までもそう、本気で思えば月夜は答えてくれた。だからやってやる。

 周囲に天、世良さん、瓜原さん以外いないことを確認した。


「月夜」


 僕は月夜の両肩を掴んだ。

 月夜の二重の瞳をじっと見つめる。恥ずかしがらせないように、この気持ちをすぐに吐く。


「ひゃっ」

「お願いだ。僕は月夜のメイド姿が見たい。絶対誰よりもか……かわいいと思うから……僕にその姿を見せてほしい」


「ちょっと引く」

「木乃莉駄目、それは言っちゃ駄目」


 後ろから2人の女の子の不穏な言葉が聞こえるが……僕の想いはちゃんと伝えられたと思う。

 柔らかく細い月夜の肩を今も掴みながら……ほんのりと照れる月夜は僕から視線を外した。


「は……はい、そういうことなら……いいですよ」

「ありがとう!」

「いいの!? 相当気持ち悪かったけど、月夜はそれでいいの!?」


 世良さん……、気持ち悪いとかやめてくれよ。分かってるよ、僕の顔でそんなキザなこと言ったらキモいって分かってるよ。

 でも月夜のメイド服が見たいってのは事実なんだ。


 これでメイド2名、執事1名ゲットだ。これで水里さんにぶっ殺されずにすみそうだ。

 こうして学園祭まであと少しとなった。


「天……そんなに僕の言い方ってキモいかな」

「え……あははは」

「君の靴下ネタとどっちがマシか瓜原さんに聞いてくるわ」

「それはもう勘弁してください!!」

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