056 学園祭準備~同級生~
10月下旬、学園祭準備も佳境に差し掛かっていた。
僕達のクラスの出し物はそう……執事・メイド喫茶だ。
まだ2年ということもあり、そこまで力は入っていない。無難にこなして、無難に終わらせればということだ。
よくある性別変換というのもなく、男子が執事、女子がメイドというごく自然な喫茶店という形となった。
衣装も生徒会長及びお嬢様の九土さんが準備できたので問題なし。
しかし、このギリギリの時に問題が発生してしまったようだ。
「この大量の食材と飲料は何?」
水里さんは帳簿と購入量を見比べていた。あきらかに量が多く、普通の喫茶店でさばくのはほぼ不可能なレベルだ。
どうやら数字の書き方が悪くて倍に見えてしまったらしい。他にミスがミスを呼びこんな事態となってしまったのだ。
これはとんでもないことになってしまったね。そしてミスをしてしまった代表として僕は正座させられているのです。
僕だけのせいじゃないのに僕だけひどくない?
「太陽くん、これはどうしようか」
クラスの学園祭実行委員である
いや~まずいな。これはまずいな。
「相当に回転を上げなきゃ無理だね。料理も大量に作れるように九土に相談してみる?」
このメンバーで考えた案はまずは人を呼ぶために美少年執事・美少女メイド喫茶に名前を変えることだ。
美少年役は当然星矢。そして女子人気の高い北条さんを男装させる。美少女の方は水里さん、ひーちゃん、弓崎さんで構成させる。
九土さんのメイド姿も欲しかったが生徒会長は忙しい。
「あ、あの……私はそんなに美人では!」
「金葉ちゃんなら大丈夫だよ! そのおっぱい出せば問題ないよ」
ドセクハラじゃねぇか。目立つことが苦手な
それでもやるしかないのだ。
しかし顔立ちのいいメンバーオンリーにするとなるとホールの人数が絶望的に足りない。
「今の人員では無理ですね。料理を作る人数よりホールの人数の方が問題でしょう」
食材の量から、ホールの人数を計算する。さすが学年2位、計算が早い。星矢と九土さんが常時テスト満点だから実質3位だけど。
「最低男子が1名。女子は2名ほど欲しいですね」
「よし料理の質とか量は私が調整する。火澄ちゃんは彩ちゃんに料理スペースの相談を。金葉ちゃんは時間帯及びスケジュールをお願いします」
さすが水里さん、いつもはおちゃらけているのにしめる時はちゃんとしめる所が素晴らしい。
確か実家が旅館で女将の娘ってこともあり、向こうで取りまとめとかしていたみたいだね。
「じゃあ太陽くん、あなたにミッションです」
「僕は……執事役とか無理だよ」
「学園祭までに整形して来てくれるならそれもありだけど」
「無茶苦茶言うね」
水里さんににっこりと笑った。
「人員を集めてきて。太陽くんが一番かわいいと思ってるあの子に……どんな手を使ってでもいいからお願いしてきなさい」
「はい」
本気になったこの女性に歯向かってはいけない。この時初めてそう思ったのだった。
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