054 コンテスト投票前

 私立恒宙こうちゅう学園の学園祭は10月下旬。体育祭は11月上旬に行われる。そのため9月に入ると生徒会や有志が集まった学園祭実行委員などが非常に忙しくなる時期となる。

 そして9月末にミスター・ミス恒宙こうちゅうを選定する選挙がまず行われる。


 昼休みにいつものメンバーとごはんを食べた後、僕と星矢はコンテスト開催のチラシが校内の掲示板に張られていることに気づく。


「今年もやっぱコンテストやるんだね」


 投票開始がちょうど明日からか。1週間の期間があるみたいだ。

 この学校は基本他薦で票を集めて、上位3人が学園祭の1日目の最後の時間帯に体育館の壇上へ上がり、アピールを行う。

 その場で審査員が集計をし、最終の1位を決められる。


「星矢は今年も出るのか?」

「ごめんだと言いたい所だが1位の学食無料券10回分は魅力的だ」


 神凪星矢は昨年のミスター・恒宙こうちゅうに選ばれている。月夜と瓜二つだけあって、非常に端正な顔立ちを持つ星矢は圧倒的な全校生徒8割の票を集めて学園祭にて壇上へ上がった。

 アピールチャンスでは家庭科部の本気を出してのファッションショーをした結果見事優勝を果たしたのだ。イケメンがかっこいい服着たらそりゃ……ねぇ。


 恐らく今年も星矢は同じような形を狙ってくるだろう。


「対抗は……去年の残る2人は3年生だったからな……。誰かいるかな」

「天は上がってくるんじゃないか。1年では人気だろ」


 遊佐ゆさあまつ。先日大胆な告白をして度肝を抜いた下級生だ。彼も幼い顔立ちながら目鼻パーツが整っており、人気なのは間違いない。

 生徒会が推してくるかもしれないな。


「それより気になるのは女子かな! もしかして星矢ハーレムズで埋まるんじゃない?」

「その言葉はやめろ。まぁ月夜は確定として、他がどうなるかは気になるな」


「やっぱり一番は生徒会長の九土さんだろ。知名度と容姿がずば抜けている。次は現役アイドルのひーちゃんだね。月夜を含んでこの3人で決まるんじゃない」

「いや、それはないな」


 星矢はコンテストの用紙を指差す。


「なお、九土原彩花くどはらさいか天野日和あまのひよりは審査員として出席のため投票除外とする」


 ほほぅ……。これは考えたね。今年はちょっと有名メンバーが多すぎるからねぇ。

 こうなったらあと2人は分からなくなるな。


「星矢はどう思う?」

「知名度で言えばこの前水泳で高校生記録を出した海香は上がってくるかもしれないな。あとは……水里」

「へー! なんでそこで水里さんが出るのかな」

「ちょっと思っただけだ」


 珍しい星矢の不用意な発言だった。顔を隠して表情を悟られないようにしている。こういう所は月夜にそっくりだよな。

 この前月夜と一緒に山へ行った当日、星矢と水里さんも何かあったらしい。月夜と水里さんの共同弁当ってのはこのことを指していたのかもしれないね。

 これはちょっといろんな意味で楽しいミスコンになりそうだ。



 ◇◇◇



「月夜もミスコンは1位を狙ってるの?」

「はい?」


 部活動からの帰り道。夕焼けの空の下僕は月夜に話をふる。


「まだ本戦に出られるか分かりませんよ」

「昨年、そんなこと言ってた星矢がダントツ1位通過だったからね」


 今、残るメンバーで知名度的に本戦出場は確実だろう。逆に誰を選べって話となる。


「本当は出場したくないのですけど、1位の食堂の無料券10枚は魅力的ですね」

「星矢と同じこと言ってる」


 星矢ほどの守銭奴ではないが、月夜も可能な限り無駄金は使わないような性格だ。バーゲンや割引券、無料券をこよなく愛している。


「あはは……。でも体育館でアピールするのは恥ずかしいなぁ」


 月夜の存在自体がすでにアピールになってるからな。

 月夜の一挙一動全てがアピールとなっていて、かわいいが限界突破している。


「手堅い方法なら星矢みたいにファッションショーだろうね。家庭科部に頼めば作ってくれそう。月夜は何を着ても似合うと思うよ。ぜひ、カメラで撮影したいな」

「最近太陽さんは欲を隠さなくなりましたよね」

「月夜の大食いネタと一緒だよ。さらけ出していい相手と駄目な相手がいると思うけど」


 2人で部活動後に下校を始めてそろそろ1ヶ月だ。

 月夜はこの関係をどう思っているだろう。僕は……この関係のままでいたい。月夜も同じであったらいいなぁ。


「ねぇ、太陽さん」

「ん?」

「もし……最終1位だったら……私のお願いを聞いてもらってもいいですか?」

「お願い? そんなのいつでも聞いてる」

「大事なだ~いじなお話なのです」


 月夜はぴょんと1度跳ねて前出た。

 大事な……話か。前は遊びにいこうとかそんなんだったけど……。


「いいよ、僕にできることであれば……ね」


 月夜なら普通にやってれば1位になれる気もするけど……いいかな。


「もしかしたら太陽さんが本戦に出てくるかもしれませんね」

「あはは、それはありえないことだな。1票すら入らないのに」

「入りますよ。私が入れるんだから……ふふ」


 まったくもう……。

 僕はそうやってアピールする月夜の姿が魅力的で胸が何度も何度もなり続ける。

 表情が綻ばないようにするのがほんとつらいよ。

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