032 三人娘
8月最後の全校登校日。授業はなく、簡単なHRと連絡事項、2学期の行事の調整を行っている。
休む生徒もいるのだけど……実はこの日の登校率はかなり高い。
というわけでいつも通り僕は神凪家へ到着する。
今日はお迎え陣が全員揃うため扉の前で待っていた。お、ちょうど2人がやって来たな。
神凪家は2階にあるので1階に同じ制服の生徒が来るとすぐ分かる。
「や~まだ先輩おはよ~!」
「先輩、おはようございます」
「おはよう世良さん、瓜原さん」
僕の1つ下の女の子達だ。彼女達こそ神凪月夜のお迎え係となっている。
この2人は月夜と幼稚園時代からの付き合いであり最長の幼なじみといってもいい。
月夜を含め1年の三人娘といえばこの女の子達である。
世良さんが体育科で瓜原さんが普通科のため夏期講習で一緒になることはなかったが、9月から彼女達も含めて毎日一緒に登校する。
お世話係全員揃ったため僕は合鍵で扉を開けて、中に入った。
「お、海ちゃん、木乃莉ちゃん、おはよ!」
「「水里先輩」」
隣に住む
正直、水里さんがいれば星矢のお迎え係は必要ないんだけど……それのお礼に学年1位に勉強を見てもらっているのでお迎え係を止めると僕が留年するはめになるのでこの役目だけは死守しなければいけないのだ。
「じゃあ、月夜のことをお願いするよ」
「うお! 先輩がマジで月夜のこと月夜って呼んでる」
「そうでしょ、怪奇でしょ! 怪談みたいなものだよ!」
世良さんと水里さんは性格が似ている所があるから2人揃うとめんどくさい。
言葉を返すのもめんどくさい。
「月夜ーっ! 起きろーっ!」
「ぐへへへ、月夜ちゃん、どんなパンツ履いてるのォー」
「え、ちょっ! 2人とも何!?」
月夜の部屋で騒がし女2人がわめている。朝から元気だなぁ。
覗くとすごい光景になってそうだし、絶対に行かない。
「星矢さん、朝ですよ。起きてください」
対して瓜原さんは小動物のように小柄で物静かな女の子だ。
仲良し三人娘でも月夜、世良さん、瓜原さんは三者三葉、性格が全然違う。
寝返りをうった星矢の顔がこちらの方向へさらけ出された。瓜原さんはそんな星矢の顔を優しげに見つめる。
「……」
見つめる。
「……」
「見惚れてないで起こそうよ」
「はっ!?」
瓜原さん、彼女もまた星矢に想いを寄せる女の子である。
この神凪星矢、これだけたくさんの女の子に恋をされているため誰を応援していいか親友としてかなり困っている。
瓜原さんは星矢を揺すって起こし始めた。そんな程度じゃ起きないよコイツ。
「あ……ん、木乃莉か……」
「はい」
起きたと思ってるのかもしれないがこれは星矢にとってまだ夢の中である。
「抱き枕……」
「ひゃっ!」
そのまま小柄の瓜原さんを抱え込み、まくらのように抱きしめ始めた。
おい! それはいかん、いかんて!
「あわわわ……」
顔を真っ赤にさせる瓜原さんに当たらないように僕は星矢を蹴り飛ばした。
朝の星矢だったらこれでいい。星矢は壁に当たって、ようやく力の入った呻き声が聞こえた。
「なんで邪魔するんですか」
「なんで僕が怒られるの」
瓜原さんから機嫌悪そうに言葉をかけられる。
このような理不尽なことを言われるのには慣れていた。
早く登校準備しよ。
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