025 月夜とデート②

「なので……今日はデートの練習に付き合ってください!」


 月夜は強い口調でお願いをする。

 そのお願いに僕は頷くことしかできない。

 それじゃ僕じゃなくても……って思ったが男性の知り合いは僕しかいないって言ってたし……月夜の意図が分からない


「僕もその……あまりに役に立てないよ。デートなんてしたこともないし」

「だったら太陽さんも私で練習したらいいんです。これでwin-winの関係ですよね~」

「ええ!? あぁ……まぁ」


 僕はわりと月夜を意識しちゃってるんだけどなぁ。でも月夜の言うことも間違いではない。今は誰とも付き合う気はないけど、大学、社会人となってこんな思想なのはさすがにまずい。

 僕だって将来結婚したいし、子供だって欲しい。そういう意味で練習という考えはありなのかも。そう……練習なら。


「今日は第1弾です!」

「そうか……って第2弾、第3弾があるの!?」


 月夜はにふふ~とお道化けるように笑う。まったく振り回されているなぁ。


「まずデートといえば……やっぱり映画です!」

「おお! 確かにデートっぽい」


 10分ぐらい歩けば中に映画館が併設されているモール街がある。よし、さっそく歩こう。

 そんな僕の左腕が柔らかい何かに包まれる。


「つ、月夜さん?」

「デートなんだから腕を組むのは当然です」


 月夜の柔らかい両腕に左腕が奪われてしまった。何というか……照れる。知り合いに見られたら絶対やばいな……。

 月夜もよくできるよなぁ。僕のことを意識してないからだろうか。横から月夜の顔を覗く。


「どうしたんですか、太陽さん。照れるんですか?」

「ま……まぁ経験ないからね。それより大丈夫?」

「な、何がですか」

「月夜、死ぬほど顔が赤いけど……」

「だ、大丈夫です!」

「真夏だし、やめよう! 倒れるから!」


 月夜の顔は真っ赤っかになっていた。今にも噴火しそうなレベルだ。冬ならいいけど、夏場でこの表情はまずい。

 月夜から腕を解放させ、自由になる。月夜も少し落ちついたようだ。


「恥ずかしいならやらなきゃいいのに」

「練習なんですから!」


 月夜の方が余裕なくない? おっと映画館に到着した。

 今の時間だと…‥‥恋愛映画、海外のSF、スパイ物、小さな子供向けのアニマル映画か。


「月夜、何を見ようか」

「何を言ってるんですか……無料券が2枚あるアニマル映画一択です」

「お、おう」


 月夜はカバンから2枚のチケットを取り出し、受付に提示した。

 準備万端でしょうと言わんばかりにチケットの半券を手渡しされる。さすが経済観念が発達してらっしゃる。

 デートでアニマル映画を見ることになるとは思わなかったな。


 劇場内に足を踏みれた僕達。ほどなく、映画は上映された。

 映画の内容は可もなく、不可もなく、動物たちを主人公としたアニメーションだ。小さい頃、よく見たよなぁ。

 月夜も集中してるし……。手とか握ってみる? うん、無理だな。

 2時間しっかり視聴し、僕達は感想を言い合いながら外へ出る。

 ちょうど時刻は12時をまわっていた。


「食事にしようか」

「そうですね」


 僕達は映画館のすぐ近くにあるチェーン店のハンバーガーショップに入った。

 ここってこないだ月夜とばったり会ったハンバーガーショップなんだよな。

 荷物を置いて、席を取る。昼時だから人も多い。荷物を置いて2人とも買いにいくのはよくない。


「先に買ってきなよ。荷物は見てるよ」

「ありがとうございます!」


 月夜を先に買いに行かせ、戻ってきたら、僕は席を立つ。月夜はハンバーガーセットにポテトパイを購入していた。

 さてと僕は何にしようかな……。


 購入してきたキングハンバーガーセットにチキンナゲットの箱を机に置いて、待ってくれていた月夜もハンバーガーの包装に手をかけた。


「太陽さん、2個もキングバーガー食べるんですか? やっぱり男性は違いますね」

「え、これは月夜の分だよ。さっきの映画の無料券のお礼だね」


 月夜のトレイにキングバーガーを置いた。月夜は自分の食べているハンバーガーとトレイのキングバーガーを交互に見る。


「そんな小さなハンバーガーじゃ足りないでしょ」


 言っている意味に気づいたのか月夜は恥ずかしそうに頬を紅く染めた。


「わ、私のこと大食いキャラだと思ってるでしょ!」

「そこまでは思ってないけど足りないでしょ」


 だって、この前1人で食べてた時はキングバーガーに最大サイズのポテトにコーヒーフロート食べてたもんな。

 あと触れなかったけど、チキンナゲットの箱も置いてたことを知ってる。あの時はすでに食べきっていてごみにしてたみたいだけど……見えてたよ。


「遠慮して、お腹なったら恥ずかしいよ。これも練習だね」

「ちょっと太陽さんへの評価が下がりました」


 ぐっと睨みつけられた。残念だけどかわいすぎて全然怖くない。

 その勢いのままキングバーカーも平らげてしまった。やっぱり大食いじゃないか。でもこれを言うのは失礼すぎる。

 月夜がポテトパイを頼んでいるのを見て僕はコーヒーフロートを頼んでいた。

 この前ここで食べ合いをしたのが懐かしく感じるね。

 僕はコーヒーからアイスの部分をストローですくった。


「デートの基本をやってみようか」

「基本ですか?」


 僕はアイスの乗ったストローを月夜に差し出す。


「これやってみる?」

「っ! でも、あの、それ食べかけじゃ」


 顔を紅くし、遠慮しがちに月夜は声を上げた。


「これ新品のストローだから気にしないで」

「~~~~~~!」


 言葉にならない声で呻く月夜にさらに強く差し出した。

 月夜は小さな顔を上げる。ストローが口の中で閉じる瞬間、僕はストローを奥に引っ張った。

 これはなかなか面白い。月夜は顔を歪ませ、また言葉にならない声をあげた。

 からかうのはここまでにしよう。


「ごめん、次はちゃんとするから」

「……。手玉に取られるなんて一生の不覚です」

「その一生薄くない?」

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