024 月夜とデート①

 土曜日、はぁ……ついにこの日が来てしまった。

 先日、月夜に僕と遊びたいと言われて……かなり戸惑って了承してしまったが、日が近づくにつれて憂鬱になってきた。


 この夏休みに入って月夜と一緒にいる日は多いが、1日フルで遊びにいくということはなかった。

 この前の科学館へ一緒に行った時もデートと言えばデートだけど、そんな長い時間ではなかった。

 図書館だってせいぜい数時間だし、正直未知の領域かなと思っている。


 そりゃいつものグループの女の子と出かけたことは何回かある。

 それも例えばプレゼントを買いにいったりとか、足りない何かを買いにいったりとか……目的がはっきりとしていた。

 その目的を達成したらお開きだったから何も考えずにいられた。

 でも今回は遊ぶことが目的だからなぁ。それに向こうからの誘いだから僕はどう動けばいいのやら。こんなこと誰にも相談できない。

 男友達に相談……? 彼女いる男友達っていたかな。基本同類だった気がする。


 いろいろ悩んだが僕が着飾った所で変わらないと思うのでいつものTシャツ、ジーパンで行くことにした。

 集合場所は駅前の広場。僕の家からも神凪家からも近い。

 約束よりも30分も早い9時半に到着。自分の生真面目さが嫌になる。遅刻が嫌で早く出たらいつも30分前だ。のんびり……待とう。ちょっと心も落ち着かせたいし。


「ごめんなさい、待たせちゃいましたか」


 月夜の声がし、首をそちらに向ける。心が落ち着く間もなかった。

 そして僕は言葉を失う。

 背中まで伸びた栗色の髪にワンポイントでピンクの髪飾りをつけ、黒のブラウスにミニスカート、ストールというのか見慣れない肩掛けを着ている。

 いつもはスニーカーが多いのにブーツを掃き、全力全開のオシャレをしてきていた。

 元々完璧な顔立ちなのにメイクをしており、睫毛がばちばち決まっている。薄い口紅も唇のうるおいを際立たせている。

 僕が女であったなら大音量のかわいいをこの場で発しただろう。

 しかし言えるはずもなく、僕は構わず、月夜を見続けた。


「そんなに見られると恥ずかしいです」


 ほんのりと頬を赤らめ月夜は視線を外した。あぁ、よくない。よくないんだけど……目を逸らすことができない。今すぐカバンの中のカメラで君を撮りたい。


 少し時が経ち、我を取り戻す。今までも何度も何度もかわいいと思ってきたけど、そのレベルを軽く超えてきてしまった。


「ごめんね、その……見惚れてしまった」

「……嬉しいです」


 ここまで準備してくるとは思っていなかった。いつも通りでダサイ恰好してきた自分のファンションセンスの無さを嘆く。恥を承知で女性陣に相談してみようかな。

 月夜の容姿はやはり目立っており、駅に近づく人皆、月夜に視線がいっている。ここに留まるのよくない。


「月夜、歩こうか」

「はい!」


 この超絶にかわいい女の子を前に今日一日耐えられるのだろうか。


 僕と月夜は通りを歩く。


「太陽さんは来るのが早いです。せっかく待ってようと思ったのに」

「早いのは自覚してるけど、月夜も早すぎでしょ。まだ9時40分だよ。何で僕達……約束時間早めてるのさ」

「……その、この姿を早く見せたかったんです」


 ああ、もうかわいいなくっそ。

 クリティカルヒットだよ。16年の人生で一番かわいいものを見た気がするよ。遠慮がちなその仕草も完璧だよ。

 この姿で待つ月夜も見たかったな。それはそれで残念だ。


「でも……すごいね。月夜ってメイクとかもできるんだね」

「さすがに無理です。九土先輩に相談したら最高級のメイクをしてあげると言われて」


 九土原彩花くどばらさいかさん、グループの中でも随一のお嬢様である彼女にできないことはない。

 きっと面白がっていろいろやったんだろうなぁ。来週頭に絶対からかわれそうだ。


「太陽さん」


 月夜は歩くの止め、呼び止められる。


「私の恋を……応援してくれるんですよね」

「……ああ」


 先日の告白劇で突き詰めてしまったこと。僕はもう撤回することはできない。月夜が好きな誰かとの恋を僕は応援しなければならない。

 ちょっと胸に来るものはあるけど、月夜が認め、釣り合う男性なのであれば僕は祝福してあげたい。


「なので……今日はデートの練習に付き合ってください!」

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