023 帰り道

 部活動が終わって、僕と月夜は一緒に帰ることになる。

 陸上部員からは一緒に帰らせろって声も上がるんだけど、今年の春の時期に月夜人気が白熱しすぎて、家を特定しようとするバカまで出てきたので、基本月夜は信頼できる人としか帰らない。

 そんなわけで僕と月夜は二人っきりなのだ。学園で月夜と帰れる男って星矢と僕だけなんだぜー。羨ましいとよく言われる。


「マネージャー体験はどうだった?」

「楽しかったですよ。みなさん、優しく手伝ってくれましたし、いい方々ですね」


 そりゃ月夜とお近づきになりたい奴らしかいないんだから当たり前だよ。

 いい恰好したがるのは男として当然。でも楽しかったならよかった。


「何か問題があるような僕に相談して。多少力にはなれると思うし」

「分かりました! でも太陽さんって結構友達多いんですね」


 それはどういう意味だろう。友人は星矢しかいないと思われてたんだろうか。

 僕は普通にクラスで4,5人喋る友人はいるし。先輩、後輩含む部活のメンバーもそこそこ親しいんだけどな。

 女友達はほとんどいないけど、男友達は昔から多い方だよ! ぼっちじゃないよ!


「最後は結局星矢と話すことが多いけどね」


 同じクラスで同じ科で朝も一緒に登校してる……彼女か!

 と実はよく言われている。女性から羨ましいと言われるがそんなに嬉しくない。

 部活の話はここで終わった。


「弁当は……新しいメニューは作れそう?」

「そうですね~」


 月夜はカバンを後ろ手にもってくるりと回る。スカートがふわりと揺れ、細くて綺麗な足に視線がいってしまう。


「卵焼きは便利なんですけど、夜に作り置きするのはあまりよくないって聞くんですよね」


 神凪兄妹は朝は死ぬほど弱いので弁当は夜の内に作って冷蔵している。

 料理上手な月夜が担当なのだが、星矢も実は料理が上手い。飲食店でバイトしてるってのもある。


「雑菌だっけ。母親がなんか言ってた気がする」

「よほどのことがなければ大丈夫だと思うんですけどね。お兄ちゃん、賞味期限切れていても普通に食べるし」

「あいつ、メンタルだけでなく、胃も強そうだもんなぁ」


 学校1の美男子、神凪星矢……実は家庭科部所属とはあまり知られていない。学校の食材で晩飯を食い、学校の備品で繕い物をする。

 ドケチここに極まりだ。

 月夜は笑みを浮かべ、優しい声で問いかけてきた。


「今日の夜も挑戦してみようかな。太陽さんは何が好きですか?」

「そうだねぇ。僕はチーズが好きだから、チーズが入ったおかずが好きだね」


 月夜はふむふむと軽く頭を振って考える。

 さっきから月夜の一挙一動全てがかわいい。奇跡の人物だなと思う。


「ほんと朝早起きできればもっとバリエーション込みのお弁当が作れるんですけど」

「目覚ましでも……それで起きられたら起こし役必要ないもんね」

「早く寝ても遅く寝ても……起きられる気がしないです」

「何か驚くような音でもあれば起きられるのかな」


 そこで月夜の歩みが止まった。僕もつられて止まるが、月夜はじっと僕を見つめる。


「その手があるかも」

「何の話?」

「今はまだ……借りができたらお願いしますね」

「何の話か分からないけど……ロクな話じゃない気がする!」


 月夜の笑顔に言いくるめられ……それ以上の追求はできなかった。

 そして……月夜と過ごす週末がやってくる。

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