022 女テニのエース
まだ部活中。
月夜といっぱい話をしたいから呼んでこいと他の陸上部員に言われて、あたりを探しにいくことになった。
呼びにいきたいなら自分で行けって話だ。陸上部は童貞の巣窟だからなぁ。僕もだけど……。
月夜は確かコップとか、タオルを洗いにいったはず。きょろきょろと運動場を探していると……いた。
テニスコートの方で誰かと話している。
ゆっくりと近づいてみると月夜が誰と話しているか分かった。2人は僕の存在に気づく。
「太陽さん」
「山田」
「ここにいたんだね。北条さんも部活だったんだ」
「当たり前だろ。女テニは夏の間は練習ばっかだよ。体育科は仕方ないけどね」
その整った顔立ちと170センチの女性にしては高い体躯、気の強い言葉口調から女性人気のとても高い女の子だ。
体育科であるけど、同じクラスであり僕と星矢は2年連続同じクラスだ。月夜も北条さんには憧れがあるらしい。
高いフェンス超しで僕達は会話をする。
「北条せんぱ~い!」
下級生から黄色い声援を上げ、北条さんは手を振った。男の僕から見ても彼女はかっこいいなと思う。
北条さんを見て思ったけど女子硬式テニスのウェアってかわいいんだよなぁ。是非とも月夜に着てみてもらいたい。
「それより月夜が陸上部に行くなんて……あたしがずっと狙ってたのに」
残念そうに北条さんは言う。月夜は運動能力も高いのでそこそこ上に行けるのだろうけど、女子硬式テニスは強豪で練習もきついから半分冗談なんだろうな。
特進科でテニス部に入っている子はいないはずだ
「火澄先輩の専属のマネージャーならお受けしますよ」
「山田に飽きたらすぐ来なよ。歓迎するから」
なかなか厳しいなぁ。北条さんは話を続ける。
「それより、山田も月夜を下の名前で呼ぶようになったんだって。水里が速攻で拡散してたよ」
あのスピーカー女。本当にやること早いな。どっかでぎゃふんと言わせたい。
これから全員にいじられるんだろうな……。嫌ではないけど恥ずかしい。
「月夜も応援してあげるんだね」
「はい、さっきもタオルで汗を拭いてあげましから……応援はばっちりですよ」
「け、結構大胆だねあんた」
北条さんは少し照れて、視線を背けた。スポーツ一筋の北条さんは恋話に慣れていない。
男子にも女子にも人気でよく告白されているらしいけどお付き合いをしたことはないようだ。
女子硬式テニス部のエース。この前の全国大会でも準優勝だったもんなぁ。
「応援は大事だよね。北条さんも全国大会の時に星矢の応援で大逆転したもんね」
「っ!?」
「え、そうなんですか」
北条さんの顔が真っ赤になる。僕はただの付き添いだったけど、星矢と2人で女子硬式テニスの試合を見に行ったんだよね。近場だったし。
全国大会準決勝シングル、1ゲーム取られて0-40で後がない場面で星矢の声援を受けたらなんと大逆転勝ち!
最終は残念ながら準優勝だったけど、来年こそは優勝してほしいな
「あの後の北条さんは凄かった。さすが星矢に真っ赤な顔で試合を見に来てほしいとたのむ……」
「や~ま~だぁ!」
ヒィ!? 目がコロスって言ってる!
「月夜! 戻ろう、殺される!」
「は、はい!」
フェンスを登って襲ってきそうな北条さんから何とか逃げ出した。
北条火澄さん、彼女もまた星矢に想いを寄せる女の子の1人なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。