第270話 2月に入って

 期末テストが終わった。

 これでほぼ3学期の主な行事は終了だ。

 そして飛行場がもうすぐ本格的に使用できるようになりそうだ。

 そんな訳で学校の授業終了後はもっぱらニ・ホの飛行場倉庫に入り浸っている。

 俺以外の皆さんも大体そうだ。

 飛行訓練の邪魔をしない程度に超小型飛行機で飛んでみたり。

 鋭意制作中の大型飛行機を確認したり。


 倉庫は更に建て増しして巨大になった。

 何せ入っている飛行機の数が多い。

 超小型飛行機はうちの1機を含め7機まで増えた。

 小型4人乗り飛行機は3機がほぼ完成。

 大型飛行機も貨客兼用の3機がほぼ完成状態だ。

 そのうち1機は俺達用で、残りは国王庁管理の軍運用。

 なお大型は更に2機を現在製造中。

 この2機は旅客メインの仕様になる予定で、これも国王庁管理で軍運用。

 まあ飛行場そのものが軍、それも海軍運用だったりするのだけれど。


 ただ軍運用といってもいかめしい感じは全く無い。

 常駐している軍や国王庁の人間の多数が技術系の魔法使い。

 ジゴゼンさんもほぼ常駐しているし他にアキナ先輩やユキ先輩、ヨーコ先輩の知り合いもいたりする。

 ジゴゼンさんをはじめとする国王庁や軍の工作系魔法使いは流石プロだ。

 実際に制作現場を見てみると俺達はまだまだなんだと気づかされる。

 個人的にシモンさんに見習ってほしいのは『耐久性と整備性を考えた簡潔な構造に最適化する事』だな。

 シモンさんがいじるとどうしても機械が複雑化してしまうから。

 実用機械はピタゴラ装置じゃない。


 今は約1名を除いては大人も学生組も割とのんびりした雰囲気。

 俺もやることがほぼ終わったので次の飛行機エンジン案をシモンさんやキーンさんとのんびり練っている感じだ。

 今度はターボプロップではなくターボファンエンジン。

 より高速でかつ燃費も留意してという事でだ。

 今のターボプロップエンジンを基に改良するのでそこまで大変な作業でも無い。

 なお1名だけ忙しいのはタカモさんだ。

 何せ彼女以外作れない素材が色々あって、そのどれもが割と重要だったりする。

「アルミを分離する植物とか作れませんか」

「流石に無理ですね」

 そんな訳でタカモさんは今日も素材を魔法精錬中。


 さて、今はとりあえず午後の休憩タイム。

 他の皆さんを含みのんびりお茶をしながら会話中だ。

「飛行場はもうほとんど完成に見えますけれど、あと何をするんですか」

「飛行機の離着陸に最適な構造にしたいですからね。石灰石でぎりぎりまで平滑化して、その後に摩擦を上げるために細かい溝を掘る予定です。その上に飛行機からわかるように標識や図を書き込んでようやく完成です」

 大体の事はジゴゼンさんが教えてくれる。

 それにしても何か俺の前世にあった飛行場を見てきたような細工をする模様。

 その辺までは俺も頭が回らなかったな。

 運用とか利便性とかを考えるとその辺まで考え付くのだろうか。


「早く完成して飛行機で出かけられる日が楽しみなのだ」

「でも飛行場があるところまでしか行けないぞ」

「別に移動は魔法を使えるからそれでいいのだ。空を飛ぶのが楽しいのだ」

 まあ確かにそうだな。

 国内なら魔力回復・増強剤を使えばほぼ何処でも魔法移動できるし。

「でもそのうちブーンゴやハーリマにも行けるようになるかもしれませんよ。少なくともここのスタッフはそのつもりでやっていますから」

 何だとジゴゼンさん!

 でもあの大型船の時もそんな話が出ていたな。


「ブーンゴやハーリマにも空港を作るんですか」

「勿論ある程度国内で飛行実績を作ってからですけれどね。できるだけ早い段階でブーンゴのオイター付近やハーリマのコベー付近に飛行場を作って貰う予定です。何なら魔法工兵隊をあの大型船で派遣してもいいですし。ブーンゴへの根回しは既に始まっている筈です。既にブーンゴへはあの超小型飛行機も1機行っている筈です」

 えっ。

「そこにあるのと同じ超小型機ですか」

「ええ。飛行機がどんなものか実際に見て頂いた方が早いですから。勿論構造その他は蒸気機関と同じく完全に隠蔽されていますけれどね。なかなか好評だったそうですよ。ブーンゴの国王が乗りたがって大変だったとか」

 確かにこの超小型機、小回りがきいて燃費もそこまで悪くなく、しかもいざという時は魔法で脱出可能。

 飛行機とは何かの見本としてもちょうどいい。

 でもまさか国外まで行っているとは思わなかった。

 国内の他の飛行場へ何機か持って行ったのは知っていたけれど。

 勢いで作ってしまった機体だけれど色々と役立っているようだ。


 それにしてもそんなものまで船で持って行ったのか。

「あの大型の船、どれくらい行き来しているんですか」

「今はエビゾ・ノとブーンゴのベフの間を3隻でそれぞれ月に2往復ずつしています。あと新造した2隻はニ・ホとハーリマのアカッシを同じく月に2往復ずつしています。商人からの委託交易品等も大量に載せてかなり順調なようです。好評なのでウージナでは更に大きな改良型の船を作っている筈ですよ」

 おいおい。

 俺達が学校や研究室にいる間も世界情勢は動いているようだ。

 この世界はこういった動きは早いよな。

 前世の世界なら数年以上かかる変化を月単位でやってしまう印象だ。

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