第255話 ストーンハンターへの道
今日の午前中だけで俺の魔力は大分成長したのではないかと思う。
魔力の極限を越えた状態で鑑定魔法を使いまくったのだ。
使いまくったというか使わされたというか。
なぜ極限を越えたという表現をしているかというと、実際に俺の魔力の限界を超えて魔法を使わされたからだ。
タカモさん達が作ったあの魔力回復薬。
あれの試作品を使ってまで魔力増強&回復させられたからである。
「結構綺麗な石が落ちているんですね。全然気づきませんでした」
「大きいのはあまり無いけれどね。でも数は思ったよりあったわ」
落ちていたのは主に水晶だ。
透明なものがほとんどだが紫水晶や煙水晶、黄水晶も混じっている。
レア品として薄い青色や薄いオレンジ色の混じったトパーズもいくつか。
水晶の大きい物は親指くらい。
小さい物でも小指の爪程度のものだ。
それ以下は俺も面倒だから拾わなかった。
それでも数は百個に近い数十個はある。
「でもミタキさん、大丈夫ですか?」
タカモさんが心配して声をかけてくれた。
気分としては実際大丈夫ではない。
ドーピングしながら魔法を酷使したのだ。
もう疲れたふらふらだ勘弁してくれ。
「健康状態には影響ないみたいよ。疲労は感じていると思うけれど」
ミド・リーが無情にも健康状態を診断してくれる。
こいつの判断は悲しい事にきっと正しい。
生物系魔法の天才なのだ、残念ながら。
「ミタキ君が回復したらまた探しに来ましょう。ここでしたら魔獣退治のついでに来るのも簡単ですから」
確かに一番多く見つかったのは川が堰堤のあるため池に出たあたりの広い場所。
つまり魔獣討伐場所の目と鼻の先である。
でも夜もこれをやるかと思うとぞっとしない。
頼む勘弁してくれ本当に。
「ならミタキ君の鑑定魔法用の大型の杖も作らないとね」
シモンさん作らなくていいそんなもの。
まあ言っても無駄だろうけれど。
「ならとりあえず帰って急いで買い物して昼食、その後はアクセサリー作りだな。この石で結構いい感じのが作れそうだ」
「その前に全員で石のトレードですね」
「賛成。女子全員で何かゲームをして順番を決めよう!」
俺はもう何も考える気力が無い。
早く部屋に戻って休みたい……
◇◇◇
そんな訳でさっさと自分の部屋に戻ってダウン。
でもちょっとだけ眠れたかなと思ったところで。
「もうすぐ魔獣討伐の時間よ。起きて」
ミド・リーからの伝達魔法で起こされる。
見ると部屋の窓からの明かりがすこし暗くなっている。
思った以上にぐっすり寝ていたようだ。
「昼も食べていないから少しだけ間食用意しておいたわよ。あとシモンさんが特製の杖を作ってくれたからお礼言っておいて」
ミド・リーが用意してくれた食べ物というのはちょっとぞっとしない。
それに今の特製の杖というところに微妙なニュアンスがあったような気もする。
色々不安におびえながら清拭魔法をかけさっぱりさせてから個室を出る。
リビングには折りたたまれたアンテナ型大型魔法杖とサンドイッチが待っていた。
「あ、やっと起きてきた」
「いろいろ綺麗なアクセサリーが出来たぞ。石の他にタカモさんが回収した貴金属もほとんど使ってしまったけれどな」
これ見よがしという感じにブローチだのネックレスだのが並んでいる。
確かになかなかいい出来だなとおもったりもする。
特に小さい紫水晶でブドウを象ったブローチなんていい出来だ。
ブドウの房が水晶の小粒で示され、上に行くほど青い石になっている。
「ミタキが食べたら魔獣狩りに行くから早く食べてね」
アクセサリーを見る事でごまかしていた現実に引き戻された。
ミド・リー作のものを食べなければならないのか。
ちょい気が重い。
でも腹が減っているのも事実なのだ。
だから仕方なくサンドイッチを食べる。
おっと、味は普通のハム&野菜&チーズのサンドイッチだ。
ちょっとぴりっと辛みと苦みのある菜っ葉がよくあっている。
どこもおかしな仕掛けはない。
普通に美味しいぞ、何故だ。
気になったので鑑定魔法をかけてみた。
『ハム&野菜&チーズのサンドイッチ。ただし野菜は魔力増強用に改良したクレソン亜種の葉』
おいミド・リー、また俺をこき使う気か!
見ると奴はにやりと笑う。
「この薬もまた増産したしね。ミタキが3回倒れても大丈夫な位魔力回復・増強食品ができるわよ」
おいおい。
「ミタキ君用の杖も特別仕様で作ったからさ。楽しみにしていてね」
シモンさんの言葉に気になる部分が。
「その特別仕様というのは何なんだ?」
「今日使ってみればわかるよ」
シモンさん、何を仕組んだんだ。
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