第221話 こっちもやっぱり好評過ぎた

 何故なんだー!!!

 そう思いながら俺は模型飛行機の片づけにかかる。

 昨日も模型飛行機を飛ばしたし、充分質疑応答の時間もとった筈だった。

 でも何故か今日も見物人が多いし質問も多かった。

 むしろ昨日より色々多かった気がする。

 明日こそはきっと楽だよな。

 そう願いつつ飛行機を発射台に収納して教室へ。


 教室の方も相変わらずだ。

 展示室にいる会員はシンハだけ。

 でも客はそこそこいる。

「どうだ、こっちは」

 シンハ君はふっと肩をすくめてみせた。

「見た通り。中はアキナ先輩とユキ先輩、あとシモンさんが幻灯機と元絵の様子を見ている。フル回転で紙が痛みそうだから毎回点検しているんだと。あとフルエとタカス、ミド・リーとフールイ先輩で列の管理。ナカさんとヨーコ先輩は学校本部に他の部屋も借りられないか交渉に行っている」

「確かにもっと広い部屋で人数入れて回したほうがいいよな」

「でもこれだけ人数まわしたら明日こそは空くよなきっと」

 いや待てシンハ君。

 その台詞はフラグだきっと。


「あとミタキが戻ったらこれを読んでおけってさ。この内容でいいかどうか後に会議をするっていうから」

 シンハ君から書類が入った袋を渡される。

 何だろう。

 出して開いてみて……あれ?

「読めないぞこれ」

 何か文字が書いてあるのはわかる。

 でも認識できないのだ。

「あ、悪い悪い。認証しないと読めないんだった」

 なるほど、ジゴゼンさんの魔法がかけてある訳か。

 とすると何か権利関係の書類かな。

 いずれにせよこれなら落としても横から見られても安全だ。

 この教室には心理魔法の効果が出ないようにもしてあるし。

 ちなみにこれはナカさんの魔法。

 あの人は何種類の魔法を持っているんだろう。


 早速読んでみてすぐ理解する。

 これは蒸気機関一般と蒸気自動車に関する事についての権利書だ。

 契約内容は魔法杖や魔道具の時とほぼ同じ。

 金額は蒸気機関一般と蒸気自動車をあわせた契約代金が正金貨1206,000万円

 蒸気機関一式毎に代価の1割か小銀貨3枚3,000円のいずれか高い金額。

 蒸気自動車が同じく代価の1割か小金貨1枚10万円の高い方だ。

 期間は10年間となる。

 別途として以前軍の蒸気ボートを修正した分で正金貨10枚500万円

 更に別紙でタイヤについての記載もある。

 この研究会で使う分には資材として無料。

 それ以外で自転車等に取り付けて販売する場合は別途向こうの研究室と相談ということになるようだ。


「問題ないんじゃないか、これで」

「でも研究会名義で本当にいいのかよ。あれってほとんどミタキとシモンさんで作っているだろ」

「いや、シンハやヨーコ先輩がいないとどうにもならないこともあるんだ」

「何かシモンさんもそんな事を言っていたけれどさ。思い当たる事は無いぞ」

「わからなくていい。でも確かにあったんだ」

「俺には何かよくわからないけれどな」

 わからなくていい。

 あの時は正直人間として負けたと思った。

「あとこれは誰に渡せばいい?」

「ミタキで最後だな。だからアキナ先輩に返せばいいだろ」


 ちょうど向こうで動画が終わったらしい。

 人がごっそり出てくる。

 今のうちにアキナ先輩に渡そうかな。

 でもどうせ先輩も作業中だろう。

 なのでとりあえず書類入り袋は自分の肩掛け鞄にしまっておく。


「ミタキ戻った?」

 動画の部屋からミド・リーが顔を出した。

「ああ。ついさっき戻って書類を読んだところ」

「それじゃ列の人数数えてくれない。そろそろ列を切らないと3時半に終われないような気がするから」

「わかった」

 ちょうど2時の鐘が鳴った。

 午後3時半で終わりなら8分で1回転として11回転ちょっと。

 11回転なら440人、12回転なら480人だな。


「じゃちょっと数えてくる」

「ああ、こっちの店番はやっておくからさ」

 そんな訳で俺は廊下へ。

 確かに並びまくっているなこれは。

 2人ずつの列が延々と続いている。

 これは12回でも足りないかな。

 そう思いつつ俺は鑑定魔法を起動した。

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