第218話 展示品等確認中

 何故女子だけなのだろう。

 そう俺が思ったのがわかったのだろうか。

 すぐにターカノさんから説明が入る。

「あちらは女子だけで、しかも内気な子が多いんです。それに私が移動を受け持つので3人が限度ですね。こちらには皆さん移動魔道具がありますけれど、あれはまだ公に出来ませんから。ですので最初は念のため女子だけで3人ずつでお願いしようと思います」

 なるほど。


「向こうが何処の学校なのかは秘密なのですか」

「あちらはここと違って存在をオープンにしていませんので。何処の研究室で誰が所属しているか等も秘密にしています」

 まあその辺は色々事情があるのだろう。

 本当は俺自身が行きたかったが仕方ない。

 俺の分はシモンさんかアキナ先輩に任せるとしよう。


「でも本当は学園祭中に色々見て頂いた方が宜しいのではないでしょうか。展示しているものでしたら見て頂いても大丈夫ですから」

 これはユキ先輩だ。

 確かにその方が説明は楽だなと思う。

 実際にこんなものを作っていますと説明できるし。

 デメリットは俺達がいるのがウージナの学園だとわかってしまう事。

 でも俺達は元々学園祭で活動を公にしているのだ。

 今更その辺を秘密にする必要も無いだろう。

「そうだな。うちの方は問題ない」

 ヨーコ先輩もそう思ったようだ。


「もしよろしければお言葉に甘えさせていただいて宜しいでしょうか。期日は明後日以降で、授業終了後の午後2時過ぎくらいになると思います。勿論あちらの研究室と相談しての事になりますけれど」

「こちらの方はそれで構いませんわ。その方がこちらが作成したり欲したりしているものについて説明がしやすいですから」

「それではよろしくお願いいたします。またこちらに来るときは連絡させていただきます」

 アキナ先輩とターカノさんのやりとりでこの話は終わる。


「あとはそれぞれの発表物についてです。記述魔法を使ったものについては特にこちらで何か付け足すことも問題提起もありません。あれはタカスさんの独自魔法ですし、他に使えるのは例の魔道具を持った人間だけでしょうから。

 ただあの機能性下着は色々便利かもしれません。今は快適方向に魔力を使っていますが強化とか治療とか体力回復等用があるとまた別の使用方法等があると思います。その辺が出来ましたら製品化して販売後でいいので連絡をお願いします」

 ジゴゼンさんの台詞に一同頷く。

 そう言われればそんな使い方もできるんだな。


「自転車と名付けられた2種類の乗り物についてはタイヤの件がありますので向こうの研究室と相談してからになるでしょう。ですのでこれも特に今申し上げる事は無いと思います」

 確かにそうだな。

 となると残りはアニメ上映と俺の模型飛行機だ。


「あの絵が動く機械についてお聞きしたいのですが、あれはどのような構造になっているのでしょうか。出来れば教えて頂きたいのです」

 あれは逆鑑定魔法と隠蔽魔法で厳重に隠しておいたからな。

 何せ理屈は簡単すぎるくらい簡単だから。

「それについては現物を持ってきた方が早そうですね」

「僕が持ってくるよ」

 シモンさんが姿を消した。

 移動用魔道具を身に着けていたようだ。

 すぐに幻灯機一式を抱えて戻ってくる。

「じゃあナカさんとミタキ君、それぞれ解除して」

 そんな訳で俺は逆鑑定魔法を解除。


 ジゴゼンさんは目を細めてじっくり観察した後口を開く。

「なかなか面白い作りですね。

 絵が動く部分は

 ① 強力な光源をシャッターの裏に用意して

 ② 絵の描いてある紙を高速で送り出して

 ③ 紙が全部出てくると同時にシャッターを開いて光を絵に当てる

の繰り返しですか。

 でもその後の絵を映し出す部分に知らない技術が入っています。鏡は以前ここで開発したあのよく見えるものでしょう。でもその後にあるガラス製のものについては知られていないもののようです」

 凸レンズと凹レンズだな。

 この説明は俺の担当になる。

「それでは紙に書いて説明します」

 凸レンズと凹レンズの仕組みと効果について説明する。


「これもやはり新しい技術ですね。他にも色々応用出来そうです」

「例えば望遠鏡と言って遠くのものを見る装置等も作ることが出来ます。また小さい物を見る装置等も作れますね」

 そう言えば作ってみてもよかったな。

 飛行機に集中していたのでその辺気づかなかった。

「それって仕組みは簡単かな」

 シモンさんが聞いてきた。

「簡単だよ。望遠鏡はこんな感じ。顕微鏡という小さいものを見るものについてはこんな感じ。レンズの倍率とかは調節しないといけないけれど」

 ささっと図を描いて説明。

「ならちょいっと試作してみるね」

 シモンさんの工作魔法は俺と違ってガラスも自由自在に加工可能。

 そんな訳であっさり鉄製望遠鏡と手持ち型小型顕微鏡が完成する。

 鑑定魔法で見ると……そこそこ使えるものになっていた。

 流石シモンさんだ。


「面白いですね。遠くのものが近くに見えるなんて」

「これですと百半指0.1mmの物も目で見て確認出来ます」

 ターカノさんとジゴゼンさんが確認している中でミド・リーが俺をつつく。

「こんな物が出来るなら作っておけばよかったじゃない」

「ごめんごめん。幻灯機と飛行機に頭が行っていてさ。レンズの応用については全く考えていなかった」

 単にそれだけの理由である。

 でもこれ、明日から展示してみてもいいな。

 何なら熱気球に望遠鏡を備え付けてもいい。

 よし、シモンさんに後で頼んでみよう。

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