第200話 午後の作業

 さて、やるべき作業は多いけれど何からやろうか。

 ちょっと考えた結果、原油の精製からやる事にした。

 エンジンを試作してもすぐ試せないのは悲しいし。

 持って来た原油の状態を見てみると少しずつ層状になっている。

 ただ水和物の層は何とかしないと。

 一度100度以上に熱してバラしてやった方がいいな。

 まずは容器をいくつか作って、その中に成分毎に入れる事を考える。


 方法論は簡単。

 温度をあげていって揮発したものを別のタンクに入れて冷却する。

 その繰り返しだ。

 具体的にはこんな感じ。

  ① 収納容器を作って中を思い切り冷やす。

  ② 原油の入った缶と圧力容器に工作系魔法で鉄のパイプを通す。

  ③ 原油の入った缶の中の温度を少しずつあげていく。

 この手順で温度を変えて分けていく訳だ。

 水は温度を変化させて取り出せばいい。

 100度で沸騰して0度で凍るものがきっと水だ。

 なお俺自身の鑑定魔法では温度が数値で判定できる。

 この辺は前世の知識のおかげだ。

 この世界の人には何度ととか伝える事は出来ないけれど。


 そんな訳で大雑把に4つの缶に成分を分けた。

 それぞれは、

  ○ 天然ガス

  ○ ガソリン系

  ○ 灯油系

  ○ 蒸発しにくいの

という感じだ。

 なお分類は俺の鑑定魔法による。

 なお水はガソリン系の処に混じったが、0度に冷やすと水だけ固形化したので無事取り出せた。


「こうやってみると鑑定魔法と工作系魔法の組み合わせって便利だよね。出来れば僕にも鑑定魔法が欲しいけれど出来ないかな」

 そんな相談をシモンさんから受けたのでここで一休み。

 鑑定魔法用の杖を作ってみる。

 杖の長さを変えていくと57cmで反応した。

 今までの魔法杖の基本長では一番短い。

 長い方から調べていったので凄く手間がかかった。

 でも作るときは短い方がやりやすいよな。

 そう自分を慰めて小型の鑑定魔道具を作る。

 今まで何度もやった工程だから計算も工作も慣れたもの。

 半時間で何とか魔道具の構造部分が完成した。

「ここからはシモンさんが自分用に作った方が早いだろ」

「ありがとう。早速使ってみるね」

 そう言った時には既に魔道具は緑色布製のポーチに姿を変えている。

 シモンさんの工作系魔法はチートレベルとしか言えない。


 さて次はパルスジェットエンジンの試作かな。

 そう思ったところで4時の鐘が鳴った。

 そろそろ終わりにした方がいいようだ。


 ◇◇◇


 帰りはいつも通りシンハ君やミド・リーと一緒だ。

「自由に空を飛べる機械か。出来たら面白いよな」

「でも実際に人を乗せて飛ぶには色々準備が必要だからさ。燃料をたくさん作って、飛ばすための広い場所を確保して」

「広い場所ってどれくらい?」

 そう言われてちょっと考える。

 滑走路の長さってどれくらい必要なのだろう。

 小型機ならそんなに長くなくてもいいだろうけれど、一応ジェット機だしな。

1離2kmの真っ直ぐで平坦な場所があれば安心かな。色々考えると」

「そんなに必要なの?」

「実際には300600mあれば何とかなると思うけれど、何せ試作品だからさ。出来るだけ安全をみたいし」

「熱気球みたいにその場からは飛べないの」

「いろいろ手間がかかるんだ。それに燃料も俺達で作らないとさ。このままでは使えないから燃料を分別出来る装置を作る必要がある」


 考えれば考えるほど色々準備が必要だ。

 それも今まで以上に大規模に。

 飛行場を作ったり燃料精製施設を作ったり。

 しかも飛行機のエンジンは煩いしなあ。

 領主クラスの協力が必要だろう。

 まあ最悪殿下の力を借りればいいのだろうけれど。

 そこまで考えたところで、ふと俺はある事に気づいた。


「ところでミド・リー。そのピンクのハンドバッグはひょっとして」

 ピンク色のかわいらしいハンドバッグだ。

「そうそう。例のアレよ。ミタキが出かけている間にやっと出来たの。どう、可愛いでしょ」

 アレとは移動魔道具が入ったバッグだ。

 確かにデザインも可愛らしく出来ている。

 中身を押さえるカバー部分とか、止め金具なんかも。

「まあ実際は私一人ではどうしても出来なくてユキ先輩の手を借りたんだけれどね。紙で原寸大の模型を作って貰って、それを前に置いて作ったの」

 なるほど。

 ユキ先輩はそういう事も得意な訳か。

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