第143話 信じてくれ
朝9時過ぎに現地こと姉の店の前で集合。
開店当時ほどではないけれど、相変わらずこの店には列が出来るから。
並びながらどれをいくつ買うか作戦会議を実施。
一応最新のパンフレットを朝方もらっておいたので、それを見ながらだ。
「正銀貨2枚あればホールを全部買えるよね」
「無理だと思うぞ。ここに無いメニューも作っている筈だしさ」
「何それずるい。でも
「餡子もの希望」
そんな感じでフルエさん含めて女性陣は盛り上がっている。
「栗とおいもちゃんケーキって何なのだ?」
「栗とイモのクリームが上にかかっているの。美味しいよ」
「それはホールで買うから問題無い」
「プリンは絶対買った方がいいぞ。出来ればスタンダードとクリーミー両方だ」
「どんな物なのだ?」
「表現できないよね、まあ食べて貰うしか」
「私は羊羹押し」
「豆大福もいいですわ」
全くもって話が止まらない。
一方で俺達男3人は手持ち無沙汰だ。
「ここへはよく来るんですか」
「いつもは俺が朝学校に来る前に買って研究室で皆で食べる。ここまで全員で買いに来るのはまだ2回目」
「学校がある日は寄っても売れ切れているんだよな。残っていればあんパンとか美味しいけれど」
そう、相変わらずお菓子類は午前中に売り切れてしまうそうだ。
特に生ケーキはあっという間らしい。
姉もその辺は問題点として考えてはいる。
「これでも人を増やして前より数を作っているらしいけれどさ。何せ今までに無いものが多くてさ、焼き菓子とパン以外はだいたい昼までには無くなってしまうんだ」
店の二階を改装したりして工房部分を増やしてもいるのだ。
それでもまだ生産が追いつかないレベルなだけで。
「先輩達は何を買うんですか」
「俺達はもう
「俺もそうします。フルエの顔が本気だ」
そんな事を話していると開店時間だ。
列が動き始める。
ちなみに俺達は10番目位。
前に貴族さんのハウスメイドらしい女性が4組程いるけれど、まあ大丈夫だろう。
◇◇◇
ホールケーキがベイクドチーズケーキ、レアチーズケーキ、紅茶が香るシフォンケーキクリームデコ済、イチゴのクリームケーキ、
それに人数分あるのがイチゴ入り豆大福、羊羹、生ドラ、瓶入りプリン3種、
更にパウンドケーキ2種とクッキー各種まで。
どう考えても絶対予算オーバーしているだろう、これは!
でもつまりはまあその甘い物尽くしという訳だ。
こんなに甘い物ばかりで皆さん甘い物が嫌いにならないのだろうか。
俺はケーキ2カットと豆大福1個でもう充分なのだけれど。
シンハ君は元々無茶苦茶食べるが、タカス君もなかなか食べる。
確かに身長はかなり高いが俺よりガリガリに痩せているのに。
なお俺の分の残りは洋菓子はミド・リー、和菓子系はフールイ先輩が食べている。
これは公平なくじ引きで正当に決まった権利らしい。
最初から俺が残すの前提でくじ引きするのってどうよ。
まあいいけれどさ。
「こんな贅沢な食事は初めてなのだ。胃袋に限界があるのが……そうだタカス、食べ過ぎ魔法頼むのだ」
「了解。食べ過ぎ用、対象フルエ、
ミド・リーがその台詞に反応する。
「その魔法はどんな効果なの?」
「胃の消化を加速すると同時に内容物を次の場所へ少しずつ移動させる魔法です」
そんな魔法まで用意してあるのか。
色々便利な魔法だな、それは。
「食べ過ぎて満腹になったら水着に着替えて上の浴槽で伸びるといいぞ。快適だし楽になるのが早い気がする」
「それは初耳なのだ。でも身体を伸ばして入れる浴槽そのものが初体験なのだ」
「ぬるめにして窓を開けておくと外の風が入って気持ちいいぞ。私のお勧めだ」
そんな目の毒をお勧めしないでくれ。
「あれは本来は蒸気機関で揚水する装置の見本では?」
真面目なタカス君は俺の説明通りにあれを受け取ったようだ。
「俺はそのつもりなんだ。俺はな」
「でも最初からお風呂のつもりで作っているよ。元々はヨーコ先輩の家の別荘にあった大きいお風呂がきっかけだね」
「そうそう。あと蒸気蒸し風呂にぎりぎりまで入ってからシャワーを浴びるのも気持ちいいぞ」
あ、タカス君の俺を見る目が少し変わった気がする。
違うんだタカス君。
俺がそれを望んだ訳じゃないんだ。
本当なんだ信じてくれ!
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