第16章 新人到来
第138話 新入生登場
お茶菓子はロールケーキを2本用意した。
今日はやや暑いくらいなので冷たい紅茶も準備済み。
本日は最初から風呂という事も無く、皆さん鏡のデザインだの精油作りだの真面目にやっている。
俺も例の魔法杖の研究を続行中だ。
そうやって待ち構えているのだけれど、新入生はまだ来ない。
「今日は来ないのかな」
「どうでしょうか。私は来ると思っていますけれど」
「来るとすればヨーコ先輩達が来た後だね。2人の動きでここの場所を確認しようと思っているのかもしれないし」
「そうですね。ところでアキナ先輩、調査結果は来ていないのですよね」
「ええ。ヨーコさんのところに来ていれば別ですけれど」
まあそんな感じ。
まだかまだかと思いつつ自分の作業なり研究なりをやっている。
「ちわー。新人もう来ている?」
ヨーコ先輩とシンハ君が現れた。
トレーニングが終了したらしい。
「まだ。でもそろそろだと思うよ」
「気配は特に感じなかったけれどな」
「そうか。模擬戦をしている時、いつもと違う視線を感じた気がするけれど」
「私は視線を無視する癖がついているからな。よくわからん」
そう言いながら鞄を置いてシャワールームへ消えていく。
言っておくがシャワールームは完全個室だ。
中で着替えも出来るシャワー付き個室が4室あるという作り。
だから別にシンハ君とヨーコ先輩が連れ立って行っても問題は無い。
俺だと色々妄想が捗ってしまうけれどシンハ君はあまり気にしないようだし。
さて、そろそろデザートの用意をするか。
俺がキッチンへ行こうと立ち上がった処だった。
コンコンコン。
扉が間違いなくノックと思われる音を立てた。
「はいはい」
一番近くにいたシモンさんが返事して扉に向かう。
これは来たな。
「私が用意します」
ナカさんがデザートの用意を代わってくれた。
お客様の時はサーブ担当が俺では無くナカさんになるから。
ちなみにここに来たお客様は2組目。
1組目は勿論ホン・ド王子殿下ご一行だ。
「失礼します。入会希望の新入生なのです。グループ研究実践の部屋はこちらで宜しいのでしょうか」
声は女子だ。
ただ複数人いる可能性がある。
どうしようか、と背後を見たシモンさんにアキナ先輩が頷いた。
「どうぞ」
シモンさんが扉を開ける。
いたのは2人組だった。
銀髪の女子と俺以上に細くて俺以上に背が高い男子の2人。
「どうぞ、こちらでご説明させていただきますわ」
アキナ先輩が2人を会議室に案内する。
今現在この部屋にあるものは念の為逆鑑定魔法をかけてある。
だから原理や構造がバレる可能性は極めて少ないが念の為だ。
まだこの2人にここの秘密を教えていいのか判明していない。
でも国王庁の審査結果ってどうやって請求すればいいのだろうか。
「それでは皆さんも集まって下さいな」
取りあえずその声で全員が作業を中断する。
元々即時中断できるような体制だったし問題無い。
シンハ君達もすぐ来るだろう。
そんな訳で俺も会議室へ。
2人が奥のお誕生席、俺達が横の適当な席という形で座る。
すぐにナカさんがデザートとお茶を持って現れた。
空けてあるシンハ君達の席にもセットを置いて、ナカさんも着席する。
ふとある事に気づく。
ナカさん、10人分のお茶入りカップとデザート入りの皿を持って来たんだよな。
どうやって持って来たんだろう。
もっとよく見ておけば良かった。
まあでもそんな事は後にしてと。
新入生男子の方は身長180位はあるんじゃないかな。
体形はガリガリに細く、そして髪は濃い茶色のもじゃもじゃ髪。
細面で、前髪で目を隠しているのは昔のフールイ先輩と同じ。
雰囲気的には寡黙そうだが、エレキギターを持たせれば変わりそうな感じだ。
そんなものはこの世界に無いけれど。
女子の方は中肉中背。
肩までの銀髪と意思が強そうな大きい目が印象的だ。
「あと2人ほどメンバーがいますがすぐ来ると思いますわ。
さて、私は高等部1年でこの中では最年長のアキナ・ガーツカと申します。特にここには代表とかそういった存在はいませんので、とりあえず今日は私がお話の進行をさせていただきますね。
まず、よろしければお茶とお菓子をどうぞ。ウージナで昨年から流行っているものです」
???
アキナ先輩はこの2人を知っているのだろうか。
今の台詞は明らかに2人がウージナの人間でないと知っているような感じなのだ。
とすると、少なくとも片方は貴族さんなのかな。
それならばアキナ先輩が知っていてもおかしくはないから。
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