第136話 2階部分無事完成
予定通り次の週1の曜日には材料がごっそりと揃った。
なお運ぶのが大変だからか外の水路に台船を係留した状態のままである。
事務に問い合わせたら、荷物を運んだらそのまま係留しておけばいいそうだ。
後ほど業者が取りに来るとのこと。
さて今回の作業、前半戦の2階作成作業についてはほとんどの人は戦力外になる。
なにせ材料が重すぎる。
通常人では引きずって歩くことすら困難だ。
そんな訳で蒸気ボートを端に寄せ、台船を研究室内に引っ張って入れた後。
シンハ君とヨーコ先輩、それにシモンさんの3人による作業になる予定だ。
「材料は面倒だから基本積んだままでいいよ。魔法で仕上げられる部分をまず一気に造ってしまうから」
シモンさんの工作系魔法アンテナはまたもやパワーアップしている。
素子が更に増え6つになっている。
反射器も上下2つずつに増えた。
どうも簡単にパワーアップできるような構造になっている模様。
ただ見た限りでは今回のが最大サイズだ。
「まずは鉄によるフレームとその補強からいくよ」
今回購入した鋼材は長さ
それがすっと自動的に動いてボート周りの柱の上に固定された。
「先にこっちを仕上げるね、次は木製部分」
樹皮をむいて長さを揃えただけの丸太が真っ二つになったり板材になったりしながら柱なり床材なりに変形し、あるべき場所に動いていく。
それにしてもこんな魔法ってアリなんだろうか。
前からシモンさんの工作系魔法はチートだと思っていた。
でもここまで大きく重い材料も自由自在に動かせるなんてとんでもなさ過ぎる。
材料さえ揃えばシモンさんと魔法アンテナだけで家一軒建ってしまいそうだ。
あれよあれよといううちに階段まで完成。
「ふうっ、今日の僕の作業はここまでかな。浴槽とか配管。あと反対側の2階部分は明日以降だね。ちょっと魔力が足りない。鍛え足りないね、まだまだ」
「いや、これだけ出来れば充分チートだろ」
「本当ですわ」
「同意」
全くもって俺もそう思う。
「材料は全部使うまで台船に載せたままでいいですわ。終わってから事務へ連絡すればいいだけですから」
「なら次は窓ガラスつくりだね」
「その前に2階部分がどんな感じか確認しようよ」
「そうだな」
そんな訳で皆で出来たばかりの階段を上へ。
一般教室2部屋分くらいの空間が広がっていた。
床は綺麗に磨かれた純天然木仕上げ。
裸足で歩いても気持ちよさそうだ。
「ここは完成したら裸足で歩くようにする予定だよ。ただ窓ガラス入れ替えとか工事が終わるまでは面倒だから土足でいいけれどね」
そういえばそんな設計だった。
「いい場所ですね。それなりに開放感もあって」
「窓の外はどんな景色だろ」
「モトヤス川があってその向こうはウージナの街かな。窓の位置そのものは普通の2階建てよりちょっと高いから、多分見えるのは空だけじゃないか」
「だったら水着でのんびり浸かっても外から見えないですね」
「夏だとあえて水風呂にして、ここに浸かっているのもいいかも」
おいおいおい。
俺を惑わすような案を出すな。
「ここに面した窓は透明なガラスにして、あと手動で開くことも出来るようにする予定だよ。そうすれば外の風も入るしもっと気持ちいいと思う」
確かに快適そうな気がするのが悔しい。
まあ俺もシモンさんと一緒に考えたんだけどさ。
冷静になってみると色々自分の首を絞めているような……
いや、目の保養にはなると思うんだよ。
でもだからと言ってじっと見ていちゃただの変態だろう。
その辺のさじ加減が色々難しいのだ。
まあ出来てからの話だけれども。
「それでは材料をここに持って来て透明な窓ガラスつくりをしましょうか」
「了解」
それぞれ材料や道具を運びに階段をおりる。
◇◇◇
3の曜日の放課後遅く、ほぼ全ての工事が完了した。
シモンさんのチートな魔法を酷使した結果である。
熱い浴槽、ぬるめの浴槽のほか、水シャワー、そして小さいながらスチームサウナ室まである。
お湯や水は蒸気機関で上へと持ち上げられ、熱交換器で適温にあたためられる。
風呂場や浴槽そのものは木製で、かつての日本でなら北欧風と言いたくなるような仕上げ。
窓は透明で今日は青空と白い雲がよく見える。
開けると爽やかな風が中へと注く。
「明日の放課後に皆で使い勝手を試してみて、それから新人さんをお迎えですね」
「絶対自分の家より快適だよねここ。眠れるしご飯も作れるし」
「こんな浴室、うちの家にも無いな。だからわざわざあの別荘を造ったんだしさ」
「まあ論評するのは明日試してからだよね」
「楽しみ」
そんな訳で明日は水着持参だ。
何だかなあと思うが仕方ない。
ノリノリでシモンさんと色々構想を膨らませた俺自身が悪いのだ。
多分、そう、きっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます