第135話 拠点改造計画案完成

 まずは今現在の建物の構造等を俺とシモンさんで調べる。

 主に確認するのは舟の吊り上げ用の支柱の強度。

 壁や柱の構造と耐久性。

 それにシャワー室等小部屋の屋根と柱の構造だ。

 強度とか材質、劣化場所等は俺の鑑定魔法で調査。

 補強すべき箇所や新たに組む構造、必要な資材等をシモンさんが見て確認する。


 調べてメモった後は俺とシモンさんで概念図の作成だ。

「全部を2階建てにすると不便だから、手前部分は今のままでいいよね」

「それでいいと思う。高さが必要なものを造る可能性もあるし、気球を吊る場所も必要だしさ」

「舟用の支柱は全部使えるね。あとはいくつか筋交を入れればいいかな」

「そうだな。浴槽とか重量物は基本的に舟用の支柱で支えれば大丈夫だろ」

「あと上の窓ガラスは全部透明なガラスに変えようよ。のぞかれる心配も無いしその方が明るくなるよきっと」

「そうだな。でも直射日光が入るとまぶしいからその辺は角度と場所を考えよう。全部透明なガラスにすると造るのが面倒だしさ」


 まずい、この作業が結構楽しい。

 俺自身は仮にも学校の研究室に展望風呂を増設するなんて問題だと思うのだ。

 でもこうやって案を考えて設計したりする作業は無茶苦茶楽しい。

 光の加減や費用の事も考えつつ色々考える。

 何とかデザートの時間までには案がまとまった。

 ヨーコ先輩とシンハ君も含めて全員揃った処で発表と確認を開始する。

 なお今日のお茶菓子は生どらだ。


「なるほど、ボートの上部分やシャワー室・トイレ等の上を有効活用する訳か」

「ボートの上は基本的にお風呂の場所にするよ。着替える場所なんかも造ってさ。そうすれば見晴らしもいいし、他から見える事も無いしね。

 あとは今ある小部屋の上部分を活用する感じかな」

 2階を造るのは蒸気ボートの上部分と、シャワー室や仮眠室の上の空いている部分だけにした。

 研究室内が暗くならないように、かつ今の広さの感覚を損なわないように。

 更に利便性等も考えて、作業場所は基本的に今と同じにした。

 要は邪魔ものだけを上に逃がした感じだ。


「上のガラスを透明にするのは賛成ですわ」

「これなら下もあまり暗くならないね。強いて言えば右奥くらいだけれど、あそこも一応窓はあるし困るほど暗くはならないと思う」

「資材や今すぐ使わない物を置く場所が出来るのはいいと思います」

「展望風呂、気持ちよさそう」

 案は概ね好評のようだ。


「それで材料はどれくらい必要でしょうか」

「ガラスの材料はまだまだたくさんあるからね。必要なのは柱の強化用の鉄と2階の床になる木材かな。手すりとか階段なんかも含めて、

 ○ 長さ2腕4mの標準丸太が35本

 ○ 鉄が180重1.08t

という処だね」

 鉄が結構かかるな。

 俺はそう思ったのだけれど。

「それくらいなら予算で何とかなります」

 あっさりナカさんの許可が下りた。


「なら注文をかけて届いたらすぐに改築だね」

「この時期だとどれくらいで資材が届くかな」

「今なら3日もあれば届くよ。木材も鉄材も倉庫街にあると思うしね。何なら台船ごと研究室の外につけてもらえれば、そのまま中に入れて作業できるし。帰りに事務室寄って注文票を出しておくよ」

 学校内、それも研究院に入れる業者は指定業者だけだ。

 そしてその辺の注文は事務室で一括して受付している。


「新人さんが来るまでに間に合うかな」

「来るとすればおそらく来週5の曜日以降ですわ」

「何故かな」

「魔術学会の分科会が第1研究棟の大教室で開催されますから」

 なるほど。

 学会経由で通行許可証を請求してもいいし、用済みの通行許可証を回収してもいい。

 いずれにせよ通行許可証を手に入れやすい日という訳だ。


「でも通行許可証を手に入れてすぐは難しくないですか。通行証を手に入れた後、僕らの誰かを追跡する等した後でないと」

「学会は朝からやっていますわ。ですから放課後までに通行許可証を手に入れられればその足で確認することも可能だと思われます。むしろ通行許可証の使用期限を考えたらそうすると思いませんか。追跡そのものは1階の廊下と2階の廊下をうまく使えば難しくはありませんし」

 そうか、通行証の期限を考えるとその日のうちが一番やりやすいのか。

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