第14話 夢なら……
一体、なにが起きたのか。
まるで、理解が出来なかった。
見えてはいた。
体力尽き果て、朦朧とする、霞む視界の中に、見えてはいた。
だけど、理解が出来なかった。
だって、おかしいじゃないか。
嘘だ、これは。
きっと、疲弊した意識が見せた幻覚だ。
この、静まり返った、凍り付いた空間も。
戦いを中断して、唖然呆然と立ち尽くしている、カズミちゃんたちの姿も。
でも……
それじゃあ……
霞む、ぼやける、アサキの視界。
生命活動をしていることが奇跡であるとしか思えない、アサキの身体。
剣で胸を突き通されて、壁に
両腕を失って、片足もほとんどもげかけている。
胸も、腹も、縦横斜め無数に走る深い傷。
血みどろだ。
身体も、顔も。
がくり項垂れる顔の、前髪に半分隠れているが、目が片方、ない。
剣で突かれて、潰されたのだ。
壁に磔された眼下に、残る片目が捉えているのは……
かすみながらも、映っているのは……
二人の、男女。
アサキの義父母、
そこから離れて、ごろり転がっている、二つの……
「さあ、直視するがいい。きみの招いた、素晴らしい結果を」
白銀の魔法使い
アサキの、潰されていない方の目が、大きく見開かれ、瞳が微かに震えている。
胸を刺し貫かれ、壁に打ち付けられ、血に塗れたぐちゃぐちゃの顔、ボロ雑巾よりも酷い有様で、至垂が嬉しそうに指し示しているものを、震えながら見つめている。
現実……なの、か、
これは、
わたしの……
……夢、では、
夢なら……
「あ……ああ……」
雑音にまみれた、掠れた声が漏れた。
血みどろ、ぐちゃぐちゃの、顔、口から。
そのまま、それから、どれだけの時が過ぎたであろうか。
不意に、潰されていない方の目が、より大きく、飛び出しそうなほどに見開かれていた。
それ以上、張り裂けんばかり大きく口が開いていた。
「うわあああああああ!」
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