あとがき

※以下、本作【人形劇】・早河シリーズ全体のネタバレが含まれます。シリーズ本編未読の方はご注意ください。

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 早河シリーズは序章【白昼夢】からスタートし、第一幕【影法師】からシリーズ本編が開幕、本編の合間に【白昼夢 スピンオフ】、【失楽園】、短編集【夏物語】を挟み、この最終幕で本編は完結を迎えました。


まだ本編しか読んでいませんという方は【白昼夢 スピンオフ】をご覧いただくと、早河シリーズの世界に再び旅立てると思います✨


 最終幕ではこれまでに本編に登場したキャラクター達が大集合オールスター感謝祭☆な雰囲気で登場人物がとてつもなく多い。

いやー、大変でした。なんでこんな大変な作品を作ってしまったんだろう。苦笑

あとがきに書きたいことがありすぎて長文になりそうなので、見所ポイントごとに綴っていきます。


         *


▼収束のビターエンド


 物語のメインは貴嶋の天地創造計画による最悪の三日間の早河vs貴嶋とそれを取り巻く人々。旧約聖書の天地創造のキーワードは第一幕【影法師】から出ていましたね。


12月9日→第二章~第四章

12月10日→第四章~第五章

12月11日→第五章~第六章


1日の流れを細かく描いてそれぞれのキャラの見せ場を作ろうとするとページ数もかさむかさむ💧

第六章までの構成は初めてですね。いやでもね、今後にお届け予定の完結編だとこれが第七章まであるんですよね(小声……)


 早河シリーズは早河vs貴嶋を軸とした群像劇のようなものですね。メインは早河と貴嶋の対決ですが、本作は貴嶋vs莉央にもなっていて。


 莉央の死に納得がいかない、この終わり方は好きではないと思った方もいらっしゃると思います。好みは人それぞれですからね。


ただ、莉央の最期(貴嶋を裏切り殺される)はキャラクター構想の初期段階で決めていました。

手錠をかけられて連行され、刑務所暮らしをする莉央の姿が私の中でイメージできなかったんです。それはなんか私の書きたい莉央とは違うよなぁって。

莉央らしい最期とは、を考えた結果の結末です。


莉央の本格的な登場となる第三幕【堕天使】では、莉央は兄の俊哉を殺すことを究極の愛情表現としました。同じように貴嶋も莉央を殺すことで彼女を永遠に自分だけのものにしてしまいましたね。

私は意味のない悲劇的な末路は陳腐な気がして好きではないので、『キャラクターの死』にもそれ相応の意味を持たせられるよう努めました。


 第四章(4-3)にある「一番大切な人だから自分が悪者になっても嘘をつき続けて欺き通す」この莉央のセリフが後の裏切りの伏線です。


私の物語では罪を犯した人間は何らかの形で裁かれています。犯罪者をハッピーエンドにはさせません。

莉央もやはり殺人犯、これが私なりの莉央への最善の裁きと解放でした。


 早河シリーズは何エンドなのかと考えましたが早河の目的は達成できたのでバッドエンドではない、でも莉央(敵方の善意)の犠牲と引き換えの目的達成はハッピーエンドとも言い難い、ほろ苦く切ないビターエンドがこのシリーズには似合うのかもしれません。


         *


▼Day dream Love story


 忘れてはいけない美月×佐藤(三浦)サイドの物語。この二人の物語は美月の母親の物語【Dearest】から始まり【白昼夢】に続き、最終幕【人形劇】まで繋がります。


まさかの佐藤と美月の母の結恵が会っちゃった展開。もしも結恵に【Dearest】の過去がなかった場合、常識的に考えると彼女は佐藤には会おうとはしなかったでしょうし警察に通報していたかもしれませんね。

娘の心を傷付けた男ですから……母親の立場としては複雑でしょう。【Dearest】があったからこその展開です。


 最終幕はほんのり三浦に心揺らぐ美月と美月に正体を明かしたいけど明かせない佐藤(三浦)とのじれったい場面が多いですね。


美月にしてみれば佐藤と三浦は別人。佐藤と似ているけど違う人。だから好きにならない、好きになっちゃいけない。

やっぱり一番好きな人は隼人。でも三浦に佐藤を重ねて葛藤して。


佐藤も美月と一緒にいたくて触れたくて、その葛藤の嵐をあえて禁欲的に描きました。

触れたいけど触れてはいけない、抱き締めはしてもそれ以上はできない、歯止めをかける禁欲的でプラトニックな愛が本作での美月と佐藤の関係。


 白昼夢から描いてきたこの二人の関係は今後どうなるのでしょう?

早河となぎさ、主人公組の恋物語はハッピーエンドを迎えましたが白昼夢組の美月、佐藤、隼人の三角関係の恋物語はどこに向かうのか?

佐藤と結恵の約束は〈美月が大人になるまでは美月の前に現れない〉

美月が大人になった時には……?


 佐藤さんは最終幕にも色々と意味深な謎を残してくれました。

彼の行動理念はいつだって美月を軸にしていますが他のことに関しては謎に包まれています。

早河がヒーローならば、佐藤さんはダークヒーローの立ち位置かもしれません。私が佐藤さんに名付けてるアダ名が『溺愛騎士』なので。笑


 佐藤に黒崎殺害の命令を下したのは貴嶋なのか莉央なのか?それとも別の人物なのか?これは読者様のご想像にお任せします。


銃の種類は貴嶋がワルサー、莉央はベレッタ、佐藤はマカロフを愛用しています。

私は佐藤さんにマカロフ撃たせるのが好きなんですよ、ぐふふ(´・ω・`)


 もうひとつの謎、第六章で美月の母に会った後に佐藤と電話をしていた相手は誰なのか??

最後の最後まですっきりしないのは佐藤さんのせいにしておきましょう。苦笑


         *


▼変化と成長の群像劇


 シリーズ全体を通してのテーマは『早河の変化となぎさの成長』

第一幕【影法師】からの二人を考えると二人とも人間的に成長したと思います。


【影法師】では自分ひとりを守るので精一杯で世界を拒絶していた早河が、周りの人を信頼して敵方である莉央と協力関係を結ぶ。

大切な存在のなぎさや有紗や玲夏を守り、宣言通りついに貴嶋を止めました。


いつも誰かに守ってもらっていたなぎさが本作では〈愛することは守ること〉と莉央に教えています。なぎさはなぎさのやり方で早河を支え、彼を守っています。


 早河となぎさの変化によって周囲の人々も少しずつ変わり、早河シリーズのもうひとりの主人公、キーパーソンでもある美月を中心とした物語も展開される。

ミステリーでもあり、人間ドラマやラブストーリーとしても楽しめるシリーズに仕上がったのではないかなと、ここまでの早河シリーズの総括です。


         *


ここからは次作のお知らせです🍀


 次作、短編集【masquerade】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890248589


ラブストーリーを軸とした短編が8つ、ジャンルもミステリーではなく恋愛のジャンルで掲載します。


作品全体のテーマは『愛』と『仮面』

ミステリー要素は少なめですが、そこはやっぱり早河シリーズなので話によってはミステリー風味の味付けをしている短編もあります。ちょっとした事件はこのシリーズのお約束ですね。


 シリーズものは、だらだらと長く続ければいいものでもありませんし続ければ続けるほど新しい出会いもありますがお別れもあります。


もしも次作の短編集と完結編までお付き合いいただけるのなら、それはもう私は奇跡として受け止めています。

お付き合いいただける読者さまが楽しかった、面白かった、読んでよかった、と思える作品を提供していけるよう頑張ります。


 短編集【masquerade】は早河シリーズの世界観やキャラクターを好きになってくれた方、お気に入りの推しキャラがいる方 (※そこまで思い入れて読んでいただけるのなら作家冥利に尽きます!!)

ここまで読んだから完結編まで読んでもいいよ!と、長いお付き合いをしていただける方にオススメです。


 ちょこっと短編集の内容紹介を( *・ω・)ノ


めでたく結婚した早河となぎさの新婚旅行のお話、矢野一輝の情報屋としてのルーツを辿る過去、佐藤瞬の中国滞在中の物語、大学を卒業して新社会人となった浅丘美月の物語、10年後の白昼夢……などなど。

本編では描かれなかった各キャラクター達のその後の人生や過去のあれこれを詰め込んだ賑やかな仮面舞踏会masqueradeです。


この短編集が終わらないと完結編の時間軸(最終幕エピローグ後の2016年12月以降の時間)に繋がりません。

短編集【masquerade】は本編の最終幕と完結編を繋げる役割を担っています。


 短編集と並行して【Guilty secretギルティ シークレット】という単独の物語も掲載しています。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890248529


こちらも当初は【masquerade】に収録するつもりで創作した物語でしたが、出来上がったものがなんと50ページを越える長編になってしまって(心の声:こんな長い話は短編集に入れられない……単独で出そう……)となった次第です💦


 Guilty secretは早河シリーズ本編の登場人物ではないキャラクターが主人公のお話。

主人公は美月の大学の後輩。少しですが大学4年生になった美月や早河さんも登場します。

短編集とは違ってジャンルはミステリーでの連載です。

一見、早河シリーズではなさそうでちゃんと早河シリーズしてる物語。物語の中盤からはめちゃくちゃ早河シリーズを感じられる仕様になっています。


 それでは次の物語でお会いできる方はまたお会いしましょう!

最終幕までシリーズをお読みいただいて本当にありがとうございました。



     あとがき ーENDー

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早河シリーズ最終幕【人形劇】 結恵(yue) @mozukuchan

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