138話 スジがいい

「遠慮入らないから全力でかかってこい」


「「「はい!」」」


 三人が一斉に突っ込んできた……と思ったらカネルとレイが俺に距離をつめ、レイネが後方で魔法を唱えていた。


「〈炎槍〉ボルテタラス!」


「〈氷剣〉アイシクルソード!」


 カネルに炎の槍が、レイに氷の剣が、それぞれの手に現れた。


「造形魔法か。だが……!」


 俺は手に〈ティスペル〉を付与し、その手でそれぞれの武器を掴むと、その武器は霧散するのだった。


「「なっ!?」」


 武器を折られるか、避けられると思っていただろう2人はそれはもうとてもとても驚いていた。


「がら空きだ!」


 俺は2人の胴にそれぞれ蹴りを叩き込む。


「「ぐばだ!!」」


 情けない声を上げながら吹っ飛び、5秒ぐらいかかってようやく地面に着いた。


「……せよ!〈氷魔法〉コキュートス!」


 へぇ。この歳でこの魔法を使うのか。

 しかもこの短時間で詠唱出来るんだったら大したものだ。


「じゃあ。〈炎魔法〉インフェルノ」


 70階層台でよくお世話になったこの魔法で迎え撃つことにした。

 もちろん威力は俺の方がちょっと強いぐらいにしている。

 普通に打ち消すんだったら基礎のファイアだけで俺には十分だ。

 俺の予想通り、インフェルノとコキュートスはぶつかるとインフェルノが勝り、少しの威力を残して通り抜けた。


「え?」


 自分の魔法が負けて、そして更に俺のか飛んでくるとは完全に予想外だろう。

 俺は女子は傷つけなかった為、ぶつかる直前でインフェルノは解除したのだった。


「きゃっ!?」


 直前で解除してもそれによる圧は残ったのか、レイネは尻もちを着いてしまった。


「これまでだな」


「「まだまだぁ!」」


 俺の背後から2人が飛び込んできた。


「俺は終わりと言ったぞ」


 振り返って顔面を持ち、地面へ軽く叩きつけた。


「お前ら。座ってよく聞いとけよ」


「はい」


「「……はい……」」


 若干元気がないものが二人程いるが、放っておくとしよう。

 俺は立ったまま説明する。


「まずはカネルとレイだが……お前ら、あれ以外に得意技とかあるのか?」


「……いや、無いな」


「そう言えば……」


「論外。対等な相手と戦うには切り札は最低3枚以上だ。とりあえず得意な技を身につけるのが先だな」


「「はい……」」


「そして次に、レイネだが。君はスジがいい」


「本当ですか?!」


「その年でその詠唱速度、見事なものだ。だけど撃てても威力で負けてたらはっきり言って意味が無い。だから魔力量を鍛えることから始めた方がいいと思う」


「……私、魔力量の鍛え方分からないです……」


 んー、確か俺も訓練法はあったはずなんだけど、魔力が余りすぎてそんな訓練法を忘れてしまった。

 ここは叡智先生の出番ですね。

 そして俺は一瞬だけ後ろを向き、その間に超スピードで調べた結果。分かったことが1つある。

 つまり魔力を限界まで使えば自然と伸びるらしい。 単純か!


「魔力を限界まで使い切るのがいいらしいな」


「そうなんですか?実践してみます!」


「レイネの場合は本当に魔力量の問題だけだからそれを鍛えたら結構なレベル位は行くと思うけど……男子二人はちょっと預かるな」


「あ、はいどうぞ。中にこき使ってください」


「分かった」


「「え!?」」


 仲間の1人から許可が出た事なので俺は他二人を連れて自身の世界に入るのだった。

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