127話 イケメン

 理事長室から出ると、5限目の予鈴がなったので俺は教室に戻る事にした。

 すると、龍状態のオジルがこちらへ猛スピードで向かって来ているのが確認できた。


「アイツは何をやってるんだか……」


 帝国からここまでは結構離れているはずなのにそれを20分弱で到着するのは戦闘機並みやそれ以上のスピードを出しているだろうな。

 まあアイツもしっかり考えているのか上空500メートル以上の高さで飛んでいる。

 ちなみにこの様子は千里眼でオジルの様子を捉えたものだ。そうじゃないと500メートル上空を肉眼で見るのは難しすぎる。

 そして俺の近くの窓が開け放たれた。


「おっす。お帰り」


「……お帰りじゃないわ!!我がここまで来るのにどれだけ苦労したと思っておる!?」


「それは……お疲れ様です」


「他人事のように……!お主のせいでこうなったんだぞ!」


「悪かったって。でもあの時のオジルはああしないと撒けない気がしたから仕方がないんだよ」


 俺は事実を述べている。

 あそこで俺が理事長室に行くと言っていたら確実に止めに入っただろう。

 そうなったらもう全面戦争しかないもんな!俺は平和を好むから平和的解決手段とも言えるだろう。


「仕方ないでわざわざ帝国まで飛ばすのはダメであろう……」


「だって近いところだったら絶対すぐにこっちに来るからダメ」


「意味が分からんわ……」


「まあまあ。それよりもう行こうぜ。授業が始まるってよ」


 呆れ果てるオジルをよそに俺は教室へと再び足を進めた。

 オジルもそれが分かっていたのが、無言でこちらについてきた。


「ねぇねぇ!あの人イケメンじゃない?」


「うん!何処かの王子様なのかな〜?」


 残念。こいつは龍です。

 チクショウ!これだからイケメンは!イケメン爆発四散しろ!!


「おいトオルよ。私情が渦巻きまくっているぞ」


「そんなのは分かっているんだよこのイケメンが!」


「イケメンとな……よく分からないが、さっきから好奇の視線を感じている。それに関係しているのか?」


「このイケメンがぁぁぁ!!」


 俺はこれ以上オジルと一緒にいたら、プライドがボロボロになってしまうと察した為、速攻で教室へと転移した。


「あれ?トオルがドアから入ってこないなんて珍しいな」


「……そうか?まあ学校の中では基本移動手段は徒歩だからな……」


「……大丈夫か?この昼休みに疲れてるように見えるけど?」


「いや、いいんだ……。ちょっとこの世の中の理不尽さに絶望しただけだから……」


 やっぱり顔なのか!?アイツの良いところって言ったらやっぱり顔しかないのか!?

 俺なんて一度もカッコいいなんて赤の他人に言われたことがないんだぞ!

 ……自分で言ってて泣けてきたわ!


「あー、うん。そうか。まあ頑張れよ」


 何となく察したミサタは自分の席に戻っていくのであった。

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