115話 三時間前

 部屋から出た俺たちは馬車があるところへ向かった。


「どこに停めてるんだ?」


「もちろんすぐに出られるように城の前に停めてるよ」


「……こう、いかにも自分がやったようにするのはやめてほしいんだが。どうせ使用人さん似やってもらったんだろ?」


「それが王族というものだからね。国を預かる身としてはこれぐらいの特権は然るべきものだと私は思うけどね」


「その理論、いけすかねぇな」


「どう言われようとも私の考え方は変えるつもりはないよ」


「ケッ!この頑固爺が」


「私はまだそこまでの年齢ではない!」


「分かってるっつーの。そんなことで一々キレるんじゃねぇよ」


 このような会話をしながら俺たちは向かっていった。



「これが……」


「ああ。タルサ王国が所有している 馬車だ」


 それは俺たちが昔乗ってきたのと同じやつだった。


「……これに乗るのか?」


「それしかないからね。それとも揺れが酷いボロ馬車が良かったかい?」


「……今思ったんだが、俺は転移が出来るからわざわざ馬車なんていらなくない?」


「こういうのは慣れておくのも大事だよ」


「何にだよ!?」


「うーん……馬車に?」


「すぐそこなら問題ないだろ!?」


「まあまあいいじゃないか。旅は道連れ世は情けとも言うじゃないか」


「この程度の距離は旅ではない!」


 この問答に少しイライラしていた俺は転移で会議場へと転移した。

 え?場所がわからなくても一度行ったことがあれば転移は使えるんだよ!


 会議場へと転移して俺は入り口付近にあったソファーに座って待つことにした。

 ……どこでやるのかを聞き忘れてたからな。不本意だが、待つことにしてやるか。


「やあ、お待たせ」


 俺が思ってるよりも早くギルバートは来た。

 ここからそこまで離れてなかったんだな。まあ転移で来れる俺はどうでもいいが。


「それで何で待ってたのかな?」


「……場所側からねぇんだよ。さっさと行くぞ」


「はいはい」


 少しだるそうに先頭を歩くギルバート。


「ここが今日の場所だよ」


 案内されたのは以外と近かった。

 ……入り口から徒歩数十秒のところにあるってどうなのよ?


「じゃあ中に入ろうか」


 ……なんか少し緊張してきたな……

 あれから結構経ったから変な印象とか持たれてないといいんだけど。

 ガチャ。とギルバートが扉を開けた。


「……」


 中は無人だった。


「……どういうことだ?」


「そりゃあまだ来ないでしょ?だってまだ集合時間の三時間前だもの」


「は?」


 え?ちょっと待て。何故に三時間も早く待ち合わせたんだ!?

 そのことの意味を懇切丁寧に教えもらいたいんだが。ていうか教えてもらえないと納得出来ないから。


「やっぱり参加国の中で拠点の国おうが一番早く来た方がいいでしょ?テヘ!」


「ふんっ!」


「グベッ!?」


 反応にイラついたから、俺はギルバートに向かって裏拳を放った。

 ……全く……。転移が思いついていたのならこんなことをしなくても良かったんじゃねぇの?何で思いつかなかだったんだ俺!

 そして二人は三時間待つ羽目になるのだった。主にギルバートのせいで。

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