105話 エリクサー
万事が解決したので、俺はオークション会場へと戻った。
「何してたの?」
開口一番に楓が聞いてきた。
「……どうしてだ?」
「?だって透の魔力が向こうの方角から感じたから」
そう言って楓はちょうどアルスター帝国付近の方の方角へ指差した。
「……よく分かったな……。ちょっと野暮用で魔力を使ってたんだよ」
「絶対嘘だ!だってその野暮用に私と戦った以上の魔力を出すわけないじゃん!」
チッ……!こんなはぐらかし方じゃ楓の追跡を撒くことは不可能か。
「ちょっと物作りをしてたんだ。その時に枷を取っただけだよ」
「いつもの透ってそんな喋り方しないよね?何か隠してる?」
ギグッ……!
何という勘の鋭さ。このままだったらスプリガンたちの存在がバレるかもしれない!
そうしたら絶対に彼らの平穏が訪れないかもしれない!ここは俺が頑張って死守するところだ!
「……言えない」
「ふーん……まあ透がそこまで言いたくないっていうんだっら特に追求はしないけど」
ふぅ……どうやら危機は去ったようだ。
それよりもオークションへ戻るとしよう。
『——それでは次に目玉商品を紹介していきましょう!』
司会者は俺がいない間にもどんどん進行していたらしく、残りの紹介はメインディッシュの俺の商品だけとなっていた。
……今思ったんだが、ここに出されている商品は少なからず高価なものであるのに、その目玉商品に俺の品が並ぶとは……。
どれだけダンジョン品のものは人気なんだよ、って話な。
「とうとうだね……どんな品を出したの?」
「いや……それがギルドで一気に出して、それを査定してもらって買い取れない分をオークションに出すとだけしか言われてないから、何がオークションへ行っているのかよくわからないんだよなぁ」
「そうなんだ」
「まあ見てれば分かる」
「そうだね」
そして俺たちは商品の方へ集中した。
『まず始めはあの伝説の秘薬ともされているエリクサーです!』
始めなのに一気に珍しいものが来て、全員が驚いている。
……そう言えばこれは80階層ぐらいの宝箱から入手したんだけど、自分で生成できることが分かったから死蔵行きのアイテムだったんだよなぁ……。
「あのエリクサーって本当なの!?」
何故かそこにとても驚いているルーナが聞いてきた。
「何をそんなに驚くことがあるんだ?」
「いや、だって……エリクサーって何か分かってる?」
……地球では飲めば不老不死になったり、どんな病気や怪我も一瞬で治す錬金術によって作り出された薬とされてるけど……この世界ではどうなんだろう?
「この世界では不老不死という効能は除外して、魔力増強の効果があるんだよ」
楓が補足説明をしてくれた。
「だからこの薬を欲しがる人は世界中にいるんだよ!それをこんなに簡単にオークションに出すなんて……」
「まあ複製は簡単に出来るし、問題ないだろ?」
「何が自慢げに問題ないだろ?、よ!そんななことしたら世界のバランスが崩れちゃうよ!」
……いや、そもそも俺の存在自体がバランスを崩しているような感じだし、今更変えたところであんまり変わらないような……。
「だから絶対にこのことは他人に言いふらさないこと!いい?」
「まあ……特に使うことないだろうし、問題ない」
ルーナにキツく言われたが、本当に使わないと思う。
俺は魔力とか欲してないし、周りもそうだ。
回復だけなら俺の魔法だけで十分だろう。
いざという時の為に一応10個ぐらいの複製は作っておいたが、……まあ保存しておくだけにしとくか。
そう決める俺だった。
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