100話 レビアシュトルト

 コラスの家から出ると、外はもう夕方になっていた。

 ……時間かかりすぎたかなぁ……。

 久しぶりに夢中になっていたかもな。


「あ!やっと見つけた!」


 楓が急いでこちらへやってきた。


「どうしたんだ?」


「急に居なくなっちゃうから……心配したんだよ?」


「悪い悪い。あまりにも暇だったから」


「むぅ……確かに透にとっては暇だったのかもしれないけど……」


「だろ?」


「それでも何か腹立つ!」


「そう怒んなって」


 楓はこちらにものを投げてきそうなほど激昂していた。

 ……しゃあない。

 俺はそう考えると、楓に抱きついた。

 ふっ、これなら物も投げられまい。


「こ、こ、公衆の前でそんなことしないでよ……」


 顔を真っ赤にして動きは硬直する。

 これならぶん殴られることはないだろう。……あとが怖いが。

 視線?そんなもの気にするか!

 そんなのモテない自分が悪い!……これを昔の俺に言ったら絶対に殴られるか蹴られるかはされていただろうなぁ……。

 俺もこの一年ほどで随分進化したものだ。


「は、離れて!」


 楓は俺を突き飛ばして何とか距離を取った。


「不覚……!甲斐性のない透にこんなことが出来るなんて……!」


「俺も成長したということだな」


「……そうかもね」


 あんまりテンションが高くない楓は、話題を切り替えた。


「もうみんなあの場所まで来てるよ」


「そうか。ならもう行かないとな」


 あの場所とは夕食を食べる店の場所だ。

 ……もうみんな待ってるのか……。


「それで何してたの?」


「ああ。ちょっと絵を描いててな、その時に少年に絵を教えてほしいって言われたから教えてた」


「へぇ……透が教えることなんてあるんだね」


「これでも芸術分野に関してだけは楓には負けたことがなかったからな」


 こればっかりは譲れなかったところだな。

 他の色々な分野で負けてきた俺だが、絵だけは神がかってるほど上手かった。

 そのおかげで楓から一つの大きな勝利をもぎ取ったのだ。


「じゃあ行こっか」


「そうだな」


 そして俺たちは夕暮れの街を歩き出した。


 向こうへ着いた時にはすっかり日が暮れていた。


「遅い!どれだけ待たせるの!?」


 ルーナが激昂していた。

 ……ああ、いい匂いだ。

 この付近でずっと待たされていたらそりゃ不機嫌になるわ……。


「すまんすまん。それじゃあ早速入るか。ここでいいんだよな?」


 俺は確認のためにウルティマに尋ねた。


「はい。そうですよ。ここが私のイチオシのお店〈レビアシュトルト〉です!」


 外装的には西洋的な雰囲気だ。

 明らかに日本語じゃない時点で和は外れるが。


「美味しそうな匂いがするな……」


「はい!何たっていろいろな街を見て歩いてきた私がオススメするお店ですから!」


「それは期待できそうだな」


「任せといて!」


 何を任せればいいのかよくわからないが俺たちは店へ入った。

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