53話 魔王軍幹部襲撃!

(さて、どうしたものか……?)


 異形を相手にするのはいいが、どうやって殲滅するのか……。普通にやってもいいんだけど、あそこまでの奴らだとな……。

 地形が変わるかもしれない……。


(それでもいいんだったらやるけど、もしかしたら国際問題に発展するかもしれないからな)


 俺だってそんなヘマは避けたい。

 ここは俺の新作兵器の出番か……?

 とりあえず試してみるか。


 俺はアイテムボックスから一つのアサルトライフルを取り出した。

 これは俺が前に殲滅する時には向かないと言っていたガルバドメスの形から改造し、広範囲の攻撃を可能にした武器だ。

 名付けてハツジオン!


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 <王銃 ハツジオン>


 属性弾を扱うことができる武器。狙うだけで必中効果があり、発射される弾の威力も市販の銃より10倍はある。再装填の方法は自分でやるか指定されているところから勝手に取り出すかがある。

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 性能はガルバドメスとほとんど変わらない。

 だが、装填される数は増え、一度に4、50発は放てるようになった。

 もうちょっと改良して、弾の装填数を増やしたいのだが、それは今は研究中だ。


「ぶっ放すといきますか!!」


 俺はハツジオンの中に水の魔弾を装填し、撃つ。


 バババババッ!!


 と、ものすごい音を立てて、帝国軍の方まで飛んでいった。

 その弾は帝国軍の元にまで辿り着くと、大量の血が噴出した。


(……エグいな……)


 これは実戦で使用するのは初めてで、どういう風になるのか想像していなかったが……。


(流石にこれほどとは思ってなかったぞ……)


 5倍から10倍に上がったことで強いはずなんだけど……、これは想定外だわ。

 今の30発ぐらいで、100人以上の命は刈り取ったな……。


「よし!行くか」


 俺はいつものトルリオンとダーインスレイブを持ち、敵陣の中に突っ込んでいく。


(こいつらは……)


 近くで見ると、より一層くっきり人間じゃないものに変化していることが分かる。


(すまん……)


 助けることができなかった謝罪をしながら俺は何人も切り落としていく。


「……これはっ!?」


 何か強い奴が楓たちの方向に飛んでいることが分かった。


「お前らはここで大人しく待っとけ!!」


 俺は瞬時に〈土魔法〉クリエイトアースで馬鹿でかい土の壁を90万の兵が入る大きさで作った。


 何でこんなのを作ることができるのかというと、込めている魔力量が違うからだ。

 全ての魔法は込める魔力量に応じて、威力、大きさなどが決まってくる。

 俺はただ、魔力SSSの人の魔力全てを注ぎ込んだだけだ。


「じゃあ向かうか」


 ……あの強い奴は少なくとも7桁近くはあるだろう。

 あんな結界だったら簡単にパリンッだ!

 急がないとまずいな……。

 呑気に構えてる暇なんてなかったわ。

 そう思った俺は結界の位置まで転移した。



「あれっ!?トオル戻ってきたの?」


「ちょっと、楓たちがだけじゃ無理な敵がこっちに向かってるからな。兵士は閉じ込めているから安心しろ」


「……そうなんだ」


(……ん?どうして落ち込んでるんだ?……ああ、間接的に役に立たないって言ってるようなものか、これは)


 しかし、楓たちで倒すのはほぼ不可能に等しい。

 楓の全スキルをうまく駆使したなら可能性はあるけど、……厳しいだろうな。


「まあ、高レベル同士の戦いを目の前で見ておいて損はないと思うぞ」


 俺は結界の強度を俺並みの力で壊せるぐらいまで引き上げる。


(はっきり言って、こんなに強い奴が現れるとは思ってなかったな……)


 せいぜい5桁ぐらいだと思ってたんだけど、……ファフニールぐらいか。

 力が落ちているって話は聞いたけど、それでも原初の龍とほぼ同等。

 向こうもエゲツない切り札切ってきたな。

 こんなの俺じゃなかったら勝てねぇだろ。


「……大丈夫なの?」


「俺よりレベル下だからな。負ける道理はないが、万が一もあるかもしれないな」


 俺が知らない魔法とか撃ってこられたら対処は……。あ、大丈夫だったな。

 説明しよう!

 俺が今来ている服は魔法を完全に絶縁する服なのだ。

 つまり、顔や手付近に来た魔法以外は効かないということだ。

 もちろん、俺が作った。

 俺の魔防も測定不能レベルだから直でくらっても大丈夫だろう……多分。


 それから10秒後。


 ズドオオォォォォォンッ!!!


 盛大な地響きを立てながら一人の女が俺たちの前に降り立った。


「あら?いつの間に戻って来たんですか?」


 女は普通の姿をしていた。

 ただ、頭についているツノと背中についている漆黒の翼を除いて。


(……こいつ、悪魔か?)


 帝国軍が悪鬼になったのもこいつが原因だろうな。


「お前が帝国軍を悪鬼にしたのか?」


「ふふっ、そうですよ。我が主人の命令でね」


「なるほど」


 こいつは下っ端というわけか。

 こんな奴がラスボスになってくるとちょっと……残念だ。

 一撃で終わってしまう。


「ちょっと!今そこ私に失礼なこと考えたでしょう!?私、だいたい人の思考読めるんですからね!」


 おっと、それは悪いことをしたな。

 なるべく弱そうというのは隠しておいて戦うことにしよう。


「また言いましたね!!」


 ……無意識に考えてしまった。

 俺だって考えたくて考えたわけじゃないのに!


「……それはそれで複雑な気分ですね……」


「それで、戦うのか?」


「当たり前です。それが我が主人の命令ですから」


「そうか」


 俺は言葉を発した瞬間に女の前に現れる。


「っ!?」


 女は大層驚いたようで、自身の鎌を慌てて振り抜いた。

 俺はそれを普通に受け止める。


「遅いな」


 俺が掴む力を緩めると、女は即座に身を引いた。


「……あなた、何者なんですか?」


「人に尋ねる時はまず自分から尋ねるものだろう」


 そんなことも習わなかったのか!!


「……私は魔王様直轄12護衛部隊第8部隊隊長アルス=ナスラハと申します。ではあなたの名前は?」


「あれ?俺自分の名前を言うなんて言ったっけ?」


 典型的なグズ野郎がやる戦法を俺が使う。

 こうして煽り、ヘイトを集めていく。

 すると、アルスさんから呪い殺すような目でこちらを睨みつけられた。


「……いい度胸ですね。あなた、それでも男ですか?」


「当たり前じゃん?何言ってんの?」


 アルスさんの額に青筋が増加する。

 ……そろそろやばいかな?

 戦力的には問題ないんだけど、……後ろの視線が何故がとてつもなく冷たいんだが……。


「……ふふっ、ふふっ」


 ……………まずい。とうとう幹部さんが壊れてしまった。

 ……そもそもこれは俺の責任か?俺は事実を言ったまでなんだが?

 名前も教えるから教えてとは言ってないし、男ですか?と聞かれた時は、そもそも男だから仕方がない。


(俺にだけ責任を押し付けられるのは理不尽だ!)


「この私を怒らせたこと、地獄で後悔させてあげます!!」


「へぇー」


 やれるもんならやってみろ。

 俺は手をクイクイっと挑発のポーズをとる


「はあっ!!」


 アルスさんが鎌を使って上段から切りかかってきた。

 しかし、俺の横から飛来してくる物体を見つけることができた。


(本命は別かっ……!)


 鎌を受けているところを油断させ、そこを横から切り裂く作戦らしい。


(だがっ!)


 俺は鎌と飛来物を片手ずつで掴む。


「なっ!?」


 これには流石の魔王直轄護衛部隊長のアスラさんも驚いているようだ。

 ……普通、自分の鎌を片手で止められ、更に仕掛けた攻撃も片手で止められることなんてあるはずがないだろう。

 圧倒的にステータスが離れてさえいなければ。

 飛来物はブーメランのようなもので、両方に刃が付いていた。


「投降するのならこれぐらいですますが、どうする?」


「私は貴様などには屈しはしない!殺すなら殺せ!」


「……」


 流石にそこまでしたくないんだけど……。

 女性を殺すのは気がひけるというか……個人的に言うと、敵でも殺したくない。

 女性を守るのが俺のモットーだからな。


(……どうしようかな……。はい、帰っていいよーって帰らせて後で面倒臭いことになるのはごめんだし……)


 あ!そう言えばあの魔法があったな。

 グフフッ!


「……ご主人様、気持ち悪い顔してる」


「うるさい!」

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