51話 開戦前夜
「ご飯は食べていくか?」
「いいの?」
「ああ。みんなで食べたほうが楽しいだろうしな。それでいいよな?」
俺はエルに確認を取る。
「うん!全然大丈夫だよ、ご主人様」
エルはそう言うと、早速4人分の料理を作り始めた。
エルがご飯を作り始めてから、俺と楓は離れた場所で歩きながら喋っていた。
「……明日から戦争が始まるんだね……」
「そうだな」
楓が神妙な面持ちで呟いた。
「……ちゃんと生きて帰ってきてよね。そうじゃないとルーナちゃんが悲しむから……」
「楓は違うのか?」
「私だって悲しいよ!……でも100万の大軍なんて私だけじゃ、絶対に勝てないし……」
確かに、雑魚の兵士が100万だったら楓でも勝てるだろう。
だけど、相手は武力トップと言えるほどの実力を持つ帝国軍。精鋭揃いだ。
中には、レオンのような実力者も混ざっているだろう。
それが100万ともなると、今の楓じゃ無理だろうな。
「……なら俺が戦うところを見ていくか?」
俺だったら本気を出せば瞬殺出来るだろうからな。
それを見て楓の今後に生かしてほしいとも思っている。
危なくはないだろう。いざって時はエルに守ってもらえばいいしな。
「……いいの?」
「楓がいいなら問題ないぞ」
「やった!これで透の勇姿を見られるね」
「……そんな風に言われるとなんだか恥ずかしいな」
「ふふっ、照れちゃって!可愛い」
「ち、ちげえし!」
断じて照れているわけではない!
「そろそろ戻ろうか?」
「……そうだなたぶんもうすぐ料理も出来ているはずだからな」
「エルちゃんってほんとに料理作るの早いよね……。私の何倍も早いし、しかもおいしいよね」
「だよな」
あれか?やっぱり家事魔法があるからそんなに早いのか!?
そんな感じで、俺たちは話していた人のところに向かうのであった。
「あ、トオルと楓ちゃん戻ってきたよ」
「ご主人様と楓ちゃん、もうご飯出来てるよ」
俺たちが戻ると、テントの近くにテーブルがセットされ、その上に料理が乗っていた。
(やっぱりな。もう完成してると思ってた)
俺たちはテーブルに座る。
「「「「いただきます」」」」
そして料理を食べ始めた。
「今日のメニューは昨日の残りの焼肉を丼にしたのと、サラダ、カレー、から揚げなどいろいろなものを作ったよ」
(やっぱり、この短時間これだけの数を作れるのは流石としか言いようがない)
とりあえず俺は、焼肉丼から食べ始めた。
……昨日のあれからどう変化しているのかすごく気になるな。
そして俺は、肉とご飯を合わせて口の中に入れた。
「「「「おいしい!」」」
「うまい!」
(昨日のそのままの焼肉もよかったけど、このご飯とあわせて食べるのもまたいい!)
やっぱりうまいな……。このうまさに勝てるものは果たして存在するのだろうか?
「なにこの肉!?こんなもの向こうの世界でも食べたことないよ!」
「それな」
これがおいしくないっていうやつはアレルギーの人以外いないんじゃないか?
たとえ肉が嫌いな人でもこれだったら好きになれるだろう。
それほど美味だ!
だって辺りを見渡してみて、みんな幸せそうな顔をしてるもん。
(じゃあ、一旦丼を置いといて次は……から揚げに行くか!)
俺は箸を伸ばし、から揚げを取り口に入れる。
サクッ!!
入れた瞬間衣がはじけ、肉汁が溢れ出てきた。
(……美味し……)
俺が今まで食ってきたから揚げの中で一番美味いと思う。
……エルはとうとう母さんも超えたか……。
……ていうか、この肉ってもしかしてドラゴンのか?
「この肉ってあれなのか?」
「うん、そうだよ」
流石。あれだけで俺の言いたいことを理解してくれた。
なるほどね……、ファフニ―ルの肉だったらそりゃ美味いわ。
だけど、このから揚げにはエルのテクニックも十分に入っている。
この揚げ方だ。
けっして脂っこくなりすぎず、それに対して、ヘルシーな感じにもならない。
まさに絶妙な加減で揚げているのだ。
これを出来るのは熟練の料理人ぐらいだろう。
それをエルの年で出来るなんて……恐ろしい子!
俺たちはその後、物凄い勢いで食べ、食べ終わった。
結局、楓たちもここに止まっていくことにしたそうだ。
「一旦荷物を取りに戻りたいから転移で送って」
と、言われたから俺は自分の部屋まで転移した。
そして二人は各々自身の着替えを取りにいった。
30分後。
「「お待たせ!」」
同じタイミングで、二人がやってきた。
「じゃあいくか」
「「うん!」」
俺は楓とルーナと手をつなぎ、転移を発動した。
戻ってくると、食器などはきれいに片付けられていてテーブルもしまっていた。
「お風呂、入りたいか?」
「「「入りたい!!」」」
「お、おう」
女子の熱烈な要望により、俺は昨日置いた場所と同じところに風呂を設置した。
「シャンプーとかいるか?」
「あ、それは大丈夫」
楓がそう言うと、自らシャンプーなどを作り出していた。
「じゃあ、入れるぞ」
俺は昨日と同じ手順で風呂を入れる。
「「「おー……!」」」
みんなが感嘆の声を漏らす。
「じゃあ、適当に入ってくれ。エル、終わったらしまっといて」
「ご主人様は入らないの?」
「ああ。俺は朝に入るから」
「うん!分かった」
俺が今入らないのは肉体的にも精神的にも疲れたからだ。
すぐ寝たい。
ということで、俺はテントに入り、毛布をかぶり、眠るのだった。
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