第528話
「ほうぉ~、あんしゃん達ね?
遠いとこば、ようきんしゃったねぇ。
(ほー、貴方達ですか? 遠い所を良く来て頂きました。(概ね歓迎の意))」
何だ、このアットホームな田舎の爺ちゃん的な魔王は! イメージ丸っと違うなぁw と内心爆笑する海渡。
「初めまして、『外の世界』からやって来た、神王国日本の王をやっております、カイト・サエジマと言います。お見知りおきを。」
と一礼をすると、
「ほう、そうね!? 『外の世界』からきんしゃったとね。(ほう、そうなのか!? 外の世界から来たのか。)
代々の魔王に語り継がれ取るばってん、嘘やなかったたいねぇ。(代々の魔王に語り継がれてたけど、嘘じゃなかったんだな。)」
と驚いていた。
「はい。外の世界から見ると、こちらはダンジョンの第12階層目でして。
あ、建国した神王国日本の方は、安定して落ち着いたので、優秀なスタッフに任せ、今は冒険者として、ダンジョンの制覇をやっております。
しかし、まさかこうして、ダンジョン内で魔族の方々が暮らされているとは考えもしませんでした。
これを機に、こちらの国とも友好を結び、交易等出来ればと、思っております。如何でしょうか?」
とお願いしてみると、
「よかたい。よか話じゃなかね。(いいね。良い話じゃないか。)
ジェロニモ、でかしたばい! 後の話の詰めは、そこの大臣のジェロニモに任せるばい。(ジェロニモGJ! 後の話の詰めは、そこの大臣のジェロニモに一任した。)」
とニッコリ笑顔で了承して、握手したのだった。
「まあ、そげな難しか話は、後回しにして、先に飯ば食わんね?
せっかくやけん、ハイデバルト料理ば、楽しみなっしぇ。」
と昼食に誘われたのだった。
ハイデバルト料理、大変美味しゅうございました。
コーデリアと被る感じではあるが、味付けや出汁のベースが絶妙に違う和風で、日本で言う所の、博多風うどんや焼きアゴ出汁のお吸い物とか、独特の海藻で作られた『おきゅうと』とか、カツオの叩きとか、絶品。
まさか、ダンジョン内でコーデリアに続く第ニの和食に出会えるとは思いもしなかった。
「いやぁ~、滅茶滅茶美味しいですね!
ちなみに、こちらに海ってあるんですか?」
と出て来た海の幸に舌鼓を打ちながら聞いた所、第1階層(海渡から見ると第13階層)に広大な海水エリアがあるらしく、そこで取れるらしい。
更に、第2階層(海渡から見ると第14階層)は酪農や、狩猟に適した所があるらしく、ここの階層は、もっぱら農耕エリアらしい。
素晴らしい水に恵まれているので水田もあり、そこで取れるお米は大変美味しいらしい。
なかなか手広く、手堅く運営されているハイデバルト魔王国。
魔族は、基本的に保持する魔力量が多いらしく、魔法もほぼ全員が長けており、背中に持つ羽を巨大化させて、魔力を放射して空を飛ぶ事も出来るらしい。
国民全員が魔法に長けているので、魔道具もソコソコのレベルで色々出回っている。
ただ、エルフ同様に寿命が長い事もあり、一組の男女が産む子供の数は、2~3人で、多くても4人ぐらい。平均すると、2.7人ぐらいらしい。
その為、極端に人口は増加せず、ここ50年程は、横ばいなんだそうで。
民族性としては、ラノベのテンプレとは全く違い、非常に温厚で他種族も居ないし、魔物以外は攻めて来る者もおらず、争いは滅多に無い。
つまり、平和に代々ノンビリと暮らしているのだそうだ。
ある意味、究極のスローライフ? かな。
海渡は、貿易する品目として、この国に足り無い香辛料や砂糖、海渡が希望の岬で作らせている希望の岬米や、コーデリアのお米、餅米、更にそれらの加工食品やお酒等の食品関係を提示。
他には魔道具・・・具体的には、田植え機や、脱穀機等の農耕用魔道具、通信機等も提示した。
しかし、畑作業をしていたのが、一国の大臣であったのには、正直驚いた。
それをジェロニモさんに言うと、
「何言うと? それを言うんなら、坊主だって王様じゃなかとね!?」
と返され、ああ確かにな・・・と納得。
この国で使われるお金に関してを聞くと、貨幣はあるが、割と周り近所での物々交換が多いらしく、一応商店や露店では使われているけどと言う感じだそうで。
幾つかの代表的な商品の価値で、交換レートを算出して、一応取り決めをした。
「あ、始めに断って置きたいのですが、経済侵略とか、自分達だけ儲ける的な意図は全くありません。
出来るだけ、お互いに平等な交易関係を続けて行ければと思ってます。
また、何か不測の事態が起こった際、勿論こちらも手助け出来る部分で最大限協力したいと思ってます。」
と言うと、
「ハッハッハ。よかよか、そこんとろは信用しとっけん。(いいよ、いいよ、そこら辺は信用しているから。)
そんなに、気にせんでもよかたいね。(そんなに、気にしなくても良いよ。)」
と笑っていた。
おいおい、良いのか、そんなに簡単に信用してしまって・・・無防備過ぎないか?
と内心、魔族の行く末を心配してしまう海渡だったが、
「いや、そんなに簡単に信用して騙される事だってあるんだから、少しは気にしましょうよ!」
と言うと、
「そん時ゃ、そん時たい。何とかなろうもん。(その時はその時。何とかなるだろう。)」
と豪快なのか、バカなのか?と疑う程に脳天気だった。
取りあえず、細かい商談に関しては、ダスティンさんを呼んで任せる事にしたので、海渡は基本方針(特に欲しい商品)を伝えて終わり。
一応、拠点をここの城壁の外に置く許可を魔王さんに貰って、ラルク少年達が、サクッと移動して持って来てくれた。
これで、何時でも泊まりに来られる様になった。
海渡が提供した日本酒は、非常に好評で、5樽程進呈したんだけど、追加で10樽程お買い上げとなった。
街の中の露店等での買い物も、その際に貰ったお金で買える様になったし、ウハウハである。
そうそう、砂糖に関しては、さえじま商会で卸しても良いのだが、それだと貿易の均衡が崩れそうな気もしたので、製法と製造ラインの魔道具をこちらからリースする形で、上手く調整する事にした。
もし、余剰の砂糖が出来たら、それをさえじま商会で買い取ったりと・・・まあ色々やりようもあるし。
ふふふ、しかし何処に行っても結局行動パターンは同じか。
ここと、コーデリアのお陰で、海渡の和食ライフは、非常に充実した物になった。
さて、肝心のダンジョンだが、第3階層(海渡から見ると第14階層)への入り口は発見しているらしいのだが、その先に進む事が厳しいので、そのまま放置となっているらしい。
その『厳しい』と判断された内容に関しては、
「そりゃ、見てからのお楽しみたいw」
と誤魔化されてしまった。
明日、ダンジョンの下層へ案内してくれる事にはなっている。
街の中の話に戻るが、この街には数カ所に公共の風呂があるのだ。
しかも、全部が天然の温泉である。
被っている物もあるが、数種類の源泉が存在しており、国民に無料提供しているらしい。
「素晴らしい!!! 素晴らし過ぎるぞ!!」
と海渡は思わず絶賛し、同様に他のメンバーも大喜び。
当初買い物メインの散策が、急遽温泉巡りにスイッチしていた。
しかし、幾ら温泉好きとは言え、4つ目を出た所で、海渡とラルク少年はリタイヤし、適当に散策して拠点に戻る事にした。
女性陣は、パワフルで、まだまだ廻るつもりらしい。
「あまり、欲張って無茶しないようにね?」
と一応は注意を促したが、微妙に不安。
まあ、最悪全員自分で回復出来るから大丈夫か。
拠点の厨房で、買って来たばかりの素材を使って、夕食の準備をしていると、やっと女性陣も戻って来た。
「お帰りーー!」
と海渡が言うと、
「ただいまです。いやぁ~流石に10連チャンはキツかったです。」
とジャクリーンが結構グッタリしていた。
「カイト君、何作ってくれてんねん?」
と全く疲れを感じさせない、ワクワク顔のステファニーさんが聞いて来る。
「ふふふ、今日、街で買った材料で、ちらし寿司と、稲荷、刺身とお味噌汁だね。」
と海渡が言うと、ちらし寿司と稲荷が判らなかった様で、厨房の方へと回り込んで来た。
「あれ? もしかしてコーデリアにお寿司あるけど、ちらし寿司と稲荷って無いの?」
と聞いてみると、存在しない事が判明した。
へーー! てっきりあるとばかり思ってたよ。
全部普通にコーデリアでも手に入る材料だし、寿司繋がりだし。
ここら辺は、女神様の匙加減なのか、俺に入る余地を作ってくれているのかも知れないな。
そして、夕食は初めてのちらし寿司・・・大好評でした。
子供の頃、お母さんに作って貰ったのを思い出しながら作ったら、若干目がウルっとしたけどな。
そう言えば、手巻き寿司も一時期、我が家でブームだったなぁ。
今度やってみようっと。
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